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ハーゲンダッツといえば“ちょっと高級なアイスクリーム”の代名詞。こだわりがずっしり詰まった濃厚な味に魅了され「いつもより少しだけ贅沢しちゃおう」という感じで選ぶひとが多いのではないでしょうか。でも、なにやらアメリカでは事情が違うようです。

なんでハーゲンダッツは高いのか

見目麗しい女優さんが、おいしそうに頬張るCMでお馴染みのハーゲンダッツアイスクリーム。絶対的な知名度と人気を誇るアイスクリームブランドですが、ポンポン気軽に買えるような値ごろ感はありません。なぜ、ほかのアイスクリームと比べて、ハーゲンダッツは高いのでしょうか?しかも、日本だけ高いらしい……?
ハーゲンダッツは、アメリカで1961年に生まれました。当時アメリカでは、食品に合成着色料や乳化剤がバンバンつかわれていたのだとか。そんな時代にありながら、創始者のルーベン・マタスは「究極のアイスクリームをつくりたい!」と考え、とてもシンプルな素材を厳選したハーゲンダッツをつくりだしました。スタート当時のフレーバーは3種類のみだったそうですが、濃厚な味わいで人気になったそうです。
でも、これだけの情報では疑問が解けません。そこで、「なぜハーゲンダッツは高いの?」を探るべく、ぐーんと掘り下げてみました!

素材のコストがかかっている

ハーゲンダッツのポリシーは“身近にあるシンプルな、けれどもこだわり抜いた素材でアイスクリームをつくること”なのだそうです。そのため、主な原料から、味の個性を決める副原料にいたるまで、一切の妥協がありません。

ミルクへのこだわり

ハーゲンダッツアイスクリームの主な原料は「ミルク」「砂糖」「卵」。そして、そのなかで最も重要なのが、味わいを決める「ミルク」です。
日本において、ハーゲンダッツの原料となるミルクがつくられているのは、北海道東部にある根室・釧路エリアです。栄養満点の牧草が育つ土づくりからはじめ、牛さんにとってストレスフリーな、心地よい環境が守られているようです。また、それぞれの体調に合わせた飼料が調節されているとのこと。
そして、人間と同じように、愛情不足からくる精神的ストレスがたまらないよう、酪農家の方が愛情いっぱいに乳牛さんを育てています。これらすべてが、ミルクのおいしさにつながっているんですね。

副原料へのこだわり

そして、もちろん、ミルクだけではありません。フルーツやナッツ、チョコレートなどの副原料選びにも、とことんこだわり抜いているようです。世界中から集めたものたちのバランスや食感を吟味し、ときには100種類以上の試作を重ねるそうです。ちなみに、ストロベリーアイスクリームを完成させるために創始者ルーベン・マタスが費やした時間は、イチゴ探しに3年、開発に3年というはなし。
また、ハーゲンダッツの「グリーンティーアイスクリーム」の原料である「てん茶」は、素材選びもさることながら、製造工程でその風味や色が損なわれないように、細心の注意が払われています。完全に遮光された部屋のなかで、石臼をつかってゆっくり挽き、抹茶にして使用しているのだとか。そのため、日本発の「グリーンティーアイスクリーム」は、海外でも人気です。

乳脂肪分が多い

乳脂肪分とは

ハーゲンダッツを食した人々からは、「濃厚でおいしい!」という感想が多く生まれます。その理由は、乳脂肪分が多いから。ちなみに「乳脂肪分」とはミルクに含まれている脂肪分のこと。ミルクの脂肪分は、水分のなかに乳化した状態で混ざっているので、消化吸収がよいという特長があります。そして、この脂肪分が多ければ多いほど、コクのある味わいになるということなんです。

アイスクリーム類の種類

ひとくちにアイスといっても、アイスクリーム類は4つに分類されます。そのなかで「アイスクリーム」と呼べるのは、乳固形分15.0%以上、うち乳脂肪分が8.0%以上のもの。これは、厚生労働省の“乳等省令”で決められている数値です。「乳固形分」はミルクの水分以外すべてを指すので、「乳固形分」+「水分」=「ミルク」となります。
ちなみに、乳固形分が10.0%以上、うち乳脂肪分が3.0%以上のものを「アイスミルク」、乳固形分が3.0%以上で、乳脂肪分の規定がないものを「ラクトアイス」、それ以下のものを「氷菓(ひょうか)」と呼びます。氷菓はアイスキャンディーやかき氷などのことで、乳固形分はほとんどありません。

ハーゲンダッツの乳脂肪は?

もちろん、ハーゲンダッツは堂々とアイスクリーム!と呼べる乳固形分・乳脂肪分の多さです。たとえば、ハーゲンダッツが誕生して以来、変わることのないロングセラー商品の「バニラ」は、以下のような成分になっています。
無脂乳固形分:10.0%|乳脂肪分:15.0%|卵脂肪分:0.8%
無脂乳固形分は、牛乳から水分と脂肪分を除いたものなので、「無脂乳固形分」+「乳脂肪分」=「乳固形分」となります。
つまり、ハーゲンダッツのバニラは、乳固形分25%うち乳脂肪分が15%ということ。これはなんとも濃厚です!無脂乳固形分は、たんぱく質、カルシウム、ビタミンなどの大切な栄養素を含んでおり、脂肪分もからだに必要な栄養素です。つまり、それらが多いほど、風味がよく栄養的にも優れているといえます。

温度管理に手間がかかる

安心素材だからこそ温度が大事!

アイスクリームのなかには「アイスクリスタル」という細やかな氷の結晶が存在しています。アイスクリスタルの大きさは20~70ミクロン。ちなみに、日本人の髪の毛の太さは70~90ミクロンといわれています。このアイスクリスタルが均一なほど、アイスクリームなめらかになります。
しかし、いったん温度が上昇してしまうと結晶が大きくなり、均一さも失われてしまいます。そのため、なめらかさが失われてザラザラした食感になってしまうのです。
もしも、安定剤や乳化剤を添加している場合、アイスクリスタルの成長が抑えられるので、温度変化による食感の劣化は起こりにくくなります。しかし、ハーゲンダッツはシンプルな安心素材にこだわっているため、それらの添加物を使用していません卵黄に含まれるレシチンで乳化させ、脱脂濃縮乳のたんぱく質で安定作用を補っています。そのようなことから、とくに温度変化の影響を受けやすいというわけです。

温度を保つための徹底管理

そのために、ハーゲンダッツは温度管理を徹底しています。倉庫-25℃以下、配送時-20℃以下をキープし、もちろん店頭においてもチェックを怠りません。すべてのスタッフが細心の注意を払って温度を保ち、おいしさを守っているのです。

空気が少なく密度がギッシリ!

アイスクリームをかき混ぜながら凍らせる際に、混ぜ込む空気の量をオーバーランといいます。たとえば、1リットルの原材料に、1リットルの空気を混ぜ込むと、そのアイスクリームの量は2リットルになります。その場合は1:1なのでオーバーラン100%です。パーセンテージが多いもの、つまり、たくさん空気が入り込んでいるものほど、軽いサッパリとした口当たりになります。
しかし、ハーゲンダッツのアイスクリームの場合、オーバーランが20~30%に抑えられています。それはつまり、空気量が少なくて原材料がギッシリ入っているということ。そして、このオーバーランの低さこそが、ハーゲンダッツの濃厚でクリーミーな味わいの秘密なのです。また、オーバーランを下げるほど、アイスクリームは冷たく感じられるようになります。

大人向けアイスというブランディング

ハーゲンダッツのアイスクリームは、創始者の想いが受け継がれ、徹底した“こだわり”によってつくり続けられています。ならば、お値段が高いのも致し方ありませんよねえ。
が!しかし!ハーゲンダッツが高い理由は、それだけではありませんでした。
日本にハーゲンダッツがやってきたのは1984年。東京の港区青山に第1号店がオープンした際には、少し前のハワイアンパンケーキ店さながら、長い行列ができたことで話題になりました。しかし、その当時の日本ではまだ、アイスクリームは「子供の食べもの」という概念が強かったのです。
そこで、ハーゲンダッツのアイスクリームは、ちょっと贅沢な大人のためのデザートとして価格を高く設定し、高級アイスクリーム路線で売り出したというわけです。

値引きをしない

もちろん、素材にこだわり手間もかかっているアイスクリームですから、簡単には値引きなんてできません。それに、イメージ戦略の成功で、もはやハーゲンダッツは「高いのが当りまえ」「あまり値引きはしない高級アイス」というイメージが定着しています。そのブランド力を維持するためにも、大幅な値引き等はおこなわれないのです。
ただ、まったく値引きがなかったころとは違い、1997年以降は値引きされたものが店頭に並ぶこともあります。しかし、それを見つけてしまった暁には思わず立ち止まり、「これを逃したら大変だ!」なんて気持ちにさせられて、思わず買ってしまうという事態に……。

アメリカでは安いアイスの代名詞?

日本との価格差に驚き!

日本では、高級アイスクリームの代名詞ともいえるハーゲンダッツですが、誕生の地アメリカではいったいどうなんでしょう。
それがなんと、実はかなりの庶民派アイスクリームなのだそうです。日本では、ミニカップ(110ml)サイズが通常200円強~300円ほどで販売されていますが、アメリカではたった1ドルで買えるのだとか。パイント(473ml)サイズは日本なら700円ほどなのに対し、アメリカでは4ドル、セール時ならなんと2ドル!
おまけに、日本では未発売のハーフガロン(1900ml)サイズは7ドルとのこと。つまり、1000円以内です。日本価格のイメージだと、余裕で3000円超す勢いなのですが……。

さまざまな事情

いろいろとハーゲンダッツを突き詰めていくと、「それほどアメリカで安いなら、こんなに日本で高いのはおかしい!」と思ってしまうかもしれません。しかし、ハーゲンダッツはあくまでもアメリカのアイスクリームブランドです。たとえば、日本のブランドであるスナック菓子も、アメリカの原料等でつくられたものがアメリカで販売されていますが、その場合も日本より多少は割高になっています。
それに、世界第3位の人口をもつアメリカは、ひとりあたりのアイスクリーム消費量も多いため、市場規模も日本の数倍です。よくアメリカの映画などで、日本人からは考えにくいサイズのアイスクリームを抱え、スプーンで頬張るシーンを観たことがありませんか?そーんなにドでかいアイスをひとりで食べているひと、日本ではなかなか見かけません。つまり、販売高が日本よりも大きいことが、価格に反映しているわけです。

素材が生きるアイスクリーム

いかがでしたか?大のハーゲンダッツバニラ好きとしては、今すぐアメリカに飛び立ちハーフガロンサイズをゲットしたい衝動に駆られましたが、日本オリジナルのフレーバーも捨てがたいし、旅費はどうするんだと我に返りましたので、とりあえず心を落ち着かせようと思います。
ちなみに、アイスクリームの基本的なつくり方は、材料を混ぜ、殺菌・冷却し、熟成させてフリージングし、硬化させるといった感じです。その工程において素材の変化が少ないため、アイスクリームはつかわれている素材の持ち味が、そのまま風味にあらわれるといわれています。
だからこそ、なおさら原材料がシンプルであれば、より素材のおいしさを味わえるということなんですよね。さーて、アイスクリームが食べたくなってまいりました。冬の訪れをジワジワと感じる寒い日、暖かいお部屋で食べるアイスクリームも、また格別ですね。

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中山陽子

ライター たまにイラストレーター ファブリックスのデザイナーから...

http://yokonakayama.jp/