ライター : dressing

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食の賢人・松浦達也氏が「2020年グルメトレンド」を大予測!

2020年は世界中から東京へと人が押し寄せ、さまざまな文化が流れ来る。 東京オリンピック・パラリンピックはその経済効果ばかりに目が向きがちだが、他国の文化へ興味関心が向く機会にもなる。つまり飲食のトレンドも大きく動く年になるはずだ。

まだ知らない料理が、東京に広まっている

この数年、中華やイタリアンなどで、現地に行かないと食べられないような料理を出すお店が日本に続々と登場している。『dressing』でも「マニアック中華」として紹介されたが、マニアックな料理はますます勢いを加速している。 例えば『中國菜 四川 雲蓉(ユンロン)』(吉祥寺)は、その昔中国・成都の迎賓館で出していたという、見たことのない(しかもやたらと手のかかる)四川の伝統料理も味わえる。 鶏肉を豚の皮の上でひたすら叩いて作る「雪花鷄淖(シゥエファー ジィーナオ)」(鳥のすり身のふわふわ炒め・写真下)などは味だけでなく、食感でも驚かせてくれる。「マニアック中華」の先には、さらに奥地へと進んだ「源流グルメ」がある。
▲つくるのに時間がかかるため、予約を忘れずに 錦糸町の『SOUTH LAB 南方』でも広東料理の源流まで遡上したような料理が供される。『福臨門(フクリンモン)』出身シェフによる本場の広東料理には、オーナーが栽培を手掛ける極上の中国野菜の魅力も加わり、食い道楽が連日押しかけている。 同じ『福臨門』系では神楽坂の『福全徳(フクゼントク)』も焼味(広東料理の焼き物)から点心までメニュー構成にもぬかりなし。少人数でも宴会でも旨くて楽しい。
▲太い根の味や食感までも楽しい、『SOUTH LAB 南方』の「パクチーサラダ」 紀元前にルーツを持つイタリア料理も、中華料理同様。近年は、トスカーナやシチリアなど日本でよく知られた地方だけでなく、エミリア・ロマーニャやフリウリといった各地方の郷土料理に特化した店の勢いもまだまだ加速していくはずだ。
▲目白の『トレガッティ』では、エミリア・ロマーニャ州の「ティジェッラ」などが食べられる。 中華やイタリアンのみならず、なじみの薄い国や地域の料理も楽しめるようになってきているのも面白い。 高田馬場のウズベク・キルギス料理店『VATANIM(ヴァタニム)』では、小麦を使った麺料理の源流にも近い「ラグモン」(写真下)や、起源がピラフにも通底する「プロフ」など、世界中に広まった料理の源流が楽しめる。 現地の留学生や来日・在日ビジネスマンがカウンターに鈴なり状態ではあるが、すき間を見つけてぜひありつきたい。
▲店頭では、さぬきうどんのようなしなやかながらしっかりしたコシ。持ち帰りでしばらくスープを吸うと、福岡うどんのようなやわらかながら、コシを残した食感に。

大本命は「グローカルグルメ」! 唯一無二の味わいにファン続出

そして2020年もっとも熱いのが、その地域に深く分け入った人が作る、土地の料理にとらわれない「グローカルグルメ」だ。 現地の料理を深く理解しながら、ただ再現するにとどまらない。事実、いくつもの地域の料理を背景まで含めて体に通し、シェフのセンスでいいとこ取りをした一皿に仕上げるような店が続々と登場している。
新店で言うと、旗手は『サエキ飯店』(目黒)だろう。店主の佐伯悠太郎さんは、『聘珍樓(ヘイチンロウ)』『福臨門』『赤坂璃宮』という広東料理の名門で腕を磨き、その後中国に渡った。 4店の厨房を経て、広東省全21市の食に触れた後に帰国。外苑前『楽記』で腕をふるうも、その後またも海を渡り、今度は世界30カ国を巡った後、外苑前『傅』で1年間研修をして独立、という濃厚過ぎるキャリアを持つ。 2019年春にオープンするやいなや、「上湯がすごい!」(写真上)、「鳥料理の火入れが抜群!」など東京中の食いしん坊のハートと胃袋を鷲掴み。あっという間に予約の取りにくい名店となってしまった。
経験、技術、センスのすべてが備わってこそ突き抜けた存在になることができる。代々木八幡の『おそうざいと煎餅もんじゃ さとう』の店主、佐藤幸二さんもそんな存在だ。 話を聞くと「えっ。あの国にもいらした? あの店にも?」と驚かされるほど、国内外で無数のキャリアを積んできた才人だ。 2010年にポルトガル料理店『クリスチアノ』を開店させた後、魚料理に特化した「マル・デ・クリスチアノ」、エッグタルト専門店「ナタ・デ・クリスチアノ」などを次々と開店させる快進撃。 2018年もポークビンダルーの店『ポークビンダルー食べる副大統領』、とんかつ店『カツレツの店 貴族と平民』を開店させている。 さらに2018年冬からは、『おそうざいと煎餅もんじゃ さとう』を冬季期間限定で小鍋の店『おそうざいとひとりなべとさとう』に業態転換。 そもそも一般的なもんじゃだけでなく、「アゼルバイジャンニラ玉」「納豆ゴルゴンゾーラチーズ」など謎すぎる(しかもどれもこれも旨い)メニューを次々に繰り出していたが、2019年冬の鍋も、「発酵羊肉」や「ぬか漬け肉」など素材からして不思議さを炸裂させつつ、爆発的な旨さ(と面白さ)も供している。
▲冬場のみの期間限定店、通称『なべさとう』。なかにはオーソドックス(?)な鍋もある。 逆輸入パターンもある。昨年末、銀座にオープンした『SPICE LAB TOKYO』は、長く日本に住んでいたインド人オーナーが世界のどこにもないスパイス料理を提案するというスタイルで評判を呼んでいる。 近年、鮨や肉割烹など特定の業態でバブルめいた出店が目立っていたが、2020年本当に熱いのは、世界を経験し、日本人を知り、味を心に届けるセンスにあふれた個人店。 足腰の強い「グローカルグルメ」は、ブームだけでは終わらない。
上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。
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