ライター : macaroni 編集部

石井食品が「おいしいとは何か?」を探る旅へ出発

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2025年、イシイのミートボールでお馴染みの石井食品株式会社の3代目社長、石井智康さんがキャンピングカーで各地の生産者さんを巡る旅が始まりました。目的は、本当においしいものとは何か?を探す旅。インタビューを通して、現代の日本の食が抱える課題に向き合い、答えを探ります。

飽食の時代にありながら、貧食や孤食、フードロス、環境破壊など問題は山積み。生産者も後継者不足や不利益連鎖に苦しんでいます。石井さんが各地の生産者を訪ね、食品メーカーとして何ができるかを模索し、これからの食のあり方を考えます。

本記事では、2月26日にmacaroni編集部が同行した千葉県いすみ市の生産者を巡る旅をご紹介します。

オーガニックのつながりの発起人。ブラウンズフィールドの中島デコさん

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最初に訪れたのは、ブラウンズフィールドの代表取締役である中島デコさん。千葉県のいすみ市で無農薬の野菜やお米を育てながら、カフェや宿泊施設などを運営しています。全国各地、ときには海外からも多くの人が訪れるほどの人気施設となっています。

ブラウンズフィールドに足を踏み入れると、材木で建てられた手作り風の古民家やカフェ、宿泊施設のほか、畑やヤギなどの動物たちが迎えてくれます。そこには、日本の原風景とも言える、のどかで穏やかな景色が広がっていました。

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対談中の中島デコさん(左)と石井さん(右)
デコさんは、東京生まれ・東京育ち。そこから千葉県いすみ市へ移住しました。デコさんのこれまでの軌跡を聞かせていただきました。

東京で子育てをしていたデコさん。転機となったのは佐渡への家族旅行でした。友人宅で畑で採れた野菜を使って料理をしたことがきっかけで、食材本来のおいしさを実感したそうです。

デコさん:「東京では、どこで作られたかわからない野菜を買うけれど、種から育てれば、お金をかけなくてもおいしいものが食べられる。」
そんな豊かな暮らしに気づき、たまたま訪れたいすみ市を気に入ったことで、家族とともに移住を決意しました。

いすみ市では、オーガニックに関心を持つ人々との交流が広がり、周辺の野草を採って天ぷらにしたり、大豆からしょうゆや味噌を仕込んだり、無農薬の米作りに挑戦したりと、さまざまなことにチャレンジ。自然と共生する暮らしを楽しみながら、ブラウンズフィールドのカフェや宿泊施設の運営を始めました。

また、収穫祭など、季節のイベントを開催することで、同じ志を持つ人々とのつながりも広がり、今ではとても居心地の良い場所になったそうです。

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マクロビオティック料理家の中島デコさん
デコさん:「『身土不二』という考えのもと、地元の食材はもちろん、季節のものを積極的に取り入れ、なるべく皮を剥かずに丸ごといただく(一物全体)。一物全体で食べるならオーガニックのものを選ぶことが体にとって一番良いんです。」

地元の野菜を無駄なく使い、手作りの調味料でその味を引き立てる。そんな料理は、素朴だけれど、体にとって最高のご馳走になります。

最後に、石井さんが「本当においしいものとは何ですか?」との問いに、デコさんは「玄米と季節の野菜の味噌汁」と答え、食と丁寧に向き合うことの大切さを教えてくださいました。

自然栽培のお米作りを一代で確立。つるかめ農園の鶴渕さん

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石井さん(左)とつるかめ農園の鶴渕さん(右)
続いて、自然栽培のお米にこだわる「つるかめ農園」の鶴渕真一さんにお話しを伺いました。鶴渕さんは家業を継いだわけではなく、ゼロから農業をスタートされました。

鶴渕さん:「やるからには、農薬や肥料に頼らない米作りがしたい。」と一念発起。土と水、そして人間の知恵を活かして自然の力で作物を育てる方法を追求しています。

昨今、肥料の価格高騰により多くの農家が悩まされていますが、肥料を使わないことで、そのような外部要因の影響を受けにくいのもメリットのひとつだといいます。

ただし、慣行栽培(農薬や化学肥料を使用する従来型の栽培方法)には安定した収量を確保しやすく、仕組み化されているという利点もあるため、自然栽培はあくまで選択肢のひとつと捉えています。「食べる人が自由に選べる、ひとつの選択肢を作れたら嬉しい」とのこと。

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つるかめ農園で栽培しているお米の品種
鶴渕さんは非常に勉強熱心で、一度やり始めると止まらない一途な性格の持ち主。自然栽培に関する書籍を執筆した著者に直接会いに行き、話を聞きながら学んでいったそう。そんな鶴渕さんが目指すのは、自然と人間が共存し、互いに恩恵を受け合う持続可能な未来です。

本当においしいものとは何か?の問いに、
「食べたときにどう感じてもらえるか」。体が元気になると実感したり、どこで誰と食べるかによってもおいしさは変わる。生産者として、身体にも心にもおいしい食を届けていきたい。」と語ってくださいました。

お金をかけなくても豊かな暮らしはできる。畦風の佐川さん

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畦風の佐川さん(左)と石井さん(右)
次にお話を伺ったのは、耕師(たがやしし)という肩書を持つ畦風(あぜかぜ)代表取締役の佐川達也さん。無肥料・無農薬で畑や田んぼを耕しながら、そのノウハウを教えるセミナー講師も務めています。

佐川さん:「なるべく物を買わずに、すでにあるものを活用しながら、循環型農業を実践しています。肥料を使わず、お米を栽培すれば米糠ができ、それを使ってぬか漬けが作れる。こうして、捨てるものがなく循環する暮らしを大切にしています。」

もともとは約20年間サラリーマンとして働いていましたが、その後、農家に転身。「お金をかけなくても、豊かな暮らしはできる」と語ります。

現在は、農業の知識を伝えることを重視し、農法が変わっても応用がきくよう、野菜や微生物が育つ仕組みから教えているとのこと。「自給力を高め、自分たちで育てたものを食べ、そこから新たなコミュニティが広がっていくことを目指したい。」

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丸い畝
ちょうどインタビューをしていた場所には、丸い畝(うね)が広がっていました。通常、畝は効率よく収穫できるよう真っ直ぐに作られますが、丸くすることで風がスムーズに抜け、一気に分散するため、野菜の生育に適しているのだそう。さらにサークル型にすることで人が自然と集まりやすくなるという利点もあるとのこと。

こうした工夫を通して、農業の楽しさや、人と協力することのやりがい、そして機械に頼らずともおいしい作物を作る、といった姿が垣間見えました。

本当においしいものとは何か?佐川さんの答えはこうでした。
「作り手の想いや、その姿が見えること。どれだけ手をかけ、どんな気持ちで作られているのか
——その背景を知ることで、食べるものはより一層おいしく感じられる。」

日本でも例を見ない!いすみ市の学校給食へ有機栽培米を100%導入

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いすみ市役所の鮫田さん(左)、石井さん(中央)、みねやの里の矢澤さん(右)
最後に、いすみ市のオーガニック給食について、いすみ市役所農林課の班長・鮫田晋さんと、農事組合法人みねやの里 代表理事・矢澤喜久雄さんにお話を伺いました。

鮫田さん:「試験栽培で採れた有機栽培のお米を今後どう活用していくか、生産者の方々と話し合いを重ねた結果、『地元の給食に取り入れ、子どもたちに貢献するのが良いのではないか』という結論に至りました。こうして、給食での有機栽培米の提供がスタートしたんです。」

もともと減農薬を基本としていたため、有機栽培に挑戦すること自体には大きな抵抗はなかったそうですが、手間と時間がかかるのが現実。稲刈りが終わった直後から、雑草が生えないように細やかな手入れを続けているといいます。

矢澤さん:「雑草の元になる種を取り除き、水もちがよく、それでいて水はけの良い土を作ることが大事。除草剤を減らすのと、まったく使わないのとでは、労力がまるで違うんです。」

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稲刈り後、手入れされた田んぼ
現在、年間の収穫量110トンのうち、約1/3をいすみ市の学校給食センターに卸しているそうです。これにより、作る人と食べる人の接点が近づき、地域の活性化にも繋がれば嬉しいとお話しされました。

実際に給食へ導入されたことで、子どもたちが地元の有機農業に興味を持ち、食と農の関係について学ぶ貴重な機会にもなっています。 現在は、有機野菜の供給拡大にも力を入れているそうです。

本当においしいものとは何か?
鮫田さんと矢澤さんは、「ストーリーがあり、地域の伝統や文化を感じられるもの。食材との深い接点を持つことで、心で感じるおいしさが生まれるのだと思います。」と答えていました。

石井食品が考える、地域と共生しながら作る本当においしい食の未来

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インタビューを終えて石井さんは、「お金で買うだけでなく、地域にある資源をどう活かすか——そこに循環型社会のヒントがある。」と話されました。あるものを最大限に活用し、無駄にしないこと。また、その先のことを考える姿勢が大切だと考え、サプライチェーンの中でその考えを体現していきたいとのことです。

また、慣行農業と対立構造を描きたいわけではなく、元々生産者が取り組んでいることに対して、地域にとって心地よい関係を築きながら貢献していく姿勢が重要だと強調。

「自社にとってもオーガニック商品を作ることで、また違ったおいしさを生み出すことができます。さらに、オーガニックという時代の流れに乗り、今後商品を増やしていきたい。」とお話しされました。

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石井食品は、1997年から無添加の食品作りに取り組んでいます。添加物を使わないことで、素材本来の味がダイレクトに伝わるため、食材としっかり向き合い、よりおいしい食材を追求し続けています。

昨年秋に発売した無添加のレトルトカレーは、地元の旬の野菜を使い、スパイスも新たに調達して開発に1年近くを要しました。本記事に登場した中島デコさん監修のレトルトカレーです。地域の人々と協力して作り上げた、野菜本来の味が生きた、ここでしか味わえない無添加のおいしさを、ぜひ一度お試しください。

ITEM

お野菜ごろごろまかないカレー 石井食品

¥1,180〜

ブラウンズフィールドの中島デコさんがレシピを監修した無添加レトルトカレー

※2025年3月17日時点 価格は表示された日付のものであり、変更される場合があります。本商品の購入においては、Amazon.co.jpおよびrakuten.co.jpおよびshopping.yahoo.co.jpで正確かつ最新の情報をご確認ください。
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