ライター : macaroni 編集部

中野富士見町で愛される「小薇(シャウウェイ)点心」【後編・編集部員が気になる店 #6】

Photo by emikokuwahara

中野富士見町に誕生した「小薇点心」は、中国料理研究家・小薇(シャウ・ウェイ)さんによる中国点心と惣菜のお店。そのかわいらしい店構えからは想像もつかないほど、ディープでマニアックな一軒です!

お店や小薇さんについては、前編で詳しく紹介していますよ。
▼前編をおさらい

初めての「ウイグルカレー」に悶絶!

爆汁ポークまん

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350円(税込)
お店の代表作ともいえる「爆汁ポークまん」は、小薇さんが幼い頃に住んでいた上海の屋台の肉まんを再現・進化させたもの。肉汁がたっぷり入った、ここでしか食べられない肉まんです。

そして同店のもうひとつの魅力は、小薇さんが生まれ育ったウイグル自治区の料理が食べられること!その代表が「ウイグルカレー」。

ウイグルカレー

Photo by 小薇点心

テイクアウトはジャスミンライス付きで大(3人前)2,800円、中(2人前)1,880円、小(1人前)980円(各税込)※麺は別売り
ウイグルでよく食べられている「ダーパンジー(大盤鶏)」という料理ですが、スパイスをたくさん使うところがカレーと似ているため、イメージしやすいように「ウイグルカレー」と名づけたそうです。

どのように作られているのでしょう?

麺は粉から手作り。注文が入ってから伸ばしてゆでる

Photo by emikokuwahara

目の前で作ってくれたのは、ウイグルで主食のひとつとして愛されている、ナレンという幅広麺。こねた生地を注文が入ってからカットし、台に打ち付け、ひっぱったり、よじったりしながら長く伸ばしていきます。

あっという間に麺ができていく様子はまるで魔法のようですが、小薇さんは「簡単なのよ」とニッコリ。試しにやらせていただいたら、やわらかい生地が手の動きで簡単に伸びていく不思議な感覚……。

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「楽しいでしょう?だから私もつい作りすぎちゃう(笑)」と小薇さん。少人数でおこなっている小薇さんの料理教室「小薇美食創意厨房」でも、この麺の回は生徒さんが大興奮するそう。

たっぷりのお湯でゆでて冷水で締めたら、麺は完成です。

複雑な味わいに箸が止まらない!

Photo by emikokuwahara

ウイグルカレーは鶏肉を生姜、葱、ニンニク、豆板醤と香ばしく炒めたあと、トマト、パプリカなどの野菜やビール、ウイグルの唐辛子、8種類の香辛料とともに1時間ほど煮込み、味つけをして完成。

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これで3人前とのことですが、優に5人前はありそう……。ウイグルから取り寄せたという器は、二枚重ね構造。下の器にお湯を入れ、上のお皿にのせた料理が冷めにくいようになっています。

Photo by macaroni

ビールの効果でソースはほんのり甘みがあり、鶏肉はしっとりジューシーで、ほろほろのやわらかさ。パンチのきいた辛さとコク、香辛料がミックスされた複雑な味わいです!

モチモチな幅広麺は、噛むほどに小麦の甘みが感じられ、ソースがよく絡みます。中国製の黒酢をかけると、さっぱり感と深みが増し、さらに箸が進む味わいに。

本来はディナーコースのみで提供しているシメの一品ですが、あまりの人気に、一日限定10セットでテイクアウト販売しています。テイクアウトは麺ではなくジャスミンライスになりますが、ライスにも間違いなく合う味!
※ディナーは6,600円コースと11,000円コースがあります(どちらも税込・要予約)

中国では人気アナウンサー、来日後は主婦から語学教師、そして料理家に……

多彩な料理を作り出す小薇さん、一体何者なのでしょう?

小薇さんは幼少期を祖父母のいる上海で過ごし、その後、両親の住むウイグルで育ちました。なので小薇さんの料理のベースとなっているのは、上海の屋台料理の味と、母親の作ったウイグル料理だそうです。

Photo by macaroni

▲おもむろにスマホを取り出し、懐かしむ小薇さん
上海の日本企業で働きながら、週末は上海東方放送でアナウンサーとして活躍していた小薇さんは、日本人男性と恋に落ち、1995年正式来日。主婦業に専念しつつ、一から日本語を学んだあと、中国語教師やニュースキャスターの仕事も再開しました。

ところが、中国語教室の生徒にふるまった家庭料理が評判となり、料理教室を望む声が殺到。思いがけず料理家の道へ。研究熱心な小薇さんは、料理を教えるのに飽き足らず、中国に渡って修業を重ね、腕を磨いていきます。

Photo by 小薇点心

小薇さんの料理には熱狂的なファンが多くつき、ついには新宿御苑前に中国料理店「Rose Shanghai Tokyo(ローズ シャンハイ トーキョー)」をオープン。オーナーシェフとして腕を振るったのち、会員制の中国料理サロンを主宰し、マニアックな中国料理を提供していました。

Photo by 小薇点心

そんな小薇さんの元には、多くの日本人シェフが中国料理を学ぶために訪れるように。

2019年に中国・大連で開かれた世界最大規模の中国料理コンテスト「魯花カップ」には、小薇さんは日本代表チームのリーダー兼総合プロデューサーとして、6名の名シェフを率いて参戦。見事、チームを団体戦総合・銀賞、主菜部門魚料理・金賞に導きました!

Photo by 小薇点心

「去年の今ごろは、テレビ局とのコラボで、上海蟹を詰めた透明な小籠包を作っていました。テクニックを最大限に駆使して、お客様を驚かせるのは楽しかったですね」と、懐かしそうに微笑む小薇さん。そんな小薇さんの料理観を大きく変えたのが、新型コロナウイルス(COVID-19)でした。
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