ライター : 白江 和子

管理栄養士 / webライター

便利な冷凍野菜!でも栄養がないって本当?

市販の冷凍野菜は便利だけど、生の野菜より栄養価が低そう……というイメージがある方、多いのではないでしょうか?しかし、市販の冷凍野菜は、栄養たっぷりな「旬」の時期のものを使用。季節にもよりますが、生野菜の方が栄養価が低いこともあります。

ただし、冷凍野菜を製造する過程で、損なわれる栄養素もあるため注意が必要です。市販の冷凍野菜と生の野菜の栄養価の違いについて、詳しく見ていきましょう。(※1,2)

冷凍野菜の栄養素の違い

違い

  1. 水溶性の栄養素が冷凍前の下処理で流出する
  2. 脂溶性の栄養素は冷凍による損失は少ない
  3. 旬の時期に冷凍されたものは栄養価が高い

水溶性の栄養素が冷凍前の下処理で流出する

市販の冷凍野菜は、旬の時期に収穫した野菜に「ブランチング」という下処理をほどこしたあと、急速凍結することで作られています。ブランチングとは加熱処理のことで、野菜の変質・変色を抑えるためにおこなわれる工程です。

急速凍結では栄養価は変わりません。しかしビタミンB群やビタミンC、カリウムなどの水に溶けやすい性質がある栄養素は、ブランチングの工程で水に流れ出てしまいます。とくにビタミンCは熱に弱いので、栄養価が低くなりがちです。(※2,3,4,5)

脂溶性の栄養素は冷凍による損失は少ない

ビタミンA・ビタミンEなどの脂溶性ビタミンは、水に溶けにくい性質がある栄養素です。ビタミンCやカリウムなどの水溶性ビタミンとは異なり、ブランチングの影響を受けにくいため、栄養素の損失は少ないのが特徴。

脂溶性ビタミンを野菜から摂りたいときは、冷凍野菜を活用するとよいですね。(※1,3,4,5)

旬の時期に冷凍されたものは栄養価が高い

野菜の栄養価は季節により差があり、栄養がもっとも多く含まれているのは、旬の時期に収穫された野菜であることがわかっています。たとえば、ほうれん草やばれいしょのビタミンC、ブロッコリー、トマトのカロテンなどは季節により差が大きくなります。

旬とは出回る量が多く、味がよいとされる時期。旬の時期に収穫、冷凍されたものは、栄養価が高いだけでなく、市場に出回る量が多いため値段が抑えられるのもうれしいポイントです。(※6,7,8)

冷凍野菜と生野菜の栄養価を比較

カロリービタミンAビタミンCビタミンEカリウム
冷凍のほうれん草26kcal590μg5mg3.1mg90mg
生のほうれん草18kcal350μg35mg2.1mg690mg
冷凍のにんじん30kcal920μg4mg0.8mg200mg
生のにんじん35kcal720μg6mg0.4mg300mg
冷凍のかぼちゃ75kcal310μg34mg4.2mg430mg
生のかぼちゃ78kcal210μg43mg3.9mg430mg
冷凍の里芋56kcalTr5mg0.7mg340mg
生の里芋53kcalTr6mg0.6mg640mg
冷凍のスイートコーン91kcal
6μg
4mg
0.1mg
230mg
生のスイートコーン89kcal4μg8mg0.3mg290mg
冷凍のグリンピース80kcal36μg20mgTr240mg
生のグリンピース76kcal35μg19mg0.1mg340mg
(※9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21)
Tr:該当する成分の含有量が日本食品標準成分表において、最小記載量の1/10以上5/10未満であることを表しています。
100gあたりで比較してみると、グリンピースのビタミンCを除いて、ビタミンCとカリウムは生の野菜よりも冷凍野菜のほうが低い値です。これはビタミンCとカリウムが水溶性であるため、ブランチングにより栄養素が水に溶けだして損失したと考えられます。

一方で、脂溶性ビタミンのビタミンAやビタミンEは、グリンピースとスイートコーンのビタミンE以外、生の野菜より冷凍野菜のほうが高い値です。栄養素の性質により、冷凍野菜のほうが栄養価が高くなる場合があることがわかります。(※2,3,4)
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