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この記事は、豊かなフードライフを演出するWEBメディア「dressing」の提供でお送りします。
どうも、料理芸人のクック井上。です!
いきなりですが、レストラン紹介本『ミシュランガイド東京 2016~2019』にてビブグルマン(※)に選出されている餃子屋が、阿佐ヶ谷のディープな飲み屋街にあるのをご存じでしょうか?
芸術作品のような美しい餃子で、しかもお値段もお手頃! 人気店なので予約が取りにくいですが、餃子好きならぜひ押さえておきたいお店です。さぁ、魅惑の絶品餃子の世界へご案内しましょう。
※ビブグルマンとは…星の評価は付かないものの、良質な食材で丁寧に仕上げており、5,000円以下(サービス料、席料含む)で、価格以上の満足感が得られる料理のこと
やってきたのは、JR阿佐ケ谷駅から徒歩約2分。狭い路地にある『餃子坊 豚八戒(ちょはっかい)』。古民家をリノベーションし、2007年にオープン。雰囲気最高です。
店名の由来となった、中国の長編小説『西遊記』に出てくる豚の名前は「猪八戒」と書きますが、このお店は「猪」ではなく「豚」という漢字を使います。店名になにか意味があるのかと思いきや…
「あっ、ただ漢字を間違えただけです」と店主の香山(こうやま)謙吾さん。
えー! ただの間違いかーい! 思ってたんとちがう(笑)
気を取り直して、お店のご紹介といきましょう。店内はカウンター席エリアとテーブル席エリアに分かれています。
▲カウンター席エリア
▲テーブル席エリア
カウンター席エリアとテーブル席エリアは、建物の構造上はつながっているのですが店の入口が別々のため、テーブル席エリアは、常連の間では“離れ”と呼ばれています。
ほかにも、個室と2階席もありますが、どちらも数カ月先まで予約が埋まっているとのこと(個室と2階席の予約は4名以上~)。
さすが、ビブグルマン選出の超人気店!
▲2階席の様子。右にあるのは関羽像らしい…!
まるで芸術作品! どれも絶品な『餃子坊 豚八戒』の創作餃子
さて、建物探検はこの辺にして、お目当ての人気メニュー・餃子紹介といきましょう。餃子のメニューは全部で5種類あります。
▲ジャジャ~ン! 全種類乗せたらテーブルぎりぎりです!
パッと見ただけではわかりませんが、『餃子坊 豚八戒』のこの5種類の餃子たち、なんと、全て餡の中身と皮の包み方が違うんですよー!
ふつうの飲食店だったら、作業効率のことも考えて、ベースとなる餃子は一緒で、つけダレやトッピングだけが違うってことも多いんですが…、こりゃ手間がかかってる! 結構凄いことですよ。
まずは同店の代名詞「華餃子(羽根付焼餃子)」からいただきましょう!
見るからに、羽根がパリッパリ~!
▲がぶりっ
キャー! 皮も羽根も芳ばしいぜー!
そして、ひと口ほおばると、スパイスの香りがほのかに漂ってきて、ほどよい肉汁がじゅるり。
餡はニンニク不使用。キャベツ、ニラ、豚挽き肉、そこにタマネギのシャキシャキ感、キクラゲのコリコリ感がよいアクセントになっています。味付けには、香りのいい八角や桂皮、丁香(ちょうこう)など9種類の中華系スパイスを使ってるんですって。
見た目の美しさが先に立ちますが、注目すべきはやはり味の実力! ややもするとクセが強くなりがちな中華系スパイスを、絶妙な量と配合でプラスするセンスが、人気の秘訣ですね。
ちなみに、下味がしっかりついているので、まずはそのまま食べるのがおすすめ。つけダレを付けるにしても酢を多めにして、お好みでラー油をプラスするぐらいが◎。
言うまでもなくできたてが一番おいしいですが、冷めてもおいしさがわかる、ポテンシャルの高い餃子です!
調理担当は、中国出身の奥さま! 中国では薄皮がいい餃子の証
『餃子坊 豚八戒』の調理担当は、香山さんの奥様、陳培霞(ちんばいか)さん。
陳さんは、中国のハルビン出身で、お二人の出会いは2000年代初頭。香山さんがマネージャーを務める飲食店で、語学留学のために来日していた陳さんがアルバイトを始めたのがきっかけですって。
「昔中国では、餃子はお正月にしか食べられない料理でした。まだ中国が貧しかった時代は、餡の量はほんの少し。その代り、皮を分厚くして、お腹にたまるようにしていたんです」と奥様の陳さん。
しかし、中国の経済が成長するにつれ、“皮が分厚い餃子=食べごたえをごまかしている”と捉えられてしまうようになったのだとか。
そんなこんなで、中国では、今は良いお店ほど餃子の皮が薄いそうです。
中国の餃子は、モチッとぶ厚いイメージでしたが、聞いてみないとわからない話ですね。
『餃子坊 豚八戒』も良いお店の条件にもれず、餃子はすべて薄皮。
▲流暢に日本語を話す陳さん
ちなみに…
「中国に住んでいた時は、ほとんど料理をしたことがなかったです。だけど、餃子だけは作れました」と陳さん。あははは(笑)、日本で言うところの、“大阪人ならたこ焼きやお好み焼きは作れる”みたいな感じかな?
そんな陳さんですが、今では毎年ハルビンに帰省し、現地の餃子屋を食べ歩いて、研究を重ねているという熱心ぶりで、「現在のハルビンでは、なんでも餃子にしてしまう習慣がありますね。どのお店も、餃子のメニューだけで何十種類もあります」と陳さん。
中国の最新餃子事情まで教えてもらっちゃいました!
全種類制覇する人、続出! 口あたり軽くてパクパク行けるおいしさ
さて、続いて紹介する餃子は「明蝦(ミンシャア)餃子(海老水餃子)」。
おいおい、ぷりっぷりの大きなエビが皮から透けて見えてるじゃないですかー!
餃子1個に対して、丸々1尾入っているんです。エビの輝き、まるで宝石の如し。
大きなエビ以外に餡の具材には、挽き肉・ネギ・シイタケが使われています。このシイタケのうまみが、エビちゃんのうまみとベストマッチ!
▲エビのサイズが大きいのが伝わるでしょうか?
ご覧頂いてわかるとおり、エビは全て同じ方向に入れて包んでいるので、かなり手間ひまがかかっています。1個包むのにもかなり丁寧に包まなければならないのに、全種類あわせて1日で、な、なんと計600個ほどの餃子を包んでいるんですって!
仕込み時間だけでは間に合わないので、営業時間中も四六時中、包んでいるとのこと。超人気店ゆえの苦悩ですね。
「ご苦労様です&恐れ入ります!」と思いつつ追加オーダー、すいません。
続いて3品目、パクチーと特製ラー油がのった「四川風麻辣水餃子」。
いやぁ、これまた美しいお姿。日本で水餃子というと、スープの中にゆでた餃子が入っているイメージですが、中国ではスープは付きません。
見た目は辛そうですが、食べてみるとあら不思議、全然辛くない! 特製ラー油は、芳ばしさの向こうに、ほんのり甘みを感じるほどですなのですが、それは辛みの少ない中国の唐辛子を使用しているから。そこに山椒もプラスして、上品に仕上げています。
餡の具材には挽き肉・ニラ・シイタケ、そして意外な食材、豆腐!
パクチーは苦手な人のために別盛りで提供されますが、いいアクセントになるので、苦手でなければ、ぜひ乗せてパクっといっちゃってくださいね。
そして、4品目「八戒餃子(精進蒸餃子)」。
”精進”とある通り、餡には厚揚げを使っていて、お肉は不使用。しかし、完全な精進料理ではなく、干しエビは使っているそうです。お肉は使っていませんが、干しエビの甘みとうまみが感じられる、高級感のある餃子です。
そしてラスト5品目「天篷(テンポゥ)餃子(豆腐水餃子)」
豆腐をメインに挽き肉を少々、そしてニラとシイタケが入った餃子です。
「天篷餃子(豆腐水餃子)」は特にですが、どの餃子も餡の口あたりが軽く感じられるよう、餡の配合が工夫されていて、2人以上の来店だったら全種類ペロリといけそう。
実際、ほとんどのお客さんが、全種類注文されるそうです。
どの餃子もクオリティが高く、上品な仕上がりなので、ぜひ全種類味わってみてくださいね!
ちなみに『餃子坊 豚八戒』では「火鍋」も大人気メニュー。ただし、注文できるのは、個室と2階席予約の方のみ。予約困難店ですが、ぜひ頑張って予約を掴み取ってください!
▲最後に、香山さん&陳さん夫妻とパシャリ!
いやー、ビブグルマンの腕前、恐れ入りました。
餃子のメニュー数が多いため駆け足となりましたが、いかがでしたでしょうか?
ちなみに、先ほど店名を「あっ、ただ漢字を間違えただけです」と話されていた店主の香山さんは、神戸出身。若い頃、地元の神戸でバー経営をしたのちに、沖縄や湘南、ハワイなどに住み、DJやサーファーなどをしてきたそう。
話せば話すほど、人間力? 人間味? に溢れていて、なんとも魅力的な方なのですが、「語学留学をしに来た日本で結婚するとは思っていなかった」と奥様。
そんなお二人が出会って、結婚直後にこのお店をオープンし、間もなく人気店になっちゃうなんて。そして今やビブグルマン!
人生って面白いなぁ。
餃子ファンのみならず、東京の多くの食いしん坊に愛される絶品創作餃子たちは、香山さん&陳さん夫妻のセンスがキラリと光る、他ではなかなか味わう事の出来ない餃子の数々でした。
漢字は異なりますが「ちょはっかい」という店名なだけに、亥(イノシシ)年である2019年は、『餃子坊 豚八戒(ちょはっかい)』に"猪突猛進"するしかないでしょー!!
撮影:佐々木雅久
【メニュー】
華餃子(羽根付焼餃子) 580円
四川風麻辣水餃子 560円
八戒餃子(精進蒸餃子) 540円
明蝦餃子(海老水餃子) 640円
天篷餃子(豆腐水餃子) 520円
中瓶ビール 540円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
餃子坊 豚八戒(ちょはっかい)
上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。
レストラン/東京/阿佐ヶ谷/餃子/中華料理/連載
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