ライター : 伊藤ゆずり葉

エディター&ライター/唎酒師

八十八夜(はちじゅうはちや)とは。いつ、何をする日?

※画像はイメージです
立春から数えて88日目にあたる日のことを「八十八夜」と呼びます。暦上では夏となり、この頃になると霜が降りなくなるため、種まきなどの農作業を始める目安とされています。「夏も近づく八十八夜~♪」と童謡でも歌われるように、茶葉の新芽を摘む「茶摘み」にも、もっとも適した時季です。

八十八夜は新暦・旧暦に関わらず、毎年5月2日前後。その年が平年か閏年かによって日付が変わります。この先3年の八十八夜は下記のとおりです。

2024〜2026年までの八十八夜

  1. 2024年:5月1日
  2. 2025年:5月1日
  3. 2026年:5月2日

立春から数えて88日目になった理由は?

「八十八夜」は、二十四節気や五節句とは別に、季節の移ろいの目安とするために設けられた「雑節」と呼ばれる暦日のひとつです。

立春から88日を数えるこの日は、数日後に二十四節気の「立夏」を控えて種まき・田植え・茶摘みなどの大事な農作業をおこなうころ。昔の人々はその時季をわかりやすく周知するため、「八十八夜」と名付けたのです。

名前の由来は?幸運を呼ぶと言われる「八」の字とは?

「八十八夜」の名の由来は、単に立春から88日目という数字上の意味だけにとどまりません。日本では昔から末広がりの形をした「八」の字は福を招くものといわれ、「八」がふたつ重なる「八十八夜」はさらに縁起がよいものとされました。

さらに「八」「十」「八」の字は組み合わせると「米」の字になることから、農業に従事する人々にとっては特別な意味を持つものだったといえるでしょう。

八十八夜には、なぜ「夜」がつくの?

明治5年(1872)年以前の日本では、現在採用されている新暦(グレゴリオ暦、または太陽暦ともいう)ではなく、月の満ち欠けの周期を基準とした旧暦(太陽太陰暦)が使われていました。

「八十八夜」という言葉は夜を基準とした旧暦の時代から使われていたため、「88日目=八十八夜」になったと伝えられています。

八十八夜といえば「茶摘み歌」

八十八夜とセットで話題に上がるのが「茶摘み歌」。たとえば下記のようなフレーズを一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

夏も近づく八十八夜
野にも山にも若葉が茂る
あれに見えるは
茶摘じゃないか
茜襷(あかねだすき)に菅(すげ)の笠

上記は文部省唱歌『茶摘』の一部で、これがきっかけで「八十八夜といえば茶摘み」というイメージが定着したといわれています。初夏の茶摘みの様子を描かれていて、女性が頭に笠をかぶり襷(たすき)を身につけ、せっせと茶摘みに励む姿が歌われているんですよ。

「八十八夜の別れ霜」「八十八夜の忘れ霜」の意味

「八十八夜の別れ霜」や「八十八夜の忘れ霜」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。これにはどんな意味があるのでしょうか。

温かい時期に急に気温が低くなり降りる霜のことを「遅霜」といいますが、これは農作物の大敵です。また、その年最後に降る霜のことを「別れ霜」といい、それが済めば遅霜が降りることはなく、安心して農作業を始められると考えられてきました。

そのため、八十八夜の頃に降る最後の霜のことを「八十八夜の別れ霜」と呼び、農作業を始める目安としてきたんですね。
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