ライター : Terry Naniwa

編集・企画・ライター

食の世界を取材して30年余。自らの五感でセレクトした旬の情報から、次世代に残しておきたい 食の伝統などを発信中。大阪在住半世紀余、出汁の美味しさにこだわっています!

築100年余。京の町家カフェ「ろじうさぎ」へ

Photo by 西村仁見

あるグルメ女子がおいしい朝食のウワサを聞きつけて訪れたのは、京都東山区の宮川町。祇園に隣接し、昔ながらの花街の風情が漂うエリアです。石畳の通りから路地に入り、その奥に建つ町家へ。暖簾をくぐると、時が止まっているかのような、懐かしさを覚える空間が出迎えてくれました。

町家カフェ「ろじうさぎ」。京都出身の店主さんが「地元らしい町家でカフェを営みたい」との想いでこの場所にオープンし、今年で9年目となります。

「花街界隈に暮らす人は喫茶モーニングをよく好む」と聞いていたため、開店当初はカフェらしいパンとコーヒーの朝食と、ご飯とお味噌汁の純和風な朝食の両方を提供する店でした。ところが、界隈の人の大半にはもともとの行きつけがあり、喫茶モーニングにはお呼びがかからず。その後、純和風な朝ごはんの情報が観光客を中心に広まり、いつしかお店の名物となりました。今では全国から“日本らしい朝ごはん”を求めて多くの女性客が訪れています。

すべて手作り。This is Japanese breakfast

Photo by 西村仁見

朝食のメインは焼魚、出し巻玉子に、旬野菜たっぷりの小鉢が2品、お漬物と梅干し、そして炊き立てご飯と熱い味噌汁。まさに“ニッポンの朝ごはん”の原点です。

魚も出し巻玉子も、注文を受けてから焼きはじめます。丁寧にしっかりと作られた朝ごはん。ゆっくりいただくとお腹も心も満たされます。

なかでも炊き立てご飯のおいしさは格別。そのお米は、“しっとりした甘めのご飯”を提供するため、店主さんが自ら足を運んで厳選した、滋賀県産のコシヒカリとキヌヒカリの2品種です。数軒の契約農家から直接仕入れることで、年中おいしいご飯を提供できるよう努めているといいます。

炊飯道具も吟味を尽くし、火力の強いガス釜を選択。「炊き込みご飯や玄米ご飯も悪くはないけれども、うちのおかずには白いご飯、銀しゃりが一番合うと思います」と、店主の奥村成美さんが熱く語ってくれました。

「ろじうさぎ」の朝食は繰り返し食べたくなる

Photo by 西村仁見

卯年生まれのうさぎ好きで、ハンドルネームに「うさぎ」を使っていたこともあるという奥村さん。当然、自分の店の名前にもこの言葉を入れ、「ろじうさぎ」としました。

京都という土地柄、お客様の大半が観光客です。その人たちがリピーターとなって繰り返し来てくれたり、京都市内に連泊の人が翌朝もまた食べに来たりする。「ろじうさぎ」の朝食に、何度も食べたいと思わせるだけの魅力があるということです。

「京都には旅行で学生さんもたくさんいらっしゃいますが、最近はそんな若い人も朝食を食べに来てくれます。お米離れが進み、若い人はあまりご飯を口にしないと聞いていますが、ここではおいしそうに食べてくれる。そういう学生さんを見るとうれしいですね。ご飯の素晴らしさを若い人に感じてもらえたら何よりです」と奥村さん。

「一日のはじまりにしっかり朝ごはんを食べて、元気にスタートする。これって私たちが忘れかけている人の暮らしの原点ですよね」という奥村さんの言葉に、ウンウンとうなづくグルメ女子。そんなグルメ女子の提案で、朝ごはんにぴったりな冬の京のお惣菜(おばんざい)を、奥村さんに教えていただきました。

「ろじうさぎ」の店主が教える、冬の朝食べたいおばんざい

1. 京の冬ならではのお椀「粕汁」

Photo by 西村仁見

京の冬と言えば「粕汁」です。お店のレシピは奇をてらわないオーソドックススタイル。材料は、大根、金時人参、お揚げさん(薄揚げ)、白こんにゃく、そして豚肉。京都では具材のダントツ一番人気が豚肉です。酒粕は、地元の酒処・伏見産。出汁は、昆布とかつおで引いた純関西風。

はじめに大根と金時人参をゆでて、適度にやわらかくなったところに、出汁で酒粕を溶きながら汁を整えて、残りの具材を入れ炊きます(お揚げさんも、先に湯通しして余分な油を落としておくのもお忘れなく)。

塩と薄口しょうゆ、白出汁を加えながら味を整え、お椀によそってから刻みネギを盛り付けて完成。寒い京都の冬に、身も心も温めてくれるとっておきの椀物です。

「ろじうさぎ」には、この粕汁をメインとした朝ごはんが冬期限定で用意されています。

2. 冬はやっぱり「白菜とお揚げさんの煮浸し」

Photo by 西村仁見

冬野菜の代表格である白菜が主役のおばんざい。材料は、白菜、しめじ、お揚げさん、人参、柚子。

はじめに白菜としめじをさっとゆで、水気をしっかり切っておきます。お揚げさんは、焦げ目が少し付くくらいにフライパンで炙り、上写真のような長方形に切っておきます(ゆでるより焼いたほうが、形が崩れず食感も良く味が締まります)。

昆布とかつおで引いた純関西風の出汁、薄口しょうゆ、みりんで少し濃い目の浸し汁を作り、ゆでた白菜としめじ、お揚げさん、人参(ピーラーで薄い千切りに)と刻み柚子を入れます。それらを和えて浸したら完成。柚子の果汁も少し加えると風味が豊かになります。

「ろじうさぎ」の朝食で、旬野菜の小鉢2品のなかにこの煮浸しを見つけたら、幸福度120%の一日を過ごせそう。

「ろじうさぎ」はお昼やカフェタイムも魅力的

Photo by 西村仁見

「ろじうさぎ」の店内には、カウンターと、座敷にはテーブル席が用意されています。また、写真のようなグッズや、読書好きにはうれしい書庫も。

そして、訪れた誰もが関心を寄せる坪庭。手を加え過ぎない自然な佇まいに、奥村さんの想いが表れています。

こんな場所なら2時間でも3時間でも過ごしてみたいと思った人には、ランチタイムやカフェタイムもおすすめ。塩サバ焼や鶏から揚げがメインの昼ごはん膳や、甘酒や白玉あんみつなどが用意されたカフェが、悠久の都での思い出をさらに楽しく優雅に導いてくれるでしょう。
※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、不要不急の外出は控えましょう。店舗によっては、休業や営業時間を変更している場合があります。
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