ライター : muccinpurin

製菓衛生師 / 料理家

和菓子から「WAGASHI」へ

日本で古くから親しまれている和菓子。羊羹やどら焼きなど、洋菓子とは違ったほっとする甘さは、私たちを癒してくれる大切な存在です。 そんな和菓子が今世界中で注目され、「WAGASHI」として世界共通語になりつつあります。 訪日外国人が日本の味として楽しんだり、お土産の定番としても愛される「WAGASHI」。日本の老舗和菓子店が海外進出したのをきっかけに、今後ますます認知度がアップしていくことが予想されます。

人気の秘密は

世界で和菓子が認められつつある、その理由はいったいどんなものがあるのでしょうか。

卓越した職人技

和菓子のなかでも「上生菓子」と呼ばれるのが、練り切りなどを使った細工もの。四季の移ろいを表現する、色鮮やかで職人の技が光る和菓子です。 上生菓子は「三角ベラ」という木で作った道具と、専用のハサミだけで仕上げます。三辺で異なる模様を付けることができるこのヘラは、いわば職人の右腕。
このヘラを上下にゆっくりと揺らしながら練り切りに押し当て、強弱をつけたラインで花びらなどを表現します。 これは菊の細かい花びらを表現している様子。絶妙な力加減が必要です。 色合いの濃い練り切りを薄い練り切りで包み、へらを入れることで立体感のある花びらを表現します。

四季の移ろいを表現する芸術性

春は桜、夏はあゆといったように、季節の情景を落とし込むのが和菓子。季節ごとにその時期の上生菓子が作られ、和菓子屋の店内を彩ります。 絶妙なぼかしや細かな細工は、まさに目の前にその情景が広がっているように忠実に再現しています。 その時期の和菓子を食べ、季節の訪れや移り変わりを感じることが、古くから日本人の楽しみでもありました。四季がある日本だからこその、素晴らしい習慣ですね。
秋の花、菊をモチーフにした上生菓子。 「はさみ菊」と言って、練り切りを専用のはさみで切りながら、一枚一枚花びらを立たせていきます。 仕上がった菊は、本物のようにリアルで上品な佇まい。同じリズムを保ちながらも、舌に行くにつれて微妙に花びらの大きさを変えていく、長い修行によって体得される非常に高度な職人技です。

シンプルで地味深いおいしさ

素晴らしい技術や美しい見た目もさることながら、その素朴ながら奥深い味わいは、食べた誰もをほっとさせる不思議な力を秘めています。 餡ひとつとっても、丁寧にゆでて渋抜きされ、砂糖で煮るという手のかかった作業が、素材のおいしさを最大限引き出しているのです。

日本にも逆輸入。見直される和菓子

和菓子がブランディングされ、手土産として人気を高めてきていることに加え、海外でブームになった「WAGASHI」が日本に逆輸入されるケースも見られます。 私たちが気付かない和菓子の魅力を、海外の客観的で柔軟な観点で発見し、日本でも新たな魅力を再発見する形になっています。
最近ではSNSで手作り和菓子の投稿も増え、「#WAGASHI」で、世界中にシェアが広がっています。 和菓子のよさは、身近な材料でどこの家庭にもある道具で作れること。これが、手づくり和菓子が広がった最大の理由ではないでしょうか。 たい焼きやどら焼きの餡に変化を浸けたり、大福に季節のいちごを包んだりと、アレンジしやすいのも魅力ですね。

"WAGASHI"の魅力を再発見

日本で生まれて、世界に広がり認められた「WAGASHI」。 2020年に開催される東京オリンピックを軸に、世界中から日本に注目が集まっています。 和菓子とは別な存在になったのではなく、さまざまな国の人に評価されてますます海外に羽ばたいていくことでしょう。
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