連載

【日々の味付け帖 Vol.69】出会いに感謝したくなる。野本やすゆきさん愛用の調味料たち。

料理と向き合い生活している食のプロに、お気に入りの調味料を訊く連載企画。今回は、老舗寿司屋の三代目としてカウンターに立ちつつ料理研究家、フードコーディネーターとして活動中の野本やすゆきさんに愛用品を伺いました。

2019年1月22日 更新

ライター : macaroni編集部

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Today's Foodie

大学商学部卒業後、調理師学校に入学し調理師免許取得。谷中で一番古い家業の寿司店で修業するかたわら、祐成陽子クッキングアートセミナーに入校。卒業後、同校アシスタントスタッフを経て独立。料理雑誌へのレシピ提供、テレビ番組や広告のフードコーディネート、料理講師、フードコーディネーター養成スクールの講師、松寿司三代目として寿司屋の経営など、食にかかわるジャンルで幅広く活躍。

導かれるように料理家に。

Photo by macaroni

「僕が今のような仕事をできているのは、出会いに恵まれたからですよ」 東京・谷中の老舗寿司屋「松寿司」の三代目、野本やすゆきさん。料理研究家としても活躍し、寿司職人の型にとらわれない料理やレシピで多くのファンを虜にしている野本さんは、端から見れば料理の世界のサラブレット。迷うことなく今の自分を目指してきたのだろう……と思いきや、「ぜんぜん、そんなもんじゃないですよ」と苦笑しながらかぶりを振ります。 「調理師学校を出て1年くらい寿司屋で働いたら、嫌になっちゃったんですよ。もっと違うことをしたいって思うようになった。今でこそ寿司屋は天職だと思っていますが、当時はそんな気持ちでした」 料理とは無縁の世界で働くことも考えたという野本さん。しかし、友人の言葉である気づきを得たといいます。 「『おまえ、実は料理好きなんじゃない?』と言われたんです。店を継げばいいやって、流されるように入った食の世界だったんですが、実のところ、人に会うと料理の話ばかりしていたらしくて」 言われてみればと省みて、自分は料理が好きなんだと確信した。でも、今と同じようには仕事をしたくない……。そこで野本さんは、当時はまだよく知られていない職業だったフードコーディネーターに活路を見出します。たまたま手に取った雑誌で知った、テレビ業界との関係が深い仕事。子供の頃からテレビっ子だったという野本さんにとって、これ以上ないほど魅力的に思えたとのこと。 「本当にやりたいことを見つけたと思いました。言い換えると……、夢ですね。20代前半ではじめて夢ができました」 その後の野本さんの人生は、フードコーディネーター、料理研究家という仕事へ導かれるかのように進んでいきます。 「夢をかなえる方法を考えて、『祐成陽子クッキングアートセミナー』への入学を決めました。これ、あまり公にはしていない話なんですけど……、人生ではじめて競馬の三連単、100円が数十万円になるくらいの馬券が当たったんです。それをそのまま学費に当てました。あんな大勝ち、そうあることではありませんから、巡り合わせかな、なんて思いましたね」 さらに、卒業のタイミングでちょうど祐成のアシスタントが空席になって誘われたり、偶然知り合った現役フードコーディネーターに手伝いを頼まれ、それをきっかけにテレビ業界の人脈を得たりと、少しずつ夢の実現へ近づいていく野本さん。そんななかで急転直下の出来事が起こります。 「急に父の体調が悪くなってしまったんです。料理研究家という仕事で手応えを得た時期でしたが、店もある。料理研究家の仕事をとるか、店をとるか、身の振り方に悩みました。でも、僕の師匠筋にあたる人が言ってくれたんです。『両方やればいいじゃない』って。背中を押してくれたあの言葉、忘れられません」 そうして寿司屋の経営と料理研究家の仕事を両立するようになり、やや変則ではあるけれど、夢見た自分にたどり着いた野本さん。出会ってきたさまざまな人に導かれたようにも見えるキャリアですが、そんな野本さんが愛用している調味料も、まさに出会いの結果だといいます。 「なんでもそうかもしれませんが、知らないものは買えないし、興味をもたなきゃ味を見ることもありません。旅先で見つけたり、人にすすめられたりと出会い方はそれぞれですが、偶然でも必然でも、邂逅する機会があったということ」 出会いに助けられてきた野本さんが、数多の出会いを重ねるなかで厳選した愛用品たち。一流の料理研究家であり寿司職人でもある野本さんのセレクト、要チェックです!

1.【塩】自然海塩「晴耕雨読」「海のめぐみ 手塩」

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「ある日食べに行ったお店の塩がおいしかったんです。帰りにレジを見たら調味料を売っていたので、『今日食べたお塩ってこれですか?』って訊ねてみたんですよ。それは違ったんですけど、『これもおいしいですよ』と勧められまして。それで購入したのがこの塩です。 旨味をしっかり感じられるところがいいですね。加えて、食感もいい。フレークのようになっていて、サクサクとした感触が良いアクセントになります。だから、天ぷらとか、素材の味をそのまま味わいたい時に使うといいですよ。良いトマトとか、この塩とオリーブオイルがあったら不味く食べる方がむずかしい(笑)。

2.【酢】ミツカン「三ッ判 山吹」

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「ある日、親しくしていただいているカメラマンさんがお店に遊びに来てくれて、『このお酢、おもしろいから試してみたら』とプレゼントしてくださったんです。さっそく使ってみたら、これがまぁおいしくて。シャリに使うお酢はそれからいろいろ試してみたんですが、今はこの『山吹』に落ち着いています。 赤酢全般に言えますが、旨味が強いですね。黒酢でつくるような料理、たとえば酢豚なんて合うと思いますよ。あと、小籠包のタレにしたり。風味のあるお酢なので、これを使うなら塩分は多少控えてもおいしく仕上がります」

3.【オリーブオイル】サルバーニョ「サルバーニョ エキストラヴァージンオリーブオイル」

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「このオリーブオイルは、あるテレビ番組のお手伝いに行った時にご一緒にした植竹さんというシェフが持ってきていたものなんです。ちょっと気になって少量味見してみたら驚くほどおいしくて。『これ、すごくおいしいですね』と言ったら残っていたものをくださったんです。以来ずっと使っています。 先の塩の時にも話しましたけど、そのまま食べればおいしいという食材を買った時に使うことが多いです。いい食材は塩とオリーブオイルで試してみたいって気持ち、あるじゃないですか。ソースの話とちょっと矛盾しちゃうんですけども(笑)」

4.【ソース】半久食品「マドロス 中濃ソース」

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「栃木へ行った時、たまたま寄った道の駅で見つけたのがこのソース。けっこう最近見つけたもので、まだ付き合いは短いんですけど、本当においしくて気に入っています。半久食品というのは元々乾物の卸をしていた会社らしくて、現在のご主人で三代目。その三代目がただひとりでつくっているんだそうですよ。ソースをひとりでつくって販売してって、ちょっと想像つかないでしょう? そもそも僕、ソース好きなんですよ。目玉焼きだってソースで食べるし。谷中に住んでいると思うんですが、職人ってソースが好きですよね。僕が知っている一流の職人さん、考えてみればみんなソース好きです。天ぷらだってソースで食べちゃうという人ばかりですよ(笑)」
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