元フレンチシェフが作る和食。日本のおいしさを味わう雑司が谷の癒しの隠れ家「元喜」

和食のお店は敷居が高くて入りづらい…と感じる人も多いのではないでしょうか。今回は、気軽に立ち寄れる和食の名店、雑司が谷にある「元喜」をご紹介します。元フレンチシェフが作り出す和食は、心身をほっこりさせてくれますよ。

2020年3月13日 更新
この記事は、豊かなフードライフを演出するWEBメディア「dressing」の提供でお送りします。

これぞ隠れ家! 気軽に立ち寄れる“和食の名店”が雑司が谷に誕生

にぎやかな池袋エリアのすぐそばにありながら、どこかノスタルジックでゆったりとした空気が流れる雑司が谷。そんな街の雰囲気にすっかり溶け込んでいる和食店が『元喜(げんき)』だ。 フレンチ出身の料理人が作るセンス抜群の和食が気軽に楽しめるとあって、毎晩リピートする人々で賑わっている。

作りたいのは、「日本人に生まれて良かった」と思える料理

東京メトロ副都心線「雑司が谷」駅に程近い、交差点に面したビルの2階に『元喜』はある。
ドアを開けると迎えてくれるのは、ほっこり笑顔に心が和む、料理長の岡部藤夫さん(写真上)。 岡部さんのキャリアは、和食料理人としては異色だ。初めはフランス料理に憧れ、麹町や赤坂、銀座などのフレンチの名店で修業を積んだ。正統派のフランス料理を学ぶ中、ほかの料理も学んでみたいという気持ちが生まれてきたという。 「フランス料理は年に1~2回、ハレの日に食べることが多いですよね。もっと身近に感じられる、“月”に1~2回楽しめるような料理を作りたいと考えるようになったんです。そこで和食を学んでみようと思いました」(岡部さん)
思い立ったが吉日。フランス料理店で働きながらも、夜は和食店でバイトするなどして、27歳の頃から本格的に和食の道を歩むようになる。その後、和食でも実力が認められ、人気和食店『なるたけ』などで、料理長を歴任。そして2019年1月、『元喜』で独立オープンした。

素材そのものの味を際立たせる絶妙なだし使い

「味にとんがりがない料理を作りたいと思っています。インパクトがパンとくる料理じゃなくて、ほっこりする“まあるい”味の料理を作りたいですね」とニコニコ語る岡部さん。そんな“まあるい”味わいの料理をさっそく紹介しよう。
正統派の和食メニューがズラリと並ぶ中、フランス料理のエスプリがキラリと光るのが、「ずわい蟹とカリフラワーのムース」(写真上)。 フレンチ出身の岡部さんならではのオリジナルメニューだ。
牛乳でやわらかく煮たカリフラワーを生クリームと合わせてムースにしたものに、ほぐしたズワイガニと、淡口(うすくち)醤油で味付けしたかつおだしのジュレをトッピング。料理全体の一体感を出すために、ムースやズワイガニにも隠し味的に淡口醤油を忍ばせている。
ふんわりとろける真っ白いムースは、口に含むと生クリームが控えめで、カリフラワーのほっくりした甘みが優しい。ムースだけ食べるとまるでフランス料理だが、かつおだしのジュレを合わせると、だしのうまみが素材の甘さをより引き立てる和食へと変身する。 「たくさんの素材を複雑に組み合わせた料理は作らないようにしています。1つの料理に使うのは、せいぜい2~3種類ぐらい。素材一つひとつの味わいをしっかり感じてもらえればと思います」(岡部さん)

看板メニューは、料理人から絶大な支持を得る『サスエ前田魚店』直送の魚料理

『元喜』を訪れた人が必ず頼むメニューがある。カリスマと言われる魚職人・前田尚毅さんが『元喜』のために送ってくれる鮮魚を使ったメニューだ。 前田さんは、静岡県・焼津にある鮮魚店『サスエ前田魚店』のオーナー。その卓越した目利きと、鮮度を保つための技術で、国内外の料理人たちから絶大な信頼を得ている。 前田さんとは、お店オープン時からの付き合い。岡部さんが良い魚を仕入れたくて、直々に焼津まで訪ねたことが始まりだった。 「前田さんは、こちらが名前を知らないような魚も含めて、店に合わせて状態のいいものだけを厳選して送ってくれるんです」(岡部さん)
▲写真は刺身盛り合わせ5点。このほか、単品や3点盛り合わせなどがある 産地で獲れたばかりの魚と比べても遜色がないという刺身は新鮮そのもの。神経〆したあとに余分な水分を取り除き、徹底した温度管理下で店まで運ばれてくるため、臭みが全くなく、魚本来の歯ごたえやうまみを堪能できる。

まろやかなコク! 熱々でやわらかな角煮は、京桜味噌で上品に

ジュウジュウという音を立てて運ばれてきたのは、「黒豚の角煮 京桜味噌煮込み」(写真上)。 8時間かけてやわらかくし、味を煮含めたという豚肉は、箸を入れた端からホロホロと身が崩れていく。 京桜味噌は、赤味噌ながら京風らしい上品な味が特徴。コクのある濃い煮汁は、味噌や醤油の風味がしっかりありながら、あと味がくどくない。角のない味わいが岡部さんの真骨頂だ。
添えられているのは、加賀野菜の源助だいこん(げんすけだいこん)。肉質がやわらかいが、煮崩れしにくく、箸がスッと通るほどに染み染み。 この大根をふろふき大根の要領でかつおと昆布の合わせだしで煮た後に、角煮の煮汁と絡ませる。味の染みた大根は、濃厚な煮汁をまといつつも、後からだしがフワッと香ってくる。 卵は、割ると黄身がトロ~リと流れるほどの半熟卵。こっくりした煮汁と共に白ご飯を合わせれば、箸がどんどん進んでしまう。

絶品土鍋ご飯で、日本のおいしさをしみじみ味わう

“日本のおいしさ”がテーマの同店では、炊きたてのご飯はオープン当初からおすすめのメニューのひとつ。「白飯」も「炊き込みご飯」(写真上)も全て、注文を受けてから土鍋で炊いている。
白飯には、月替わりで2種類の米が用意されている。取材当日は、ふっくらとした食感と甘みが強い北海道産「ふっくりんこ」と、優れたつやがあり、香りとうまさ、粘りのバランスが良い山形県産「つや姫」。2種類を頼んで、食べ比べを楽しむお客も多いそう。 炊きたてのご飯は、蓋を開けたときに立ちのぼる香りもごちそう。しみじみ日本の恵みに感謝したくなる。
炊き込みご飯に使われているのは、しっかりとした粒感のある秋田県産「あきたこまち」。具材は、その時々の旬のもの。この日は、「カキと菜の花の炊き込みご飯」だ。 カキは、一回霜降りにした後、昆布だしと酒、淡口醤油、塩で味を煮含めている。この煮汁にかつおだしを合わせただしで、米を炊き上げる。 ふっくらとしたカキがたっぷり入り、だしの香りが漂うご飯は、ほんのりとカキのうまみが染みていて絶品。米粒一つひとつが立ち、米の甘みもしっかり感じられる。お腹いっぱいでも箸が止まらなくなるおいしさだ。
店内には、ギャラリーのように色とりどりのご飯茶碗が棚に飾られている。この中から好きな茶碗を選べるのも楽しい趣向だ。
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