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個性的なベーカリーが多い用賀に、ニューフェイス誕生!
ベーカリー激戦区として知られる世田谷区。中でも高級住宅街・用賀は、『ジャンフランコ』『PANA-PAN(パナパン)』『ラ・パニョッタ』などクオリティが高く個性的なベーカリーが多い。そんな用賀に新たなベーカリー『MAISON KUROSU(メゾン クロス)』が2021年4月22日にオープンした。
田園都市線の用賀駅から馬事公苑方面に2~3分ほどの静かな通り。人気フランス菓子店『Ryoura(リョウラ)』のはす向かいにあり、白を基調に木の質感を生かした上品で美しい外観が目をひく。小さな店で、1回の入店人数を2組に制限しているため、常に行列ができている。
入るとすぐにパンが並んだガラスケースがあり、その奥にパン工房が見える。朝10時の開店と同時にどんどん売れていくため、1日中、パンを作り続けているが、それでも夕方には完売してしまうことが多い。
「子供が安心して食べられる、体にやさしくておいしいパンを作りたい」
オーナーパティシエの黒須貴仁さんは、栃木県出身。食に興味があり、創作系料理のレストランでオードブルを担当し、パンに合うソースを作り始めたことがパンに興味を持ったきっかけだった。
「いつかは自分のパン屋を開きたい」という夢を抱いた黒須さんが修業先に選んだのは、地元で一番有名なベーカリー『ペニー・レイン』。そこでチーフを務めた後、上京して『ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション』(六本木)でさらに腕を磨き、独立を果たした。
『ペニー・レイン』では、シンプルなパンを丁寧に作る大切さを学んだ。今でもバゲットの整形などは『ペニー・レイン』で教わったやり方を忠実に踏襲しているという。だが『ラトリエ ドウ ジョエル・ロブション』ではパン作りの見方が大きく変わったと語る。
「プロセスも仕上げも驚くほど繊細で、デコラティブで、見た目も華やか。常に先進的な手法をとりいれ発展させ続ける姿勢も学びました。でも、その凄さを理解できたのは、『ペニー・レイン』でシンプルなパン作りをしっかり学んでいたからだと思います」(黒須さん)。
その後、黒須さんのパン作りは2つの出逢いよって大きく変化する。
ひとつは「日本脂質栄養学会」の会員で、油に徹底的にこだわり、添加物の影響にも詳しい人物との出逢い。その影響で黒須さんも、パン作りにおいて健康を重視するようになる。その後、自身の店の開業準備として、勉強のために無農薬の野菜を作っている会社に入社。その経営者の言葉で、今後のパン作りの指針を定めた。
「僕にも子供がいるので、社長さんの『次世代の子供たちのことも考えた食のあり方が必要』という言葉が、すごく心に響いたんです。とはいえ、人間にとって糖は体によくないといわれていますが、砂糖を使わなければパン屋はできません。そこが難しいところなんですが、うちではできるだけ、精製されていない含蜜糖(ミネラルなどを豊富に含む糖蜜を結晶と分離せずにつくる砂糖)を使っています」(黒須さん)。
店内に飾られている額には、「次世代の子供にも安心して食べて頂きたい思いから、身体に優しくて美味しいを目指してお作りしています」という黒須さんの想いが綴られている。
パンの原料に使用しているのは、無農薬・低農薬の小麦粉や、栃木県産の無農薬のふすま。そのほかには有機野菜・無農薬野菜、沖縄の海水で作られた海塩、ミネラルを豊富に含んだ含蜜糖、コールドプレスの植物油、フランス産発酵バターなどを使用している。また現代人に不足しているといわれるオメガ3(リノレン酸)をパンから摂取できるよう、亜麻仁オイル、亜麻仁シードをふんだんに使用しているのも特色だ。
イチ押しは、京都の老舗『山梨製餡』謹製のオリジナル餡を使ったあんぱん
この店を訪れたら必ず味わって欲しいのが、「和三盆餡子(わさんぼんあんこ)」(写真上・左)と、「手亡白餡子(てぼうしろあんこ)(同・右)だ。「和三盆餡子」には店のロゴマークの焼き印が、「手亡白餡子」には丹波の黒豆と金箔が乗っている。
「和三盆餡子」は、大正9年創業の京都の老舗『山梨製餡所』と共同開発をしたオリジナルつぶあんを使用。ふっくら炊いた塩豆とともにパン種で包み、焼き上げている。
京都東山に流れる純水に近い地下水を使用してていねいに炊いたあんは、雑味がなく、小豆本来の風味がすっきり鮮烈に感じられる。ほのかな塩味の大粒の豆、小麦のうまみを感じるふんわりした生地とのバランスもよく、まさに“絶品”といいたいあんぱんだ。
一方、「手亡白餡子」は白インゲン豆から作るコクのあるなめらかなこしあんを、やわらかく歯切れのいい生地で包んで焼き上げている。「白あんってこんなにおいしかったのか!」と驚く人も多いだろう。
バター好きなら「手亡白餡バター」(写真上)もぜひ味わってほしい。冷蔵庫で冷やしてバターが冷たいまま食べると、バターのこっくりした甘みと白あんのなめらかな甘みの対比を楽しめる。室温に少し置くとバターがやわらかくなって「手亡白餡」と融合し、上品なクリームのような味わいになる。
クリームパンには、流れ出るほどトロトロにやわらかいクリームがみっちり
スイート系のパンのもうひとつのおすすめが、卵たっぷりのやわらかいブリオッシュ生地に、「日光御用卵」を使用したトロトロのパティシエール(カスタードクリーム)をつめこんだ 「クリームパン」(写真上)。クリームはかぶりつくと流れ出すほどやわらかく、やさしい甘さの奥にカラメルのような香ばしさもある。クリーム好きなら、永遠に味わっていたくなる味だ。
カレー好きなオーナー夫婦の合作!「バターチキンカレー」
塩系のパンのイチ押しは、「バターチキンカレー」(写真上)。バターチキンカレー作りが趣味という黒須さんと、同じくカレー好きの奥さまの合作だ。
「できればパンの横にカレーも並べて売りたかった」と語るほどカレー好きな2人だけに、フィリングの自家製バターチキンカレーは7種類のスパイスを配合させたこだわりの味。黒須さんはもっとスパイシーにしたかったが、奥様の意見で食べやすいやわらかな辛みに仕上げた。結果、「子供も食べられる」と好評だという。
ナンをイメージして作ったという皮は、もっちりして甘みがあり、バターチキンカレーによく合う。バゲットから作ったパン粉のトッピングがザクザクした食感でいいアクセント。バターチキンならではのコクも堪能できる。
季節ごとに変わる種類豊富なフォカッチャは、全種類を制覇したくなる!
塩系パンのもうひとつのおすすめは、フォカッチャ。「プロシュート」(写真上・左)、「焼きとうもろこし」(同・中)、「ガーリックシュリンプ」(同・右)など種類豊富。現在のラインナップは「ガーリックシュリンプ」「マルゲリータ」「焼きとうもろこし」「じゃがいも」などだが、季節により変えていく予定だという。
フォカッチャの具材は無農薬野菜を使用し、全て手作り。10時の開店から10時半頃に焼きたてが店頭に並ぶ。
「ガーリックシュリンプ」(写真上)は、ガーリック風味に香ばしく焼き上げた小エビ、有機マッシュルーム、無農薬ディルを使用。驚くのは、かみきると口の中にあふれる、有機マッシュルームの凝縮されたうまみ! プリッとしたエビの食感、しっとりやわらかい生地の食感とのバランスもよく、ワインとともに味わいたくなる。
たっぷりの無農薬コーンを乗せて焼きあげた「焼きとうもろこし」(写真上)。焼きとうもろこしの香ばしさと甘みを、体にいい油にこだわった自家製マヨネーズとベシャメルソースが最高に引き立てている。
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