ライター : macaroni公式

循環の源泉である「森」のめぐみを最大限に活用した新しいプロジェクト

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日本国内の各地域に眠る使われることのない木材や規格外の農作物、そして廃校を活用する、NTT東日本・NTTアグリテクノロジーのプロジェクト「森のめぐみ研究所」。地域の資源でつくる “循環型” 社会をめざし、森林の老齢化対策や再生可能エネルギーによる環境負荷低減、フードロス対策などを解決する新しいエシカルなプロジェクトです。

本記事では実際の取り組みや、森のめぐみで生まれた次世代ローカルフードをご紹介します。

テーマは「森と循環」

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日本国内の森林は、人間と同様に高齢化が進んでいます。森林を整備するためにおこなう定期的な間伐作業(※)では、未利用木材が生まれ、多くは山に残されてしまうのが現状です。

そこで「森のめぐみ研究所」では、本来ならそのまま放置される未利用木材を木質チップに加工し、木質バイオマスエネルギーの研究・実践を2023年6月より開始しました。

実際の循環の仕組みはイラストのとおりで、

・森に放置されている林地残材から木質チップを製造
・廃校に小型バイオマス発電機を設置し、木質チップを燃焼して発生するガスにて発電
・発電と同時に発生する熱を利用して、規格外果物を原料としたドライフルーツを製造
・製造工程で発生する食品残さは有機肥料にて活用


などといった森林資源を起点とした地球にやさしい循環の仕組みを確立させています。

※間伐(かんばつ)作業とは、森林の一部の樹木を間引くことをいい、森林を保護するためには必要不可欠な作業。間伐で出た木材を間伐材という。

規格外の果物から生まれるドライフルーツ

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廃校になった旧上白井小学校の卒業生がセカンドキャリアとして製造を担当。ドライフルーツの製造には、温度管理や衛生管理が徹底された廃校の保健室を活用。
ドライフルーツの製造は、群馬県という地域の特性も活かした取り組みとなっています。

群馬県は気候に恵まれていて、春夏秋冬さまざまな果物の栽培が可能。それぞれ新鮮で味がしっかりしていて、群馬の日光と水捌けの良い地域で安定的においしい果物を栽培できるのだそう。

しかし、どうしても行き場をなくしてしまうのが規格外の果物。「森のめぐみ研究所」は、そういった販売できない大きさや形の果物を地域の農家さんから仕入れ、ドライフルーツに加工しています。

砂糖不使用。濃縮された果物のおいしさ

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規格外の果物を森林由来の熱エネルギーで乾燥加工させた「森薫るドライフルーツ」は、原材料は果物のみで砂糖不使用です。

素材本来の味を生かしたまま製造するという製法にこだわっており、果物をより良い鮮度で保つために専用の電圧冷蔵庫や梱包資材を使用。少しでも果物の鮮度を維持できるように工夫をしているため、素材本来の味を存分に活かしたおいしいドライフルーツが完成します。

「森薫るドライフルーツ」5種の特徴

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こだわりの製法により、国産果物ならではの味の濃さや爽快感が楽しめるドライフルーツです。群馬県産の果物が素材そのまま使用されており、噛むたびに濃厚な味や香りが広がります。

現在販売されているラインアップは全5種類です。
商品名特徴
Strawberry
(YAYOIHIME)
断面が美しく果肉は固めで、
まるで生のいちごのようなまろやかな酸味と豊満な風味
Peach黄桃と白桃のみずみずしい果肉の甘さをそのままに、
噛めば噛むほどに際立つ香り
Japanese Pear水分と果肉のバランスの良い引き締まった梨は、
口当たりがとてもよく後味もさわやか
Apple薄皮ごと食べられるりんごを使用し、バランス
の良いしっかりとした酸味と味の濃さ
Mandarin Orange恵まれた環境で育ったさっぱりとした蜜柑で、
そのまま皮ごと食べてもおいしい新食感

木質バイオマス×IoTで実現した “菌床しいたけ” も栽培

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NTT東日本が提供するクラウド付きIoTパッケージ「置くだけIoT」を活用し、菌床しいたけ栽培の環境制御を実施。温度・湿度・CO2の管理に加え、しいたけの栽培で必要な散水もIoTの機器により自動的に制御を行なう仕組みを構築。
「森のめぐみ研究所」では、ドライフルーツだけでなく、木質バイオマスを活用した菌床しいたけを栽培しています。

じつは、木質バイオマスという新しい分野の仕組みとNTT東日本が得意とするICT分野でのテクノロジーを掛け合わせることで実現した新しい栽培方法なんだそう。

森のめぐみが凝縮した、うま味成分たっぷりのしいたけの生産に取り組んでいます。

エネルギーの地産地消を実現する木質バイオマス熱電併給設備

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※「VOLTER(ボルター)」はフォレストエナジー株式会社にて運用 【画像上】実際に使用されている小型の木質バイオマス熱電併給設備「VOLTER(ボルター)」【画像左下】木質チップ【画像右下】VOLTER内ガスエンジン
地域の森林を整備する際に発生する未利用木材などを木質チップに変えたものが木質バイオマスのエネルギー源になります。

「森のめぐみ研究所」で活用しているのは、フォレストエナジー株式会社が運用する小型の木質バイオマス熱電併給設備「VOLTER」。木質チップを熱分解してガスを発生させ、そのガスでエンジンを稼働させて発電するというもの。大規模なものとは違い、小スペースの場所に設置ができるのが特徴です。

地域の森林資源量に応じて分散して設置ができるのも強みで、地域の資源を持続的に活用しながら、木質バイオマスをさまざまな地域で稼働させていくことも考えているそう。

廃校から生まれる新しい価値

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校舎の外観はそのままですが、校庭には木質バイオマス発電機とチップヤードの設置に加え、ドライフルーツとしいたけを栽培しているコンテナがあります。今後も校庭内にコンテナを増やす予定があるそうです。

今後の取り組みについて担当者にお聞きしたところ、『今はドライフルーツとしいたけのみ生産していますが、この取り組みの肝となるのが、エネルギーの地産地消による魅力ある産業の創出。地域に眠っているさまざまな資源を有効活用して、地域が夢と希望を抱ける社会を実現したい』といいます。

本取り組みを広げていくことで、森林再生や地域の産業や雇用創出、農家の所得向上、などさまざまな波及効果があると考えているそう。全国にネットワークや拠点のあるNTT東日本グループだからこそできる循環型社会の形成に期待が高まります。

循環型社会を日本全国へ

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NTT東日本 ビジネス開発本部 / 南雲 雄(なぐも ゆう)さん
最後に、日本全国にこの取り組みを広げたいと話してくれた事業担当者の南雲さん。

『こういった荒廃が進んだ森林は日本全国にあるので、このプロジェクトを群馬県の渋川だけではなく、全国に広げていきたいと思っています。まだスタートラインに立ったばかりなので、循環を生み出すサイクルをもっと広げたいです。

森林を起点に熱エネルギーを作る、熱エネルギーから産業を作る、産業から生み出した廃棄物は有機堆肥に変えて自然に戻す……、この循環のサイクルをどんどん拡大していきたいと思っています』

荒廃が進み生物の多様性が失われていく森林や児童の声が聞こえなくなった廃校など、都市部にいると感じにくいことが、日本国内のあらゆる地域で起こっています。なかなか直接的には関われないけど、何気ない日常のお買い物でこういったエシカルな食品を手に取ることで日本のミライ、地球のミライが確実に変わっていくはずです。

インタビュー動画はこちら▼

※掲載情報は記事制作時点のもので、現在の情報と異なる場合があります。

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