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再びフランスで修業。そして再オープンした話題のフレンチとは?
この記事は、豊かなフードライフを演出するWEBメディア「dressing」の提供でお送りします。
広島の繁華街から少し離れた、南区・京橋川沿いに、待望のフレンチレストランがオープンした。15歳でフレンチのシェフを志し、ヨーロッパ、東京、広島のフレンチレストランで修業。さらに、14年間営業した店を閉め、2016年からフランスで1年間修業をし、帰国した浅田浩司シェフの店『エピュレ』だ。
落ち着きのある洗練された外観のドアを開けると、白で統一された店内。華美な装飾はなく、清潔感あふれるインテリアは、実直なシェフの人柄を表しているようだ。
前身は、ビストロからはじまった『ル・ココ』だが、お客のリクエストを聞くうちに、ジビエやフォワグラなどの食材を扱うようになり、現在のようなコース料理のみのメニュー構成となった。そして、安定したクオリティと、お客のリクエストに応え続ける浅田シェフのファンは、どんどん増え続けた。
『ル・ココ』営業中も、年に一度は渡仏し、フランス料理を食べ歩いた。最初はお客として。だが、おいしい料理に出逢うたび、自分も現地で料理をしたくなる。そうして年に一度はフランスへ、食べ歩きの旅をしていた浅田シェフだが、なんと、40代半ばにして、1年間もの休業を決意する。
広島のフレンチと言えば、美食家の間で必ず名前が挙がっていた人気店『ル・ココ』を閉め、修業のために渡仏したのが、浅田シェフ46歳のとき。軌道に乗ったレストランをいったん手放すことに、迷いはなかったのだろうか?
「30代の時は、先のことを考えず、やりたいことをどんどんやるだけでした。40代になると、人生半分生きたけど、自分の未熟なところ、足りないところがわかってきて、もっと勉強したいという気持ちが膨らんでいったんです」
渡仏するたび、出逢ったフランス料理は、すでに浅田シェフが若いころ修業していたものからは、大きく進化した、新しい料理の世界だった。
シャンパーニュ地方にある名店『ドメーヌ・レ・クレイエール』では、クラシックをベースにしたハイクオリティでモダンな料理と、シェフの料理や思いをスタッフ全員が形にし、お客様へ伝えることを学ぶ。
守っていることは、「一つひとつきちんとやること」だという。『ドメーヌ・レ・クレイエール』のシェフから学んだことだ。「修業の初日、早めに行ったつもりが、シェフのフィリップ・ミル氏は、すでに出勤して、掃除していたんですよ。デッキブラシで壁をゴシゴシこすっている姿にびっくりしました。厳しくもあり、優しくもあり、とんでもなくすごい人です」。
素晴らしいシェフは、料理だけでなく、厨房の整理整頓や掃除など、すべてにおいて、きちんとこなしているのだという。
ちなみに、フィリップ・ミル氏は、若干38歳で、フランス国家最優秀職人章(M.O.F.)を授与されたシェフ。『ドメーヌ・レ・クレイエール』から帰国する際、フィリップ・ミル氏とスタッフたちがサインを書いてくれたコックコートを、店の奥にひっそりと飾ってあるのは、お客様に見せるためというより、浅田シェフ自身のためだという。これを見るたび、鼓舞されるという。
『エピュレ』の料理は、驚きと感動の連続!
「料理で難しいのは、たくさんの素材を融合させ、バランスを取り、口の中で化学変化を起こすこと」と浅田シェフ。例えば前菜の「鰹ボール」(写真上・右)は、黒い球体の上に、花をかたどった装飾が乗った、一見シンプルに見える一品。だが、その内容を聞くと驚く。
イカ墨の黒い球体の中には、スモーキーな鰹のムースが隠れている。そして鰹の強い匂いを和らげるため、シャンパンゼリーも中に仕込んである。さらに黒オリーブのクーリも入っているという。まずはシャンパンで乾杯することが多いフレンチ。最初に供されるアミューズは、シャンパンにあう複雑だが計算しつくされたバランスのとれた一皿だ。
こちらは「オマールエビとビーツの前菜」(写真上)。相性の良いオマールエビとフレッシュなビーツに、レモンとナッツの香り。季節により、温・冷どちらかで供される。
生の小さなビーツは、広島ではなかなか手に入らない。「僕が好きなので、一生懸命仕入れているんですよ」。そう言って見せてくれた調理前のビーツは、土がついて、新鮮そのもの。これが、料理の名脇役となっている。
料理で一番大事にしているのは、「ソースの香り」だと言う。様々なソースは、何時間もかけて作られる。お皿からただようソースの香りは、料理への期待感を一層かきたてる。
メインは「イノシシのロースト」(写真上)。こちらはイノシシの骨や筋を煮込んだ汁”ジュ“と、フランスのリキュールであるスーズのソースを添えて供される。苦みと甘みのバランスが、脂の乗ったイノシシ肉を引き立てる。
デザートは「栗とカシスのデザート」(写真上)。ふんわりとした栗のムースに、カシスのダコワーズとメレンゲのお菓子、栗のコンポートを添えた、やさしい味わい。〆のデザートにぴったりだ。
シャンパーニュ地方では、とにかくシャンパンを開ける!
ワインセラーには、思い出深いシャンパンやワインが揃っている。出逢った醸造家のワインは、必ず仕入れているという。お店を訪れた際には、浅田シェフの、それぞれのワインにまつわる話を聞くのもまた楽しい。
店内には一席だけ丸テーブルを設けている。「食卓を囲むように、楽しんでほしい」そんなシェフの気持ちが込められた席だ。
「今はひとりでやっているんですが、今後は、スタッフを増やして、チームで料理を作りたいです。フランス料理は、チームで作るものだから」。厨房できびきびとした動きを見せてくれたのとは対照的に、お話を伺うときは、ぽつりぽつりと朴訥(ぼくとつ)な口調の浅田シェフ。
しかし、料理の話になると、あふれ出る言葉がとめどない。そのギャップが印象的だ。おいしさに驚き、どこまでも探求する浅田シェフの料理は、世界で進化し続けるフランス料理とともに進化し続けるだろう。
【メニュー】
コース 6,500円、8,500円、12,000円
※価格はドリンク代、税別
ÉPURÉ(エピュレ)
住所:〒732-0828 広島県広島市南区京橋町4-14
電話番号:082-576-2414
営業時間:18:00~21:00(L.O.)
定休日:火曜
公式サイト:https://epure2017.jimdo.com/
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