「辛党なので激辛で!」は間違い!辛党が本当に好きなものは?

あなたは「辛党?それとも甘党?」という表現は、普通によく耳にしますよね。しかし、その言葉に含まれた意味は複雑に入り混じっているようです。そのカギとなるのはお酒……!辛党と甘党の真実を求めて、古き時代にさかのぼり真相を探ります。

2016年9月28日 更新

あなたは辛党……ではないかも?

こんな会話を耳にすることはありませんか?

「辛党はカレーやキムチなどの辛(から)いものが好きなひとのことじゃないの?」
「違うよ、辛党は、甘いものよりお酒の方を好むひとのことだよ」

たしかに、辞書にはしっかりと「辛党……菓子などの甘いものよりも酒のほうを好むひと」と記されています。

NHK放送文化研究所では「辛党」=「辛いもの好き」という認識が生まれたいきさつを、1980年代の「激辛ブーム」以降、もともと日本にはあまりなかった激辛味が多くなり、それを表現する際に「辛党」が転用されたのではと解説しています。では、辞書にも載っていない「辛党は辛いものを好むひと」という解釈は間違いなのでしょうか?

実はこれ、間違いとはいいきれません。なんと、昔から「辛党は酒好き」も「辛党は辛いもの好き」も、並行して使われていたのです。

辛党の本当の意味、知ってる?

過去の用例から見る「辛党」の意味

昭和初期に活躍した劇作家の岸田國士(きしだくにお)さんが書いた『甘い話(1930年)』や、俳人の種田山頭火(たねださんとうか)さんの『其中日記(1935年)』では、「辛党はお酒を好むひと」という解釈で引用されています。

しかし、新聞記者だった松川二郎(まつかわじろう)さんの『趣味の旅 名物をたづねて(1926)』や、日本の医師で育児評論家の松田道雄(まつだみちお)さんの『私は赤ちゃん(1960)』では、「辛党は辛(から)い味付けを好むひと」という解釈で引用しているようです。

そうなると、1980年代の激辛ブームから「辛党」の解釈が取り違えられたという話が怪しくなってきました。1920年代にも、1930年代にも、1960年代にも、辛党は辛いもの好きという解釈と、酒好きという解釈が並行していたのですから。さて、ではいったい真実はどれなのでしょう?

「辛党」の本当の意味とは

結論からいうと、いろんな解釈すべてが間違いではありません。ただし、唐辛子のような激辛ではなく、塩辛い(塩味が濃い・しょっぱい)ものというのが本来の意味です。つまり、「辛党」=「甘いものよりも、お酒もしくは塩辛いもの、あるいは両方が好きなひと」というわけなのです。

そもそも、辛(から)いという言葉は、古い時代において「舌を刺すような鋭い味覚」全般をいい表していたようです。それは、しょっぱい味や、酸っぱい味、アルコールによる刺激もひとくくりだったということです。塩味が濃いものを「からい」といい表すのは、東海・西日本一帯・東北においては現代でも同じです。

なお、辞書に「辛党=酒好き」解釈のみが引用され、「辛党=塩辛いもの好き」が引用されていないことに関して、「ある時期になぜか辞書から取りこぼされてしまった」といわれています。

1930年代生まれの80代の女性に「辛党」とは?と尋ねてみると、即座に「お酒が好きなひと」と答えてくれます。しかし、では、辛いものが好きなひとのことではないの?と聞くと、「いや、辛いもの“も”好きなひと」といいます。そして、「お酒が好きなひとは、味付けの濃い塩辛いものを好むから、どちらの意味も含まれる」と教えてくれました。
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WRITER

中山陽子

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