2代目が亡くなられて後を継がれたわけですが、3代目として、どんなことに取り組まれましたか。

寺出:父を亡くし、しばらく経って落ち着いた頃、急にエネルギーをなくしたようになってしまいました。自分では気がつかなかったのですが、父を目標に追いつこうと、必死に頑張っていたんですね。

そのとき、父の遺品を整理していたら、初代の戸籍謄本が出てきたんです。書いてある住所を見たら、近江牛を東京に紹介し、広めたとして知られる竹中久治(きゅうじ)と西居庄蔵(しょうぞう)のふたりと同じ出身地。さっそく、滋賀県へ寺出家のルーツを探しに訪れたんです。

Photo by 近江屋牛肉店

寺出家の家紋
寺出:菩提寺を訪ねると、寺出家のお墓は、竹中家と西居家のお墓と並んで建っていたんですよ。これには驚きましたね。こんなに近江牛と深い縁あるんだって。

それから原点に立ち戻り、近江牛を売ることが自分のやるべきことなんだと思うようになりました。近江牛との縁は、父が引き寄せてくれたんだなと思い、感謝しています。

日本最古の和牛、近江牛の魅力とは?

Photo by Kaori Saneshige

近江牛には、どんな特徴や魅力があるのでしょうか。

寺出:近江牛は400年の歴史があります。まだ食肉禁止だった江戸時代、当時、唯一彦根藩だけが、江戸城に納める太鼓の皮を作るために、牛を処理することを許されていました。余った肉は、滋養の薬「反本丸(へんぽんがん)」として売られていました。ですから、近江牛は日本最古の和牛であるといえます。

近江牛の特徴は、肉質がきめ細かく、サシが美しいこと。脂も融点が低いので、口の中でとろけるような上品さがあるんです。

私たちの店では、最高の近江牛を育てている農家から近江牛を一頭丸々仕入れています。本物の近江牛のおいしさを味わっていただきたいですね。

老舗だからこそ、チャレンジし続ける

Photo by Kaori Saneshige

初代や2代目が築いてきたものが、今の「近江屋牛肉店」の財産になっていますね。

寺出:自分だけで商売が成り立っているのではなく、初代から2代目そして今へと繋がっているからこそだと思います。そして、“買い手よし売り手よし世間よし”という「三方よし」の近江商人の精神を忘れずに、築地で新しいことにもチャレンジしていかなければと思っています。

老舗を継いだ人たちは、「守り続けないといけないからこそ、変わり続けなければいけない」とよく言うんですよ。いつも前進して、行動することを一番の目標にしています。チャレンジしてダメだったら、そこで次を考えればいい。こういった考えは、初代や2代目の歴史から教わったことなんです。受け継いできたチャンレジ精神で、現在は「ロースト肉工房」に取り組んでいます。

「ロースト肉工房」を通じて新たな築地を発信したい

Photo by Kaori Saneshige

大盛況を博した「ロースト肉工房」レセプションの様子
※掲載情報は記事制作時点のもので、現在の情報と異なる場合があります。

編集部のおすすめ