ライター : ババタクト

大学生ライター

神奈川県在住の大学生ライターです。趣味はカフェ巡りとバー巡り。数年前からミニマリストとしても活動しており、服のバリエーションが一種類しかありません。

渋谷に佇む、カフェ好きのオアシス「茶亭 羽富(さてい はとう)」

Photo by ババタクト

夏も終わり、徐々に気温が下がってくる9月下旬。私はここ、渋谷にいた。

煩い場所と人の多い場所が嫌いな私にとって、渋谷は好んで来る場所ではない。

しかし、今日に限っては自らの意思で来ている。その理由は、以前から行きたかった喫茶店に行くためだ。

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茶亭 羽富(さてい はとう)。
その名前を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。

ここ茶亭 羽富は、東京でも有数の人気喫茶店のひとつであり、日によってはオープン前からお客さんが並んでいることもあるのだという。

多くの人々を魅了する喫茶店、茶亭 羽富。一体どんなお店なのだろうか。

和と洋と植物が共存した空間

Photo by ババタクト

外とは打って変わってクラシックのBGMだけが反響して響き渡る店内。木を基調とした作りで、オレンジ色に光る間接照明が店内全体を明るく照らす。

この落ち着いた雰囲気は、まさに“都会のオアシス”という言葉が良く似合う。

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そして、入店後すぐに気づくのは、インテリアの独創性だ。

「BLUE BOTTLE COFFEE(ブルーボトルコーヒー)」や「猿田彦珈琲」など、近年のカフェはシンプルで、統一感から来る引き算のおしゃれが魅力的だが、ここは違う。

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その秘密は、絶妙な“和洋折衷”。

一見雑然としているようにも見えるのだが、家具それぞれの配置や店内全体が醸し出す雰囲気が、私の気持ちを落ち着かせてくれている。

なかでも、ウッドのガラスキャビネットの横に飾られる有田の大皿にはとても惹かれるものがあり、ついつい見惚れてしまう。

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お店の顔であるカウンターに目を向けると、これでもかというほどのカップとソーサーが並ぶ。よく見るとひとつひとつデザインや形が違い、どれも魅力的だ。

「ご注文はお決まりですか?」

内装に見惚れるがあまり、注文をすることを忘れていた。

定番のブレンドにかけられた手間隙

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紅茶やソフトドリンクなどのメニューもあるが、やはり珈琲に力を入れているな、ということがひと目で分かるメニュー。

「炭火焙煎珈琲」だけでも数種類、そのほか「カフェ・ショコラ」や「オ・レ・グラッセ」など、興味をそそるメニューが私を惑わせる。

しかし、初めは定番のものを頼むのが一番だと思い、「羽富オリジナルブレンド」を注文した。

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スタッフの寺島さんが、一杯一杯真心を込めて淹れてくれる。その過程を目の前で見られるのは、茶亭 羽富の魅力のひとつだ。

しかし、人気のお店であるにも関わらず、珈琲を一杯一杯手作業で淹れるのはとても大変ではないのだろうか。ドリップ中の寺島さんに伺ってみることにした。

「うち(茶亭 羽富)のコンセプトは“手間隙をかけること”なんですよ。現在はさまざまなコンセプトのコーヒーチェーン店さんがありますけど、手間をかけるというのはなかなかできないんです。

だからこそ、うちはお客さんひとりひとりに向き合って、手間隙をかけるんです。」

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そんな手間隙をかけることをコンセプトにした茶亭 羽富は、カップにもこだわりを持っている。ヴィンテージや有名ブランドなど、さまざまな種類でそろえたカップは600以上にも及んでおり、なんとお客さんの雰囲気にあったカップを選ぶのだそうだ。

一体なぜそんなことをするのだろう。その答えは、予想以上にシンプルなものだった。

「単純に楽しいからですかね。また、何回来て何回同じものを注文しても、その都度新鮮な気持ちであってほしいからです。なので、お客様にも楽しんでいただければと思いながらやっています。」(寺島さん)

そんな純粋な気持ちから初めたこのシステムは、多くのお客さんに支持されており、茶亭 羽富でしか味わえない楽しみと言えるだろう。

おいしい味は、あとを引く味

Photo by ババタクト

「お待たせしました、羽富オリジナルブレンドです」

そうこうしているうちに、注文していた珈琲ができたようだ。この黒く透き通った見た目、これぞ珈琲と言える。

そして、私のカップに描かれた月とすすき。「これから十二夜だから」だそうだ。

しかしこのカップはイギリス製のアンティークであるため、描かれているのはすすきではなく麦なのだそう。

今まで珈琲を飲む際に、カップのデザインについて考えたこともなかったが、知ってみると考え深いものがある。自然と愛着が湧いてきてしまいそうだ。

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シンプルかつ繊細な味だ。酸味と苦味が合わさった豊かな風味が口いっぱいに広がり、飲み終わったあとも余韻がある。しかし、珈琲特有の渋みなどは一切なく、あと味自体はとてもさっぱりしている。

「おいしいと思える味というのは、あとを引く味だと思うんです。」

そう言った寺島さんの表情は、少しばかり笑顔になっているように見えた。

デザートは、珈琲のおいしさを引き立たせる

Photo by ババタクト

先程のメニューの裏には、自家製ケーキを中心にスイーツメニューもずらりと。

珈琲に魅せられていた私は、迷わず注文していた。

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素敵なお皿にのせられてきたこのケーキは、茶亭 羽富の一番人気である「シフォンケーキ(メープル)」だ。思っていたよりも大きく、ボリューミーという言葉がふさわしい。

「このシフォンケーキにも、うちならではのこだわりがあるんです」

寺島さんが私に言ったこの言葉は、一体どういう意味なのだろうか。まったく分からぬままひと口入れた瞬間、その意味がすぐに理解できた。

ボリューミーな見た目とは裏腹に、とてもシンプルでやさしい味なのだ。言うならば、“珈琲のおいしさを引き立たせる味わい”。

今まで、ケーキを食べてこう思ったことはなかった。

“デザートのための珈琲ではなく、珈琲のためのデザート”。これこそが、茶亭 羽富の珈琲に対する思いを一番表現しているポイントと言っても良いだろう。

そして、この組み合わせは恐ろしい。いつの間にかカップを持つ手とフォークを動かす手が止まらなくなっていた……。

口に残った幸せの味に浸りながら

Photo by ババタクト

気づけば入店から1時間以上経っているではないか。お世話になった寺島さんにしっかりとお礼を済ませ、足早に外へ出る。

「夢の時間はもう終わり」と言わんばかりに、車や人々の騒音が私を現実に引き戻した。

しかし、口の中だけは珈琲とシフォンケーキの余韻がしっかりと漂っている。これがあとを引く味の魔力か……。

それに惹かれ続けながら、私は駅に向かって歩き始めたのだった。
▼紹介メニュー
羽富 オリジナルブレンド  850円(税込)
シフォンケーキ(メープル)  500円(税込)
店舗情報
取材・構成・文・写真:ババタクト
※本記事は個人の感想に基づいたものです。味の感じ方には個人差がありますのでご了承ください。

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