ライター : カメイアコ

グルメライター

パンの激戦区・江古田に誕生した「ファミーユ代官山」

ここ数年、パンブームの勢いがとどまることを知りません。とくに生クリームやハチミツなどで作るリッチな生食パンが人気ですし、ハード系のパンをワインやビールと楽しむ「パン飲み」も注目されています。

Photo by カメイアコ

そこでこの記事では、「結局のところ“おいしいパン”って何なの?」という疑問をテーマに、パンの激戦区・江古田でその名を知られる「ファミーユ代官山」のオーナーシェフ小川高明さんに取材しました。

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焼き立てパンの良い香りのなか、小川さんはお客さんと気さくに言葉を交わし、とてもアットホームな雰囲気が漂います。テイクアウトのみで販売しているパンは、常時40種類以上。テレビ番組で紹介されたこともある「ラスク」はとくに人気があります。

おいしいパンは、自らおいしいと語りかけてくる!?

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オーナーシェフの小川さんが作るバゲットは、代官山時代に有名レストランから指名買いされるほどの一級品。本場フランスでパン作りを間近に見てきたシェフに、まずはフランスで人気のあるベーカリーの特徴を教えていただきました。

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「フランスはバゲッドが主食で、日常的に食べられています。私が渡仏していた当時、繁盛していたベーカリーは、伝統を重んじながらも、新しいものを取り入れたり先端技術を学んだり、常に消費者に新鮮さを与えていました

日本の主食である米も、全国各地でさまざまなブランド米が誕生し、消費者の選択肢が増え続けています。このことと同様で、フランスではパンが主食として考えられているからこそ、進化し続けるものなのです。

おいしいパンは見た目も、中身も美しい

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では、おいしいパン(バゲット)を見分ける方法はあるのでしょうか。

「見た目が違う。パンを見たときに“おいしいよ”とパンのほうから訴えてくるものがあると私は思います。たとえば、機械が均一ににぎった寿司と、経験をつんだ職人がにぎった寿司とでは、見た目のツヤ感も食感も違うと思うのです。

パンにも同じことが言えて、バゲットでは、切り込みの開き方、焼き上がりのツヤが、“おいしいかどうか”を判断するポイントです」

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切り込み(クープ)の開き具合は、きちんと発酵したかどうかを見極める基準になるもの。発酵しすぎてもしなさすぎても、食感と味わいを大きく左右するのだそうです。そして、技術はもちろんですが、使う粉も重要なのだとか。

おいしいパンは、“粉”と“酵母”にこだわっている

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バゲットは、小麦粉と塩、水、イーストとシンプルな材料で作るので、粉がとても重要。国内に数多ある製粉会社は日々技術を磨いていて、長年パン職人として一線に立つ小川さんも勉強は尽きないとおっしゃいます。

「フランス現地で食べた味わいを再現するために、5種類の粉を独自にブレンドしています。江別製粉の『ゆめちから』を使ったり、石臼で引いた香り豊かな小麦粉を使ったり。

イーストは、必要最小限の量しか使いません。イーストをたくさん使うとそのぶんパンは大きくなりますが、小麦味が薄く感じてしまうからです」

「ファミーユ代官山」の絶品パンをご紹介

レトロバゲット

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350円(税込)
フランス修業時代から作り続ける「レトロバゲット」。バゲットの顔とも言える切り込みは、生地の発酵具合と焼成によって自然と生まれてくるものです。

あえてパンに切り込みを入れて控えめな装飾を施したのは、バゲットを愛するフランス人ならではの美的感覚からくる遊び心と言えるかもしれませんね。

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バゲットの断面をご覧ください。ほどよく生地が詰まり、外はカリカリ、中はもっちりふかふか。気泡の形も美しいです。

少し押すとほどよい弾力があり、しっかり押し返してきます。これは発酵と焼成のバランスがうまくいっている証拠です。

リュスティック

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700円(税込)
続いて、お店のスペシャリテ「リュスティック」をご紹介。

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バゲットよりも水分量が多いのが特徴で、中はもちもちでしっとり。外側はカリッとクリスピーです。食パンとバゲットの良いとこ取りの風味と食感。初めて食べたときの感動は今でも忘れられません。
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