アメリカで実施されている低所得者に向け食料支援サービス「フードスタンプ」をご存知ですか?
「フードスタンプ」とは、食品購入時に銀行カードのように使用する電子カードとして給付される金券の一種で、国内のほとんどの食料品店で使うことができます。
去る9月20日、「IRIB」が報じたところによると、アメリカ国勢調査局の最新の報告から、アメリカでは依然として貧困が続いており、4700万人もの国民がフードスタンプを必要としていることが明らかになったといいます。
私たち日本人にはなじみの薄いシステムですが、実はこのフードスタンプがアメリカでは大きな社会問題化となっているらしいのです。
そもそも「フードスタンプ」って何?
無料の食料クーポンであるフードスタンプは、受給条件も当然のことながら規定されており、大体4人家族で月収入2,500ドルを下回ると対象者となることが多いと言われています。
また、実際スタンプを押されたり、紙のクーポンで支給されるワケではなく…
フードスタンプは近年、磁気テープが装着されたプラスチックカード化して、買い物やATMからの補助金の引き出しに使用できるようになってきており、これは「EBTカード」または単に「EBT」という呼び名が広くアメリカ国内で使われている。EBTとは「Electronic Benefit Transfer」の略である。
出典: ja.wikipedia.org
こういった運営システムが確立されています。
続いては、フードスタンプが誕生した背景についてみていきましょう。
「フードスタンプ」誕生の背景
「補助的栄養支援プログラム」と現在では呼ばれている「フードスタンプ」は、時のアメリカ合衆国大統領リンドン・ジョンソン氏が、1964年に施行した、貧困対策の一環です。
当初はあまり注目される政策ではありませんでしたが、90年台以降は政争の道具として取り上げられることが増加。その後は、選挙のたびに受給者が激増してきたという背景があります。
その後、受給者の拡大とともに、政府支出の圧迫を懸念する人々から制度自体の見直しを訴える声も激しくなります。しかし、不況による労働環境の悪化を受け、受給者の増加は確実視されていました。
そして遂に、現在の受給者数は4700万人に到達。現大統領バラク・オバマも、制度の拡大を提唱している人物ですが、2013年に発生したある事件で制度の存続自体が危ぶまれたのです。さらには、フードスタンプを悪用した詐欺も横行しているというのです。
「政府閉鎖」と「不正受給の横行」
2013年9月、オバマ大統領が提出した医療保険改革法を巡った野党・共和党との対立のなかで、翌10月1日から一部政府機関の閉鎖が実行。
この影響で国内におけるデビットカードの使用が不可能になり、大混乱が発生。一部の店では暴動が発生したようです。
人々は、ウォルマートの店内をめちゃくちゃにしました。棚に並んだ商品を根こそぎ強奪されたウォルマートもあります。私の友人もウォルマートが破壊されることなど考えてもみませんでした。彼の家の近くのウォルマートは、建物に火がつけられ、駐車場に置かれていた車まで焼き尽くされてしまったのです。
出典: s.webry.info
政府機関の再開により事態はすぐ収束したようですが、また同じことが起きることがあれば、アメリカ全土で貧困層の暴動が起きないとも限りません。
さらに、日本の生活保護問題でも見受けられるように、スタンプの不正受給も問題になっている様子。
以前に海外で話題になりましたが、フードスタンプを受給していながらポルシェに乗っていたという女性がいたという。
フードスタンプも受給しながら高級車を乗り回している…それは明らかに本末転倒なのではないかという声は沢山出ているようです。一連の流れをみると、日本の生活保護不正受給問題と根は同じなのかもしれません。
こうした問題を受け、保守派からはフードスタンプの削減を求める意見も噴出しているようですが、気をつけるべきは、 雇用を拡大させる努力を怠らないこと。支出だけを削減しても、さらなる雇用格差を生み出すだけなのです。
1960年代にジョンソン大統領が「貧困との戦い」を掲げてから50周年を迎える今年。
フードスタンプをめぐる批判が噴出するなか、アメリカ政府はどういった貧困対策を講じていくのか世界からの注目が集まっています。
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