ライター : dressing

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「留学生が楽しめる場所を」。学生寮の一画に開店したスリランカ酒場

街の多国籍化が進む池袋に、またさらなるエスニックの風が吹いている。東池袋駅から歩いてすぐ、緑に覆われた豊島区役所の裏手に2020年8月オープンした『フロリダ亭』もそのひとつだ。
同店は一見すると飲食店など入ってなさそうなビルの2階に位置する。それもそのはず、このビルはとある留学生向け専門学校の学生寮なのだ。
ことの発端はこの専門学校の理事が、学生時代の後輩で不動産業を営むマサさんに「留学生が楽しめる居場所を作りたい」という相談を持ちかけたこと。マサさんはこれまで留学生向けに物件を紹介する不動産業を営んでおり、外国人留学生の知り合いも多かった。そこで白羽の矢が立ったのが、元留学生のスリランカ人・ヌーワンさんだ。
▲マサさんとヌーワンさん

ヌーワンさんは子供の頃から料理上手な父からスリランカ料理を教わり、来日してからは独学で自炊をしたり飲食店でアルバイトをしたりしながら、留学生仲間たちにも多くの料理を振る舞ってきた。

そして母国に帰りスリランカ人向けの日本語学校も設立するなど精力的なヌーワンさんは、やがてスリランカ料理の魅力をもっと日本に広めたいと思うようになったという。

「日本ではインドカレーやタイカレーなどが人気ですが、スリランカカレーはまだあまり知られていません。カレー好きな日本人なら、スリランカのカレーもきっと好きになってくれるはず」と思うようになり、自身の店を持つことが夢になった。
マサさんの「飲食店をやろう」という申し出をヌーワンさんは快く受け入れ、かくして2人はタッグを組むことになった。店内は理事の依頼通り学生たちもくつろげるようソファー席を配置し、ラウンジのような趣に。しかし学生専用ではなく、誰でも集える場所を目指した。 スポーツ観戦やカラオケもできるよう設備を整え、国籍問わずみんなが飲んで歌って楽しめるレストランをモットーにしている。ちなみに店名は、日本人オーナー・マサさんがフロリダ留学帰りということで名付けられた。 (※お酒の提供については国や自治体の要請に準じています)

スリランカ直輸入スパイスで作るカレーと、香ばしいバナナリーフが南国へと誘う

料理はヌーワンさんやスリランカ人スタッフが作るスリランカ料理を中心に、フロリダ留学時代に各国料理を独学で学んだマサさんが北中南米や東南アジアや日本料理を手がける。 「お客さんが食べたいと言ってくれたものをできるだけ作りたい」というマサさんの想いから、メニューにはスリランカ料理だけでなく、うどんやおでんなどの日本料理から、タコスやバインミー、ベトナムフォーやステーキ、四川風ソース焼きそばなどもあり多国籍な様相を呈している。
名物はスリランカの家庭料理でもあるバナナリーフカレーだ。バナナリーフには蒸気減菌作用があり、高温多湿なスリランカではお弁当としてこのバナナリーフでカレーを包んで昼食に持たせるのが一般的だとヌーワンさんは言う。

同店ではこのバナナリーフを、香りづけのために一枚一枚軽く火で炙っている。確かにラップを開けるとバナナリーフの豊かな香りが鼻をくすぐり、熱帯地域独特の密林の香りを彷彿とさせる。
バナナリーフカレーには、日替わりで6種類ほどのカレーと惣菜が盛り付けられる。この日は、バスマティライスの上にオレンジ色をしたスリランカのココナッツサンボル(ふりかけ)や、カレーパウダーなどで炒めたローストチキン、フライドエッグにビーツのスパイス炒め、ダル(豆)カレー、ナスのスパイス炒めがトッピング(写真上)。

ちなみに使用しているスパイスはすべてスリランカから直輸入したもの。スリランカ人に提供するときには辛めに、日本人などに提供するときは辛さを控えめにするなど、お客に合わせてスパイスの量を調整している。

野菜は東京・青梅にある「Ome Farm」や栃木にある知人の農園から仕入れた無農薬有機野菜を使用している。
写真上、オレンジ色の“ココナッツサンボル”は、玉ネギやチリにココナッツを加え粉々にして塩とコショウで整えたもの。

シャキシャキとした食感で爽やかな辛さが特徴的だ。ローストチキンは、先にみじん切りにしたネギ、唐辛子とカレーリーフやランペ(パンダンリーフ)を炒め、そこにカレーパウダー、チリ、クミンなどのスパイスに日本の醤油やだしつゆを少々混ぜたものに漬け込んだチキンを加え炒めており、ちょっぴり和風なスパイシーローストチキンといった感じだ。
南インドカレーやネパールカレーなど、日本でも知られるようになってきたダールカレーは、玉ネギ、唐辛子、メダカの仲間と言われる熱帯魚のモーリーフィッシュを炒め、そこに豆、細かくしたニンニク、カレーパウダー、チリ、ターメリック、塩を加えて水で茹でたものを混ぜ、ココナッツミルクを加えている。辛さはそこまで強くなく、ココナッツミルクと豆の優しくまろやかな味わいが特徴的だ。
ナスはニンニクとココナッツミルク、カレーパウダーとチリペッパー、赤玉ネギとともに炒めて、コクのある甘辛い味わいに仕上げている。 ヌーワンさんいわく、「食べるときは一部分だけ混ぜて食べてもいいし、全部を混ぜて食べてもいい」とのこと。ちなみにバナナリーフの上に乗せて提供されるパパダン(豆の粉末と小麦粉で作る薄いせんべい状の食べ物)は、お好みのサイズに砕き、カレーの上にトッピングしていただく。 すべてを混ぜていただいてみると、口の中で苦味、甘み、酸味、辛味、塩味と五味すべてが複雑に変化しながら広がっていく。食感もパパダンのパリパリ感、ココナッツサンボルのシャキシャキ感などバラエティ豊か。
カレーというよりも、具沢山でスパイシーな混ぜごはんといったほうが日本人にはわかりやすいような料理でもある。

全体として味わいは豊かで食べごたえはありながら、油っぽさがなく軽やかに食べられるのもうれしい。肉も野菜も豊富なので栄養バランスもよく、新鮮なスパイスをふんだんに使用しているからか目が覚めるようにエナジーがみなぎってくるような感覚になる。

無料デリバリーサービスや、1日1組限定の屋上BBQも展開

Photo by dressing

ちなみにランチタイムには、魚のすり身やジャガイモを使ったスリランカのコロッケとスリランカ名産のセイロンティーがつくお得なランチセットを1,300円で提供。バナナリーフカレーのほか、ヌーワンさんが日本人向けに甘めの味わいで作った「金のクリームエビカレー」(写真上)もランチセット1,800円で提供している。 また現在『フロリダ亭』では送料無料のデリバリーサービスも実施。池袋から車で30分以内であれば一品からでもオーダー可能で、なんとついで買いまで対応してくれる。
店舗には輸入食材の販売スペースもあり、スリランカ産の紅茶やお米、調味料のほか、スリランカ以外のエスニック食材や日用品も販売。留学生たちの胃袋を満たすだけでなく、近隣に住む外国人たちのライフラインとしても機能しているようだ。
ちなみに『フロリダ亭』には屋上もある。1日1組限定でBBQも行なっており、ロティという全粒紛の無発酵パンを細かくカットしたものと、チキン、卵、玉ネギ、ニンジンなどを混ぜて作った古代スリランカスタイルの「コットゥロティショー」などもBBQスタイルで味わえるというから興味深い。 周りに高い建物が少ないため、屋上からは東京スカイツリー®や東京タワーを見渡すこともでき眺望の良さ、開放感も魅力だ。 外国人留学生に優しいお店は、つまり誰をも受け入れる懐の深いお店でもあるということだろう。今となっては外国人留学生だけでなく、カレー好きな日本人も遠くから訪れるようになったという。ここにはいま、お互いの文化を理解し、尊重しながら楽しい時間を過ごす人たちがいる。 【メニュー】 バナナリーフカレー 1,000円(ランチタイムは単品800円、セットメニュー1,300円) 金のクリームエビカレー 1,500円(ランチタイムはセットメニューで1,800円) ※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です

天空のプライベートBBQガーデン フロリダ亭

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