ライター : macaroni 編集部

監修者 : 龍 慶介

てしま農園 代表

教えてくれた人

てしま農園 代表 / 龍 慶介さん
自衛隊のパイロット、大手広告出版会社と異色の経歴を経て、10年前に農業の世界へ。“植物のプロとお客様をつなぐ”をコンセプトとした『てしまの苗屋』を立ち上げる。初心者の方に植物を育てることの楽しさを伝えたいと、苗の丁寧な育成はもちろん、購入される方への説明や相談にも積極的に対応。失敗しにくい苗の販売と育成に力を注いでいる。

植物への愛情たっぷりの龍さんに、12月のてしま農園の様子や、ベランダ菜園におすすめの野菜「エンドウ豆」について基本的な知識やアドバイスを伺いました!

てしま農園にも冬がやって来ました

Photo by てしま農園

編集部「すっかり寒い季節になってきましたが、現在のてしま農園の様子はいかがですか?」

龍さん「今は玉ねぎの植えどきでもあるので、ひたすら出荷作業ですね。ハウスの中が玉ねぎの香りで充満していて、この香りをかぐと、“あぁ冬が来たなぁ”といつも思います」

編集部「11月におすすめいただいたのもペコロス(玉ねぎ)でしたね!でも冬は植物の管理ってむずかしそうですね」

龍さん「そうですね。確かに気温が下がると、一般的に野菜の育ちは悪くなると言われています。12月は、野菜も春に向けて休息の時期に入るんですね。そのため先月紹介した寒さ対策や、野菜の健康状態の細かな把握が必要になってきます」

12月におすすめの野菜は「エンドウ豆」

Photo by shutterstock

龍さん「だいぶ寒くなってきて育てられる野菜にも限りがありますが、今月のおすすめは、ずばり、エンドウ豆です!なぜなら、エンドウ豆は寒さに強く、霜にも耐えられる耐寒性を持っているから。収穫もしやすいので、初心者にも人気があるんですよ」

編集部「では、一年中植えられるんですか?」

龍さん「いいえ、寒さに強いのは小さな苗のときだけですね。植える時期が早すぎると、休眠前に大きく育ちすぎて寒さに耐えられなくなってしまいます。

植物たちは、気温の変化などをいち早く察知し、生育に適さない環境と判断した冬季や乾季には成長活動を一時的に停止する“休眠”に入ります。エンドウ豆系全般、小さな苗の状態で越冬させることによって休眠期間に根を張りエネルギーを蓄え、気温が上がる頃に一気にツルを伸ばすんです。

なので、12月の初め頃に植えれば一番長く、早く楽しむことができるため、12月植えをおすすめしているんですよ」

エンドウ豆を上手く育てるコツは?

最適な環境と植え付け方法

Photo by okamagami

編集部「エンドウ豆は、どのように植えるのが良いですか?」

龍さん「エンドウ豆は連作を嫌うので、フレッシュな新しい土を使うことが一番のポイントです。基本的にむずかしく考える必要はなく、日当たり、風通しが良く、蒸れない環境に置いてあげると育ちやすいですよ」

編集部「鉢とプランターなら、どちらが良いんでしょうか」

龍さん「エンドウ豆は育つとツルがグングン伸びてきます。このツルを伸ばせたほうが収穫量も増えるので、ネットや支柱が立てやすい横長のプランターを使うことをおすすめします。根はそこまで深く張るものではないので、浅い標準プランターで十分です。

植え付け方法は苗の場合とタネの場合で異なりますが、苗の場合は、一般的な30cmほどのプランターなら3株植えることができます。タネの場合は、同じ植え穴に4粒ずつ撒いて浅く土をかけ、土が湿っている状態を常に保ちます。1週間ほどで発芽するので、発芽したら間引きしましょう」

編集部「間引きってちょっと抵抗があるんですよね。せっかく芽が出たのに可哀想な気がして……」

龍さん「よくわかります。でもエンドウ豆の芽は、豆苗として食べられるんですね。なので間引きではなく、収穫ということにしましょう!(笑)」

Photo by okamagami

編集部「そういえば、今更ですが……鉢とプランターの違いが正直わからなくて」

龍さん「じつは、明確にはその区別はないと言われています。判断基準として、鉢は陶器で作られているもの、プランターはプラスチックで作られているものと、素材で判断している方も多いですね。

なので、陶器でできている鉢は乾きやすいという特徴があります。良く水が蒸発するので、初心者の方に多い水のあげすぎを防いでくれるんですよ。その反面、外出がちの方には少し不向きかもしれません。

プランターは、軽量なので女性でも簡単に持ち運びができ、保湿性が高いのが特徴です。しかし、それゆえに排水性が低く根腐れしやすいので、水のあげすぎには注意が必要ですね」

水と肥料のやり方

Photo by okamagami

編集部「水のやり方で注意点はありますか?」

龍さん「どんな植物にも共通することですが、水のあげすぎには注意です。特に寒い時期は、植物はそれほど水を必要としません。なんせ冬眠中ですからね。土も乾きにくくなっていますが、表面が乾いたら水をあげるのでOKです」

編集部「そうは言っても……やはり心配になってしまうんですよね」

龍さん「初心者の方は、その不安から水をあげすぎてしまう傾向にあるんです。ここは忍耐です!子育てと同じで、過保護になってはいけないのです!」

編集部「わかりました!! 肥料はあげたほうがよいですか?」

龍さん「いいえ、あげなくて大丈夫です。ただ、一気に成長する3月頃は化成でも有機性でも構わないので、固形肥料を与えてあげると成長が促されます」

想定されるトラブルと対処法

編集部「気をつける病害虫はありますか?」

龍さん
「マメ系全般、生命力は強いので基本的には心配いりません。しかし、ジメジメした環境だとカビ菌による病気が増える原因になりますので注意してください。

冬なので害虫の心配はそれほどありませんが、ハモグリバエには気をつけましょう。葉に卵を産みつけると、ふ化した幼虫が葉を食べながら動く際にできる筋のような線が入ります。大体その筋の先に幼虫がいるので、プチっと成仏させてあげてください」

編集部「プチっと……ですか!?」

龍さん「プチプチを押す感覚で!ぜひ!あ、むずかしかったら葉っぱを取り除いてあげてください(笑)」

編集部「……葉を取るようにしますね(笑)」

龍さん「そうですよね(笑)葉が枯れた際も同様に、取り除いてあげてください」
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