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フランスで出世したおやつ「クレープ」
小麦粉を牛乳と卵で溶いた生地を、鉄板でごく薄く焼いたもの。生クリームやアイスクリーム、果物を挟めば甘いおやつに、ツナや卵、マヨネーズを具にすれば軽食として。それ自体がプレーンでニュートラルだから、フィリング(具)次第で変幻自在に姿を変えられるのがクレープの魅力。
今ではすっかり日本人にもおなじみのものとなりましたが、ルーツはフランス。
このクレープ、実はフランスのスイーツの歴史の上で最も「出世した」おやつといっても過言ではないのです。
元祖はそば粉のパンケーキ
クレープ発祥の地はフランス・ブルターニュ地方。
今ではワインの名産地として知られる地ですが、中世の頃は土地がやせていて小麦粉が育たず、かわりに荒れ地でも育つそばを栽培し、人々はそば粉と水で作るそば粥を主食として食べていました。
ある日、そば粥を焼けた石の上に落としたところ、こうばしく焼けたのがはじまりだそう。薄いパンケーキは石(フランス語でガレ)にちなんで、「ガレット」と名付けられました。
これがクレープのルーツです。
ガレットをクレープに変えたフランス王妃
やがてガレットはブルターニュ地方の普段食として食べられるようになりましたが、17世紀にこの地を国王ルイ13世一家が訪れたことでクレープの運命が変わります。
ルイ13世の妻であるアンヌ王妃が偶然食べたガレットをいたく気に入り、宮廷料理に取り入れるようにと命じたのです。
これがきっかけとなって、生地の材料に変更が加えられました。そば粉は小麦粉へ代わり、バター、卵、砂糖なども加えられ、生地がちりめん状に焼きあがることから名前もちりめんを意味するクレープと呼ばれるように。生地に甘みがつけられ、食感がさらに薄くなったのは王妃の好みだったのでしょう。このため、アンヌ王妃は後世では「クレープの母」と呼ばれています。
現在ではフランス風薄焼きパンケーキの総称がクレープとなっていますが、そば粉を利用したものは依然「ガレット」と区別されています。
貧しい土地で生まれた普段食から、王妃のデザートにまで出世したクレープ。フランスのおやつ史上、こんなにも立身出世を遂げたスイーツは他にありません。
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