ライター : dressing

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幼少時代のおやつは母親の手作り。小学生の頃には一緒に作ることも楽しみになった

グリム童話に出てくる「お菓子の家」に心ときめいたのは遠い昔。だけど、真っ白なクリームを彩る果実や光沢を帯びたチョコレートを美しく思う気持ちはあの頃となんら変わっていないし、むしろ大人になってからのほうが、その美しさにため息を漏らすことが多くなったと言っても過言ではない。味わいについてもまた然りで、ケーキのやさしい口当たりや豊かに広がる香りに感動すら覚えることもあるほどだ。 2018年10月25日、東京・西荻窪にオープンしたばかりの、『Patisserie.leslines(パティスリーレリアン)』のショーウインドウに並ぶとりどりのケーキはその筆頭。口に運ぶたび幸せを感じさせてくれるものばかりだ。
オーナーのシェフパティシエ・松島啓介さん(写真下)は、『シェ松尾』の製菓事業部でお菓子の基本を学んだ後、フランスで2年間修業。その後、『ドゥ パティスリーカフェ』(現・『リムヴェール パティスリーカフェ』)のオープニングに携わり、『ピエール・エルメ・パリ』を経て、『葉山庵Tokyo』のシェフパティシエを2年間務めたあとは、『ジャン=ポール・エヴァン』で6年間スーシェフとしてチョコレートについて学んだという多彩な経歴の持ち主だ。 
お菓子作りに興味を抱いたのは幼少期のこと。「母親がお店で買ったお菓子を食べさせない主義で、チーズケーキやシフォンケーキなど、素材選びにもこだわって手作りしてくれていたんです」。 その姿を見て育った姉弟は、いつしかお菓子作りが大好きに。小学生時代には母や姉と一緒にキッチンに立ち、家族で焼きたての味を楽しむようになった。

本場の味、店ごとの個性を知る中で確立された自分らしさ

高校を卒業する頃になっても松島シェフのお菓子好きは変わらなかったが、母親からの「大学だけは出ておきなさい」の言葉に従って進学するも、「やっぱりお菓子の道に進みたい」とほどなくして中退。 専門学校に1年間通った後に実践の場で腕を磨くや、「留学するなら吸収力が高い若いうちがいい」との先輩のアドバイスを信じて渡仏することとなる。 現地では、『Pain de Sucre(パン ド シュクル)』や『Le Trianon(ル・トリアノン)』(現在閉店)をはじめとする名店で研鑽(けんさん)を積み、日本とフランスのスイーツの違いについても学んだ。 また、『ピエール・エルメ・パリ』時代にはどっぷり甘党だったが、カカオ含有率の高い商品にも定評のある『ジャン=ポール・エヴァン』でのスーシェフ経験を通して、ビターなものも好きになった。
豊かな経験を積んだからこそ確立された自分の味で、勝負する場として選んだのは西荻窪。スイーツ激戦区として知られる街だが、早くも評判は上々だ。

チョコレートのおいしさを追求したい

同店で一番人気の「トラディッショナル」(写真下)は、チョコレートの味わいを極限まで引き出した、真のチョコ好きのための一品だ。
「生クリームは一切使わず、生地にも粉を使っていません。チョコレートとメレンゲだけのムースにチョコレートのグラサージュをかけています」という松島シェフ。見た目からはずっしりと濃厚な味わいを想像するが、口にすると驚くほど軽やか。口の中でスーッと溶ける新食感には心底驚かされる。 さらに今後は、ガトーショコラやテリーヌショコラを展開するという構想もあるという。『ジャン=ポール・エヴァン』での経験を武器に、ショコラで勝負をかけていきたいのだ。
そのため、ケーキや焼き菓子だけでなくタブレットチョコレートも充実。 柑橘類やバナナの奥深いアロマ、コクのあるミルク風味を堪能できる「タブレット レ」、自家製プラリネペーストが入ったミルクチョコレート「タブレット プラリネ レ」、フランボワーズのような香りと強い酸味が特徴的な「タブレット ノワール」、そこにセミドライの白イチジクとアマンドキャラメルカカオをのせた「タブレット アンディアン」(写真上・手前)など、ひとかけずつゆっくりと味わいたいタブレットぞろい。 来店するたびに一枚購入して、いろんな味を覚えていくのもオツだろう。

甘さ控えめなモンブランや酸味のきいたエスキスも見逃せない!

チョコレート以外にも目移り必至な逸品がそろう。そのなかからシェフのおすすめを紹介してもらった。 まずは、先述の「トラディッショナル」に負けず劣らず人気の「モンブラン」(写真下)。
自家製パートダマンド(写真左下・断面下部:アーモンドと粉糖をつぶして練ったもの)を使ったさくさくアーモンドメレンゲ入りの一品だ。
「パートダマンドは『ジャン=ポール・エヴァン』でよく使っていたんです。上に載せる生クリームにはきび砂糖を使って甘みを抑えました」(松島シェフ)。生クリームを螺旋(らせん)状に覆うマロンクリームも甘さ控えめ。軽やかな口溶けで、ブラックコーヒーと相性抜群だ。
果実の酸味とキャラメルの苦みとの絶妙なマリアージュを楽しみたいなら、キャラメルのグラサージュ(菓子の表面にチョコやソースを流しかけたコーティング)に包まれた「エスキス」(写真上)がおすすめ。
クレーム・オブ・キャラメル、アプリコットとキャラメルのムースの層が、口の中で溶け合って多様な味わいを楽しませてくれ、ほんのりと焼き色のついたアプリコットの自然な甘みにはホッとさせられる。こちらのケーキは、濃いめに煮出した紅茶と合わせるのがいいだろう。

道行く人が思わず足を止めるスイーツの王国

「今後は吉祥寺方面に散策している人にもアピールしたいですね」と松島シェフは思いを明かすが、まるでパリの小路に佇むお店を思わせる愛らしい店構えなので、既に思わず足を止めている人も多いに違いない。
しかも内装は、国内にある某有名テーマパークを手掛けた施工チーム。一歩足を踏み入れると、見目麗(みめうるわ)しいスイーツいっぱいの夢の国だ。
▲ちょっとした手土産にも重宝する焼き菓子も多彩にラインナップ 甘い香りに包まれながら、大切な人と一緒にいただくおいしいスイーツを選ぶ至福の時間にぜひ酔いしれてみて。
【商品一例】 ■ケーキ ・トラディッショナル 585円 ・エスキス 480円 ・モンブラン 520円 ■チョコレート ・タブレット レ 900円 ・タブレット プラリネ レ 1,000円 ・タブレット ノワール 820円 ・タブレット マンディアン 950円 ※価格はすべて税別

Patisserie.leslines(パティスリーレリアン)

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