半世紀を超える歴史が刻む、三つの店舗物語

Photo by macaroni

神仙閣の歴史は、範隆さんが生まれた頃、約55年前に遡る。初代店主である父が松阪駅付近で開業したのが始まりだった。範隆さんは小学生の頃、その周辺で遊び回っていたという。店は時代とともに変遷していく。二店舗目は範隆さんが小学6年生の頃、約40年前に現在の店舗から100メートルほど先に移転した。

当時の店舗の老朽化と拡大を目的とした移転だったが、この場所で約25年間営業を続けることとなる。そして2009年8月8日、三店舗目となる現在の場所にオープン。実家から徒歩1分という立地を選んだのは、家族との距離を大切にしたいという思いからだった。


店名の「神仙閣」は初代から変わらず受け継がれているが、その由来について範隆さんは「実は父に聞いたことがあるんですが、深い意味はなかったような気がします。中華っぽい名前にしたいからって言ってました」と笑いながら語る。

地域に根ざした憩いの場

客層は地元客が中心だが、近年はInstagramをきっかけに来店する人や、常連客の紹介で足を運ぶ人も増えつつあるそうだ。家族連れの利用も多く、座敷には子ども用の椅子を用意するなど、幅広い世代が過ごしやすい環境が整えられている。2階には最大25名まで対応可能な宴会場があり、コース料理の提供も行っている。

ただし、このコースは一般的な定型メニューとは異なる。事前に客と相談し、通常メニューの中から好みの料理を選んでもらい、それらを組み合わせてコースとして構成する形式だ。あらかじめ内容を決めることで、提供をスムーズにすると同時に、満足度の高い食事体験を実現している。テイクアウトにも対応しているが、範隆さんの本音は「やっぱり、店で出来立てを食べてほしい」という。料理人として、熱々の一番うまい瞬間を届けたい。その思いは、言葉の端々から自然と滲む。

現在は主に母と2人で店を切り盛りしているが、父は開店前の掃除や簡単な洗い物を手伝っており完全に現場を離れたわけではない。朝の仕込み準備に関わることで、店との距離を保ち続けている。その姿は、神仙閣が地域に支えられてきた店であることを静かに物語っている。

町中華の未来を見据えて

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店づくりで何より大切にしているのは、客に気持ちよく帰ってもらうこと。そのためにできることは惜しまない。驚くほど素直で、まっすぐな考え方だ。これからの目標を尋ねると、「もっと店が賑わえばうれしい」と控えめに笑った。夜になると静まり返るこの通りに、もう少し灯りと人の気配が増えてほしい。そんな願いが、この店への愛情を物語っている。

外観は少し敷居が高そうに見えるが、中身は気取らない町中華。お腹いっぱい食べてほしいし、好みがあればできるだけ応えたい。その姿勢こそが、神仙閣が長く地域に愛されてきた理由だろう。52年続くこの店には、初代の味と、二代目の経験が静かに溶け合っている。派手さはないが、確かな積み重ねがある。神仙閣は今日も変わらず、街の片隅で人の心と胃袋をあたため続けている。
神仙閣
〒515-0044
三重県松阪市久保町770−1
金曜日
11:00〜14:00
17:00〜21:00
月曜日
11:00〜14:00
17:00〜21:00
火曜日
定休日
水曜日
11:00〜14:00
17:00〜21:00
木曜日
11:00〜14:00
17:00〜21:00
金曜日
11:00〜14:00
17:00〜21:00
土曜日
11:00〜14:00
17:00〜21:00
日曜日
11:00〜14:00
17:00〜21:00
開閉
0598-29-1416
L.O
ランチ:13;45、ディナー:20:30
席数
30+25席(4名掛けテーブル×3、カウンター×5、座敷3名掛け、4名掛け、6名掛け、2階宴会場25名)
定休日
火曜日、第三水曜日
最寄駅
松阪市から車で15分
支払方法
paypay可
平均予算
ランチ:〜1,500円、ディナー:2〜3,000円
駐車場
店前8台
禁煙
ランチ
ディナー

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