ライター : 高井 なお

道産子主婦グルメライター

1933年創業、札幌の老舗日本茶店「玉翠園(ぎょくすいえん)」

Photo by 高井なお

1933年に日本茶専門の卸問屋として創業した、札幌「お茶の玉翠園(ぎょくすいえん)」。街のランドマーク・テレビ塔や、人気観光スポット・二条市場から徒歩約3分の創成川イーストエリアにお店をかまえています。

お店の近くまで行くと、あたりに漂うふくよかな日本茶の香り。わたしたち日本人のDNAを癒してくれる、い~い匂いに誘われながら入店です♪

Photo by 高井なお

「日本茶専門店」「卸問屋」と聞くと敷居が高そうに思いますが、そんなことはありません。それは、玉翠園がお茶を使ったグルメやスイーツで支持されていることに表れています。

一番人気の「雪萌え(ゆきもえ)パフェ」は、数々のメディアに取り上げられる逸品で、これを目当てに訪れる若い層も多いんです。

もちろん古くから日本茶をもとめて通う常連客も多く、店内はいつも老若男女で大にぎわい。取材中にも、毎日通っているという常連さんが何人も訪れていましたよ。

今回は、玉翠園の専務 玉木 幸男(さちお)さんにお話を伺いました。パフェ以外のおすすめメニューと魅力をたっぷりお届けします!

「日本茶×北海道」おいしさあふれる多彩なメニュー

Photo by 高井なお

お店に入ってすぐ左手、写真付きのメニューがある場所でオーダーしましょう。

日本茶インストラクターのスタッフさんがメニューをくわしく教えてくれるので、はじめてでも大丈夫!玉翠園を運営する玉木商店は、北海道で唯一日本茶インストラクターが3名も在籍している会社なんですよ。

まずご紹介するのは、北海道のエゾ鹿肉が味わえる、一風変わったお茶漬けです。

雪もみじ茶漬け

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390円(税込)
「雪もみじ茶漬け」は、北海道米・ゆめぴりかに玉翠園オリジナルのエゾ鹿肉の佃煮「雪もみじ」をのせたお茶漬け。自社で焙煎したアツアツのほうじ茶を、カウンターで注いで出してくれます。

通年メニューではありますが、寒い季節に食べるとそれはもう、格別のおいしさなんです……!

Photo by 高井なお

自家製ほうじ茶でじっくり炊きあげられたエゾ鹿肉は、くさみがなく驚くほどホロっホロの食感♪

ごはんが進む濃いめの味付けで、上品なコクのほうじ茶とぴったりマッチしています。この見事なマリアージュは、専門店だからこそなせる技。

日本茶の香りを感じながら店内で食べるのもいいですが、すぐ近くにある創成川公園のベンチでテレビ塔を眺めながら味わうのもおすすめです。

Photo by 高井なお

ちなみに、お茶漬けに使われているエゾ鹿の佃煮「雪もみじ」(税込972円)は、瓶入りのものが店頭で販売されています。発売当初は物めずらしい商品だったため、店内で気軽に味見ができたらと「雪もみじ茶漬け」を考案したのだといいます。

「雪もみじ」はお茶漬けのほか、ごはんのお供や酒の肴、そばやパスタにトッピングするなど、アイデア次第でアレンジは無限大。常温で日持ちするので、旅のお土産にもぴったりですよ。

抹茶ラテ

Photo by 高井なお

450円(税込)
「抹茶ラテ」は、特製ソフトクリームに抹茶ソースをかけたアフォガードのようなスイーツです。目の前で抹茶を点ててくれるパフォーマンスも楽しみのひとつ。氷で冷やした抹茶ソースがパリっと固まり、不思議な食感を楽しむことができるんです♪

もうひとつの特徴はソフトクリーム。その日の気温や湿度にあわせて配合を変えている玉翠園のソフトクリームは、一日として同じ味になることがない、その日だけの味。控えめな甘さが、抹茶ソースの味を際立たせてくれています。

Photo by 高井なお

見た目は完全にソフトクリームが主体。ではなぜ「抹茶ラテ」というネーミングになったのでしょうか?

その秘密は抹茶の使用量にありました。「抹茶ラテ」に使われる抹茶は、なんと一服分!写真の量の抹茶を少量のお湯で点て、それを氷で冷やしたものをソフトクリームにかけているのです。

「この量の抹茶は、お茶屋じゃないと使えませんね。抹茶一服分がこの一杯に入っているから、カテキンやビタミンなどの栄養もたっぷり摂れますよ」(玉木専務)

なるほど、一般的な “ラテ” とは違うけれど、原材料の比率からみると、むしろ「抹茶ラテ」が自然なのかもしれません。

Photo by 高井なお

イートインでは食後に、淹れたてのほうじ茶を出してくれます。ソフトクリームで冷えた身体をじんわ~りあたためてくれる嬉しいサービス。

「最後にお茶を出してくれるから、身体が冷えないのもいいんです」と、取材時に来ていた子連れの常連ママさんが教えてくれました。小さな子どもが玉木専務に「おかわり!」と湯飲みをさし出している姿がとても微笑ましかったなぁ。

ちなみに、玉翠園のほうじ茶は焙煎してから1週間で売り切るため、いつも新鮮なおいしさが味わえますよ♪

「北海道で日本茶は栽培できない。それが逆に長所なんです」

Photo by 高井なお

「北海道の冷涼な気候で、おいしいお茶を育てるのはむずかしい。けれど長い間培ってきたネットワークを駆使し、その年の“いい茶葉”だけを全国から仕入れ、販売することができるのです。

北海道の気候はお茶の生育には不向きですが、長期熟成には最適。先代から受け継いだ熟成技術でお茶をより深くまろやかに、最高のパフォーマンスを引き出す「熟成茶」の製造にも力を入れています」(玉木専務)

Photo by 高井なお

お茶の熟成は、繊細な技術が必要なうえに高価なお茶でしかできないので、今では全国でもごく限られた専門店でしか継承されていないのだそう。

そんな玉翠園の熟成技術が偉業を成し遂げたのは、2016年12月に開催された全国規模の品評会「日本茶AWARD」でのこと。オリジナル商品・北海道熟成ブレンド茶「水の守人」が、北海道で初めて賞を受賞したのです!

ひとりひとりに合ったお茶を、リーズナブルに届けたい

Photo by お茶の玉翠園

1953年の玉翠園
玉翠園は1933年創業。元はこの場所で荒物雑貨商を営んでおり、その後日本茶の卸問屋へ。現在のように小売りに力を入れるようになったのは、1996年に本社ビルを新築したタイミングだったといいます。

“おいしいお茶を限りなくお値打ち価格で販売したい”

創業からの精神は、今もなお着実に引き継がれています。本格派のお茶でありながら、圧倒的にリーズナブルな価格で購入することができるのはそのためです。

Photo by 高井なお

現在の玉翠園
さらに特筆すべきは、玉翠園ならではの丁寧な“売り方”。お客ひとりひとりの好みを聞きながら、その人に合ったお茶を選定するのです。さらに希望の方はその場で試飲することも。

「お茶は嗜好品なので、味・色・香りなどの好みは千差万別。それを汲み取ったうえでマッチングさせるのが、わたしたちの役目だと思っています。」(玉木専務)

量販は考えておらず、この規模・スタイルを守りながら永く続けていきたい。そう話してくれました。
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