ライター : macaroni公式

鎌倉の「和牛一境」で出会う。和牛の極み

Photo by macaroni

鎌倉で、ここまで和牛と真剣に向き合う店に出会えるとは思いませんでした。

鎌倉駅から少し歩いた先にある「和牛一境(わぎゅういっきょう)」。

「和牛の真を見つめ、一心に食らう、間の境地。」を掲げ、すき焼きとしゃぶしゃぶに特化した和牛専門店です。

ここで味わうのは、ただの食事ではありません。和牛の旨みと香り、米の甘み、立ちのぼる湯気までもが計算された、ひとつの体験でした。

本記事では macaroni 編集部が実際に訪れ、「和牛一境」の料理人・ぼぶさんの言葉とともにひと皿に込められた思いをご紹介します。

10席だけの静かな舞台。五感を刺激するライブキッチン

Photo by macaroni

古都・鎌倉の喧騒を抜け、一本奥まった住宅地へ。ひっそりと佇む小さなお店は、暖簾をくぐると、ふっと空気が変わります。

Photo by macaroni

席はわずか10席。コの字型のカウンター越しに、料理人の所作を間近で見ることができます。

料理が仕上がっていく過程がわかることで、食べる前から期待が高まる――そんなライブ感も、この店の大きな魅力です。

Photo by macaroni

とはいえ、座ると手元のすべてが見えるわけではありません。

あえて視線を遮る高さに設計されているため、余計な緊張感はなく、音や香りが自然と想像力をかき立てます。

その “ちょうどよさ” もまた、この空間ならではの心地よさ。

飽くなき探究心。料理人・ぼぶさんという存在

Photo by macaroni

調理を担当するのは、岐阜県で生まれ、関西で長く過ごし、幼い頃から食に強いこだわりを持つ家庭で育ったぼぶさん。

昔のあだ名で親しまれるその人柄のとおり、どこかあたたかく、それでいて食に対しては驚くほどまっすぐな料理人です。

Photo by macaroni

飲食経験は約20年。外食のみならず、食品加工や農業まで、まさに “食の川上から川下まで” を網羅。高級店から商品開発責任者まで多岐にわたる業態で研鑽を積んできた、食のスペシャリストです。

食に関する論文を読み漁るなど、味を科学的にも追究。火入れの温度や旨みの構造まで徹底的に突き詰める姿勢から、“変態料理人” と称されることも。

関西に住んでいた当時は、自ら畑で野菜作りにも取り組み、素材と向き合う日々を重ねていたのだそう。

徹底した素材へのこだわり

和牛 ― 葉山クイーンビーフとの出会い

Photo by macaroni

扱うのは国産ブランド和牛の最高等級A5ランク・サーロイン、30ヶ月以上肥育の雌牛のみ。そのなかでも象徴的なのが「葉山クイーンビーフ」です。

神奈川県内でも取り扱いはわずか。ぼぶさん自身が山道を自転車で登り、生産者に直談判した末に仕入れが許されたのだそう。

Photo by macaroni

「葉山クイーンビーフ」のほか、「松阪牛」「米沢牛」「静岡そだち」「山形牛」も取りそろえ、そのときに仕入れられる最良のものを特選しているといいます。

Photo by macaroni

注文が入ると、塊の和牛をその場でスライス。

肉の温度、厚み、包丁の入れ方まで緻密に計算し、和牛の魅力である「脂が香り、肉がとろけ、旨みが余韻として残る」という唯一無二の官能性を最大化します。

端材も決して無駄にはしません。「和牛糠漬けの焼き物」(税込1,500円)や「和牛南蛮漬け」(税込1,000円)として提供し、一切を余すことなく活かしています。

Photo by macaroni

取材時、特別に見せていただいたのは「葉山クイーンビーフ」6kgの大きな塊肉。

その美しいサシと艶やかな色の濃い赤身に、編集部員も思わず「すごい……!」と声を上げ、シャッターを切る手が止まりませんでした。

米 ― 仕入れ当日に精米したものを土鍋で

Photo by macaroni

米は、地元で知らぬ者はいない「笹屋米店」から、その時々で最良のものを選定。

仕入れ当日に精米してもらい、店ではひとり専用の土鍋で炊き上げるという徹底ぶりです。

Photo by macaroni

土鍋は兵庫県の陶芸家による手作りのもの。

ふっくらと炊きあがった白米は、湯気の段階から甘い香りが立ちます。和牛の脂と出会った瞬間、その真価を発揮。

野菜 ― 主役を引き立てる旬の味

Photo by macaroni

主役を引き立てる野菜は、地元の「ハレトキ」から厳選。出汁やたれ、付け合わせへと仕立て、肉の旨みを軽やかに受け止めます。

サラダには三浦産の野菜を中心に、季節の果実をひとつ添える趣向。すべては、主役である肉と米、そのものの旨みと香りを極限まで引き出すための工夫なのだそう。

関西風のすき焼き。緻密な火入れで旨みを閉じ込める

Photo by macaroni

すき焼きは、割下を先に入れない関西風。まず九条ねぎを焼き、香りを立たせてから肉をのせます。

肉はさっと焼き、旨みを閉じ込める絶妙な火入れにこだわります。鉄板の温度を常に測りながら、肉の厚みや焼き加減を幾度も試行錯誤。

その積み重ねが、一枚の完成度を高めています。

Photo by macaroni

目の前に御膳が並ぶと、仕上げに割り下をじゅっと回しかけてくれるのがポイント。

割り下をまとった瞬間に鉄板から甘辛い香りが立ちのぼり、味への期待がぐっと高まります。

Photo by macaroni

ひと口頬張ると、脂は軽やかに溶け、香ばしい香りだけがふわりと残ります。口の中に広がるのは、やわらかく上品な甘みと旨み。

九条ねぎの青い香りもほのかに広がり、炊きたての白米が甘みをそっと受け止めます。

和牛を引き立てる。ふわふわの卵

Photo by macaroni

すき焼きに欠かせない卵は、ふわふわに泡立てた状態で提供されます。

ぼぶさんは「卵をただ溶いただけでは白身と黄身のバラつきが出るし、卵の印象が強くなってお肉の味を邪魔してしまうんです」と語ります。

あくまで主役は和牛。その旨みを最大限に引き立てるために、丁寧に泡立てる。引き算と絶妙なバランス感覚こそが、ぼぶさんの料理哲学です。
メニュー名特選和牛焼きすき御膳
銘柄葉山クイーンビーフ・松阪牛・米沢牛使用
内容特選和牛焼きすき/自家製割下・焼きすき溶き卵・ごはん・吸い物・香の物・サラダ・箸休め
税込価格5,500円〜8,500円 ※肉のブランドによって異なります

しゃぶしゃぶ。見えない手間が生むおいしさ

Photo by macaroni

しゃぶしゃぶの御膳が運ばれてくると、目の前で黄金色の特製出汁をたっぷりと注いでくれます。

出汁は、昆布にドライトマト、干ししいたけなどを合わせた特製ブレンド


一般的によく使われるかつお節は、あえて使用していないのだそうです。風味が前に出すぎると、和牛の繊細な旨みを覆ってしまうから。

あくまで主役は肉。旨みを壊さず、そっと引き立てるつくり。見えない手間や素材選びが、シンプルながらも奥行きのある味わいを生んでいます。

Photo by macaroni

しゃぶしゃぶもベストな状態を保つため、事前に調理されたスタイルで提供。

薄くスライスされた肉を、出汁にさっとくぐらせると、色がほんのり変わる瞬間を逃さずに引き上げます。

Photo by macaroni

しゃぶしゃぶは、自家製のぽん酢かごまだれで。

口に運ぶと、肉の輪郭がくっきりと立ち上がり、脂はやわらかく、とろけるよう。出汁は澄んでいて、和牛そのものの甘みをダイレクトに感じられます。
メニュー名特選和牛しゃぶしゃぶ御膳
銘柄葉山クイーンビーフ・松阪牛・米沢牛使用
内容特選和牛しゃぶしゃぶ/自家製出汁・自家製しゃぶしゃぶたれ・ごはん・吸い物・香の物・サラダ・箸休め
税込価格5,500円〜8,500円 ※肉のブランドによって異なります

調味料から薬味まで、気付けば手作りに

Photo by macaroni

「和牛一境」はタレや薬味、小鉢も抜かりありません。マヨネーズベースに野菜としょうゆをきかせた自家製ドレッシング西京味噌をベースにしたごまだれ。さらに、三浦の大根おろし、南高梅のたたき、三浦のしらすなどの食材も脇を固めます。

気がつけば、使うもののほとんどが手作りになっていました」と、ぼぶさん。

素材への敬意と探究心。その積み重ねが、「この人に任せれば間違いない」と思わせるひと皿を生み出しているのだと感じました。

おすすめしたい、締めのひと品

Photo by macaroni

和牛をいただいたあとに気になって注文してしまったのが、「バニラとみりん」(税込 600円)。

バニラアイスクリームに、木桶仕込みの「三河みりん」をとろりとかけたひと品です。バニラの芳醇な香りと、みりんのやわらかなコクが絶妙。甘さはありながらもくどさはなく、どこか品のある後味でした。

子連れでも安心なワンコインメニュー

子どもを育てる編集部員も「これはうれしい」と喜んだのが、意外にもお子さまメニューのうどんやごはんセットはワンコインの500円であること。

ぼぶさんは「正直、原価割れです」と笑いながら教えてくださいました。

カウンター席だけではなく、テーブル席もひとつあります。敷居が高いイメージのある和牛専門のお店で、子どもも安心して食卓を囲める。その懐の深さもまた、この店の大きな魅力ですね。

こだわりが重なって生まれる。和牛の世界

取材を進めるにつれて、料理に込められたこだわりがどんどんあふれ出してくるのが印象的でした。「え、そこまで手間をかけるんですか……?」と、思わず声が出そうになるほど。

質問を重ねるたびに新しい発見があり、ひと皿に込められた想いの深さを肌で感じる体験です。食べ終えたあとも、その余韻が心に静かに残ります。

鎌倉の喧騒から一歩離れ、じっくり味わいたい和牛の世界をみなさんもぜひ。
和牛一境
〒248-0012
神奈川県鎌倉市御成町13−40 ヒラソル鎌倉 1FA
火曜日
定休日
月曜日
11:00〜22:00
火曜日
定休日
水曜日
11:00〜22:00
木曜日
11:00〜22:00
金曜日
11:00〜22:00
土曜日
11:00〜22:00
日曜日
11:00〜22:00
開閉
070-5011-5853
ランチ
ディナー

外部サイトで詳細を見る

※掲載情報は記事制作時点のもので、現在の情報と異なる場合があります。

編集部のおすすめ