ライター : dressing

この記事は、豊かなフードライフを演出するWEBメディア「dressing」の提供でお送りします。

パリ発の人気ブーランジェリー出身シェフが作った街の小さなベーカリー

東急電鉄・新丸子駅のすぐ近く、下町の面影を残す商店街にオープンした小さなベーカリーは、誕生して早々に街を賑わせた。初日から行列ができ、看板商品のクロワッサンはあっという間に完売。 その店の名は『パンと焼き菓子のPapapapa-n !(ぱぱぱぱーん)』。誰もが口にしたくなるような名前のベーカリーは、実力派シェフが作る絶品パンで人々を魅了している。
ユニークな店名はオーナーシェフである神戸友輔(かんべ ゆうすけ)さん(写真下)のアイデア。 「思わず口にしたくなるような、あの店は面白そうじゃない?と思ってもらえる店名にしようと思いました。お客様に身近に思ってもらえる店が作りたかったんです」
元々パティシエとしてキャリアを積んでいた神戸さんは、パリに15店ほどを構える人気ブーランジェリー・パティスリー『メゾン・ランドゥメンヌ』の日本初店舗にスーパティシエ(副チーフ)として入店。 ところが、クロワッサンがあまりの人気のため、製造が追いつかず、「トリエ」と呼ばれるクロワッサン専門職人が新たに設置されることとなり、神戸さんがチーフに就くことになった。
それから3年半、東京で最もおいしいクロワッサンのひとつと評される『メゾン・ランドゥメンヌ』のクロワッサンを作り続けた。 「多い日では1日2,000個のクロワッサンを仕込んでいたこともありました。日本のパン職人の中では、クロワッサンをたくさん作っていた方だと思います」(神戸さん) そして、2018年10月、以前から温めていた“地域の人たちに毎日来てもらえるような”店を実現すべく、独立をしたのだった。

外側がパッリパリ、中がモチッと甘い極上クロワッサンの秘密とは

大人が4、5人も入ればぎゅうぎゅうな店内の中央には、特注したという大きなL字型3段のショーケースが置かれている。 ケースの中にぎっしりと並べられたパンは、なんと30種類近く! 一番人気は、もちろんクロワッサンだ。
クロワッサンは、プレーンの「クロワッサン」と「全粒粉のクロワッサン」、チーズがトッピングされた「クロワッサンフロマージュ」の3種類をラインナップ。粉やトッピングを変えることで、食べ比べて楽しんでもらおうという趣向だ。 3種類合わせて、平日で200個、週末には260個のクロワッサンを焼くが、いつも昼の12時頃には売り切れてしまうという人気ぶりだ。
プレーンの「クロワッサン」(写真上)は、手作業できっちりと折り重ねられた層が、見た目にもくっきりとわかるほどフォルムが美しい。 フランス産発酵バターをたっぷり使ったクロワッサンは、口にするとホロっと層が崩れ、鼻腔をくすぐる芳醇なバターの香りがたまらない。中身はじんわりとしたバターのコクを感じさせながらも、軽やかでしっとりしている。サクサクの表皮とふんわりした中身とのバランスが絶妙だ。
同店のクロワッサンで一番特徴的なのは、湯種(小麦粉を熱湯で捏ねたもの)を使っているところだろう。 湯種には甘みの強い北海道産小麦「キタノカオリ」を使用。クロワッサン生地に湯種を少し混ぜることで、小麦粉の甘みが増し、もちっとした食感になる。パリパリとした外側とモチっと甘い中身とのコントラストが魅力のクロワッサンだ。 さらに、同店のクロワッサンは190円~と、高い品質を保ちながらも価格を抑える工夫を凝らしている。例えば、フランス産発酵バターは大きな塊で購入し、店舗でカット。小麦粉は、北海道産と品質の安定しているフランス産の小麦粉をブレンドして使用している。焼きたての本格的なクロワッサンを、よりたくさんの人に気軽に楽しんでもらいたいという考えがあるからだ。
「全粒粉のクロワッサン」(写真上)はプレーンタイプと小麦粉の種類を変え、全粒粉を使って小麦の甘みがより強く感じられるようにしている。 「同じバターを使用していても、粉の違いで味わいが変わることを楽しんでもらいたいですね」(神戸さん) 「全粒粉のクロワッサン」は水分を少し多めにしているため、中はプレーンよりしっとりしている。噛みしめると、じんわり小麦の甘さが口の中に広がり、バターのリッチな風合いに負けていない。
「クロワッサン・フロマージュ」(写真上)は、少し苦みのあるゴーダチーズをトッピングして焼いたもの。 「(基本)クロワッサンは甘いので、もう少し食事に向いているものとして作りました。サンドイッチにするのもおすすめです」(神戸さん) カリカリした香ばしい食感とたっぷり使ったチーズの風味がくせになるおいしさだ。

クロワッサンの生地を使った珍しいパンも

クロワッサンのパリパリした外側だけを食べてみたいと思ったことはないだろうか?
こちらは「ねじねじ」(写真上)というかわいい名前のパン。クロワッサン生地を発酵させず、ねじって表面積を多くし、少し強めに焼き上げた、バターの風味が豊かでザクザクした食感が楽しいパン。 折り込まれているのは、自家製カスタードクリームとたっぷりのチョコチップ。1日で作れる量も限られているため、クロワッサンより早くに売り切れてしまうという隠れた人気商品だ。

クロワッサンだけじゃない! パティシエ出身シェフの技量が光る定番パンや焼き菓子の数々

パティシエ時代に都内の高級レストランで製パンや料理なども学んだ神戸さん。クロワッサン以外にも、その技術を生かした個性が光るパンがズラリと揃っている。
日本の定番パンであるあんパンとクリームパンにも同店ならではの工夫がある。 「あんぱん」(写真上)に使われているのは、地元・新丸子で人気の和菓子店『菓心 桔梗屋(かしん ききょうや)』のとろりとしたあんこ。あんこがあまりにも柔らかいために、一度冷凍してから包んでいる。 生地は、食パン「パン・ド・ミ」にも使われている湯種にたっぷりのゴマを混ぜたもの。ずっしりと重めで、モチモチした生地は、とろっとした舌触りのあんこと相性抜群だ。
「くりーむパン」(写真上)は、パティシエをしていた神戸さん手作りのカスタードクリームを、「あんぱん」と同じモチモチの湯種生地で包んでいる。 カスタードクリームは卵黄のみを使い、バニラビーンズをたっぷり入れて作られている。リッチな香りとコクを出すためにバターもプラス。ミルキーなクリームに仕上がっている。
クロワッサンだけでなく、パティシエの技術を生かした焼き菓子もあるベーカリーをオープンするのが夢だった神戸さん。バニラの甘い香りが広がる「フィナンシェ」、焦がしバターのリッチな風味がたまらない「ガレット・ブルトンヌ」などが用意されている。 ギフト用のボックスも用意されていて、お好みの焼き菓子を詰め合わせてオリジナルのギフトを作ることもできる。

シェフのチャレンジは止まらない! 魅力的なレシピが続々と登場の予感

現在は、毎日大量のクロワッサンを焼くために、お菓子は種類を厳選して用意している。とはいえ、塩キャラメルのソースがかかったプリン「ぷぷぷりん」(写真上)をはじめ、数種類の焼き菓子が並ぶ光景は、思わず目移りしてしまう。 「最初80種類ぐらいレシピを考えていたんですが、まだ55種類ぐらいしかできていない。将来は、ベイクドタイプのタルトやキッシュ、フォンダンショコラといった焼き菓子も作っていきたいなと思っています」と神戸さん。 現在は、スタッフを増やし、品質を維持しながらもっと多くのクロワッサンを作れるように体制を整えている最中。大人気のクロワッサンを超えるような魅力的なお菓子やパンが、まだまだたくさん登場しそうだ。店にはそんな予感があふれている。 【メニュー】 クロワッサン 190円 全粒粉のクロワッサン 230円 クロワッサン・フロマージュ 250円 ねじねじ 230円 あんぱん 190円 くりーむぱん 170円 フィナンシェ(プレーン) 220円 ガレット・ブルトンヌ 180円 ぷぷぷりん 230円 ※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜です

パンと焼き菓子のPapapapa-n!(ぱぱぱぱーん!)

上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。
提供元:
※掲載情報は記事制作時点のもので、現在の情報と異なる場合があります。

編集部のおすすめ