ライター : macaroni松阪特派員 たけ

松阪市 地方活性化企業人

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松阪市の中心部から少し外れた場所に、知る人ぞ知る一軒のカフェがある。鈴の森公園に面した大きな窓から四季折々の景色が広がり、手作りの料理と温かな人間関係が訪れる人々を包み込む「MOMO cafe」。オーナーの森嶌敏子さんは70歳。元中学校美術教師という異色の経歴を持ちながら、退職後に飲食業の経験ゼロからこの店を立ち上げ、12年目を迎えた今もその情熱は衰えることを知らない。

美術教師が夢見た「第二の人生」ではなく、もうひとつの「第一の人生」

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森嶌さん大学卒業後、35年以上にわたって中学校の美術教師として働き続けた。教職という仕事は子どもたちとの出会いに満ちた豊かなものであった一方、現場の過酷さも相当なものだったという。それでも森嶌さんが教壇に立ち続けられたのは、「先生だから頑張れた」という強い使命感と、もうひとつの夢があったからだ。

その夢とは、自分だけのカフェを作ること。退職後に絵画教室を開き、習いに来た人たちがお茶を楽しめる空間を設ける—そんな構想を胸に秘めながら、森嶌さんは長年にわたって少しずつ準備を進めてきた。キャンピングカーで各地を旅しながら気に入ったテーブルやステンドグラスを見つけては、店で預かってもらい、時に数年越しで代金を分割払いしながら手に入れていった。集めたものたちが自分の空間に収まる日を夢見て、定年まで残り3年というところで早期退職を選んだ。

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森嶌さんは「第二の人生」という言葉を好まなかった。退職後の人生を「第二」と呼ぶことへの違和感—それは、現役時代も退職後も、自分の人生はいつだってその時の「第一」だという思いだった。異なるステージに立つだけで、人生の主役は変わらない。そんな信念が、飲食経験ゼロという大きなハードルを軽々と越えさせた原動力だったのかもしれない。

集めたものたちに「背中を押された」開業—こだわりが詰まった空間づくり

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店内は森嶌さん自身がデザインに深く関わった特別な空間だ。設計士や工務店との打ち合わせでは様々な要望を次々と伝え、職人たちもその情熱に応えるように丁寧な仕事をしてくれた。

テーブルには東吉野の工房で出会った朴の一枚板を使用。このテーブルとの出会いは劇的で、工房を訪れた際に一目惚れしたもののその日は財布の中に一円も持っていなかった。それでも木への愛情を語る森嶌さんの熱意に職人の社長が心を動かされ、手付け金なしで売約済みにしてもらい、その後2〜3年かけて数回に分けて代金を支払ったという。

店内の随所に森嶌さんの審美眼が光る。欅の片木を使ったテーブルは、広い面を上にすれば卓面として使いやすいが、あえて面白みのある側を表にして使っている。

こうした品々は、長年の教職生活の中で少しずつ集められたものだ。「学校をやめたらせんわけにいかない」—集めたものたちが、開業への背中を押したのだ。商工会議所に飛び込んで経営の基礎を学び、設計士や地元の工務店に無理を聞いてもらいながら、2014年にMOMO cafeはオープンした。

「MOMO cafe」という名前に込められた、猫と孫と偶然の縁

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店名の由来は、かつて飼っていた猫にある。本名はタンポポという名だったが、呼びにくいため「モモ」という愛称で呼んでいた。覚えやすく、言いやすく、可愛らしい—それで十分だという判断だった。凝った名前をつけて後から被りが発覚するよりも、シンプルで親しみやすい名前の方がいい、という逆転の発想だ。

さらに店のオープンから半年後に生まれた孫の名前も「モモリ」と名付けられた。そのため、常連客の中には孫の名前から店名をつけたのだと思っている人も少なくないという。そのエピソード自体がこの店の温かな雰囲気を象徴しているようで微笑ましい。

手作りと工夫—料理への情熱は幼少期から育まれていた

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MOMO cafeの料理の根底にあるのは、「手作り」と「工夫」への飽くなき情熱だ。森嶌さんが料理に目覚めたのは小学3年生の頃。当時はまだバタークリームが主流だった時代に、喫茶店で食べたパフェを自宅で再現しようと子どもながらに試行錯誤を重ねた。中学生になるとオーブンを買ってもらい、シュークリームやマドレーヌを焼き、高校ではレモンパイに挑戦した。

この「工夫して作る喜び」は、フードメニューにも色濃く反映されている。人気メニュー「味噌チーズ焼き」は、もともと賄いメニューとして生まれたものだ。常連客にこっそり提供していたところ評判を呼び、いつしか表メニューに昇格した。味噌とチーズという一見意外な組み合わせが、しっかりとした甘みと旨味を生み出し、ご飯が進む一品として男性客を中心に根強い人気を誇る。

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もちろんカフェであるため、スイーツやドリンクへのこだわりも並々ならないものがある。ケーキやスイーツはすべて店内で手作り。中にはダークチェリーパイといった変わり種も定番商品としてラインナップしている。

ドリンクもコーヒーや紅茶は銘柄ごとに数種取り揃えているほか、フレーバーティーやハーブティーなど。リラックスしたティータイムを過ごすのには事欠かないほど、バラエティに富んでいる。

人と人が自然につながる場所——カフェが生み出すコミュニティ

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MOMO cafeが12年間愛され続けてきた理由は、料理の美味しさだけではない。この店には、人と人が自然につながる不思議な引力がある。東京から赴任してきた企業の社長が常連となり、経営のヒントを惜しみなく伝えてくれた。大阪で飲食店を経営していた女性が訪れ、今も交流が続いている。

かつての教え子たちもよく顔を見せるという。自宅では話しにくいことも、カフェという中立的な空間では打ち明けやすい。現職の教師が悩みを抱えて訪れることもあれば、人生の岐路に立つ若者が話し相手を求めてやってくることもある。不思議なことに、そうした「話がある」客が来店する時間帯は、他のお客さんがぱったりと途絶えるという。まるで店が空気を読んでいるかのように。

従業員との関係もまた、この店の特色だ。店長と従業員という関係でありながら、その距離感は祖母と孫のように近い。初めて訪れた人が「お孫さんですか?」と尋ねるほど自然な雰囲気で、お互いに遠慮なく意見を言い合い、時に叱り合いながらも笑顔が絶えない。こうした温かな人間関係が、店全体の雰囲気を作り上げている。

公園の四季と窓からの眺め—MOMO cafeが届ける「もうひとつの価値」

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森嶌さんが一目惚れした調度品が並ぶ店内。大きな窓からは鈴の森公園の四季の移ろいを楽しむことができる。
MOMO cafeを語る上で欠かせないのが、窓の外に広がる景色だ。公園に面した大きな窓からは一年を通じて移ろう自然の姿が楽しめる。晴れた日の青空も美しいが、雨の日には木立の幹が濡れて黒々と輝き、緑が一層鮮やかに浮かび上がる。電線や建物に遮られることなく、視界がすっと抜ける開放感は、都市部のカフェでは味わえない贅沢だ。

この景色を楽しみながら、手作りの料理をゆっくりと味わう時間—それがMOMO cafeの本質的な価値なのかもしれない。それぞれが思い思いの時間を過ごし、また訪れたいと思って帰っていく。

12年という歳月の中で数々の困難に直面してきた。それでも森嶌さんがこの店を続けるのは、「いいお客さんがたくさん来てくれるから」という一言に尽きる。人とのつながりが、この店を支える最大の柱なのだ。公園の景色が今日も窓の外で静かに移ろう中、モモカフェは変わらず扉を開け、訪れる人々を温かく迎え続けている。

MOMOcafé
〒515-0816
三重県松阪市西之庄町26−9
土曜日
11:00〜17:00
月曜日
定休日
火曜日
定休日
水曜日
11:00〜17:00
木曜日
11:00〜17:00
金曜日
11:00〜17:00
土曜日
11:00〜17:00
日曜日
11:00〜19:00
開閉
0598-20-8556
席数
22席(テーブル:8名掛け×1、5名掛け×1、3名掛け×3)
L.O.
水〜土:17時、日:19時
定休日
月・火
最寄駅
松阪駅より車で8分
支払方法
現金のみ
平均予算
1,000~2,000円
駐車場
8台(店前4台、左側縦に2台、店向かい2台)
ランチ

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