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連載:甘いクリスマスリースに微笑んで。

7日連続でお届けするグルメ恋愛小説・第4話。仕事に没頭するあまり恋を後回しにしてきた咲子、28歳。入社以来ずっと仲良くしてきた同期の高志は、なんでも相談できる男友達だ。それ以上でも以下でもなく……そんな関係が、クリスマスを目前に動き出す。

クリスマスまであと2日・・・

待てど暮らせど高志からの返事は来ず、その代わりに突然届いたのは、課長からの「お怒りメール」だった。

経営会議で課長が役員へのプレゼンに使うはずだった総務資料作りをすっかり忘れていたのだ。

今日18時から別の役員会議がある。課長のプレゼンは今日に延期されたので、なんとかそれまでに資料を作成しなければならない。

こんな日に限ってイレギュラーな対応が多く、ランチを食べる時間がなかった。

もう時計は16時を回っている。
「昨日は返事できなくて悪かったな。携帯壊れてて連絡できなかったんだ。はい」

外回りから戻ってきた高志が、コンビニのおにぎり2個と、オフィスからほど近い『銀座マネケン』のメープルとチョコレートのワッフルが入った小さなビニール袋を机の上に静かに置いた。
たまたま周りには誰もいなかった。昨日、高志を飲みに誘ったのにメッセージが返ってこなかったのだ。
携帯が壊れていたせいだと聞いて、少しほっとしている自分がいた。
「わざわざいいのに」

単に差し入れをくれたことに対する以上の嬉しい気持ちを気付かれたくなくて、いつも以上にぶっきらぼうになってしまった。

「お客さんからたまたまもらったからさ」

そう言うけれど、ワッフルにはお店のテープが貼ってあるし、袋の中にはコンビニのレシートも入っている。

「ちょっと待って! 頼まれてた営業資料、もうできてるから持ってって!」

デスクへ戻りかけていた高志を呼び止めた。

「ありがと。……って、なんだこれ!? 全然似てねぇし!」
営業資料を入れたクリアファイルに、「ありがとう」とひと言書いた付箋を貼って渡した。

余白にはサッと描いた高志の似顔絵。自分ではけっこう上手に描けたつもりだ。

「うまいでしょ」

得意げにほくそ笑むと、高志はまじまじと私の顔を覗きこむように見てきた。

「何? なんか顔についてる?」

あまりにも長い間無言なので不思議に思っていると、高志がポンッと軽く頭に手を置いてきた。
びっくりして固まってしまい、何もリアクションできない。
高志は笑いながら机に戻っていった。

「ありがとさん。いやあ、今日クレーム対応でかなり参ってたんだけど、元気出たわ」

高志にしては珍しく、少し元気のない声だった。

何か声をかけようと思っているうちに、高志はもう自分の席に着いていた。

気の利いたことを言えなかった自分に後悔が残るけど、急いで食べて私も仕事をしないと。
チョコレートとメープルが口の中で溶けて、ちょっと幸せな気分になる。

銀座のマネケンはテイクアウト専門のワッフル屋さんで、入社当初からよくお世話になっている。

仕事で失敗した時や恋が上手くいかなかった時は、いつも高志がワッフルを買ってくれて、日比谷公園まで歩いて愚痴を聞いてもらいながらよく食べたものだ。

自分を良く見せたくて、好きな人には弱音を吐けなかったけど、高志には新入社員の時から情けないところを見せてばかりだ。

いつも黙って聞いてくれるけど、感謝しなくちゃだね。ごちそうさまでした!

袋を捨てようとした時、四つ折りにされた薄いブルーのメモが入っていることに気づいた。

〈明日20時 東急東横線尾山台駅集合〉

明日? 明日って、クリスマス・イブ……? クリスマス・イブに誘われたのは初めてだ。
明日の夜は、残念ながらもちろん空いている。でも、どういうつもりなんだろう?
まあ、いつも通り、深く考えずに行けばいいよね。

お世話になりっぱなしだし、ワッフルのお礼も言い損ねてしまったし、なにかお礼がしたい。

〈了解〉とだけメッセージを送って、また仕事に戻った。
甘いワッフルでひと息ついたせいか、なんだかサクサク仕事が進む。早く終わらせて、高志にプレゼントでも買いに行こう。

「悪い、春口さん。明日の朝の会議までに、過去3年分の稟議書の中から探してほしいものがあるんだが……」

期限までになんとか資料を作り終え、19時半を過ぎてそろそろ帰り支度をしようと思っていた頃だった。

役員会議から戻ってきた課長に仕事を振られ、これではプレゼントを買いに行くどころではない。3年分の稟議書ファイルといえばかなりの量がある。

急いで取りかかったが、探していた書類が見つかった頃にはもう、近くのお店はどこも閉まっていた。

――あれ?

今度こそ帰ろうと支度をしていると、バッグの奥底に、すっかり忘れていた大事なものが見つかった。
(続く)

物語の続き

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