ライター : noranora69

監修者 : 竹内 弘久

杏林大学医学部付属病院 外科医

辛いものを食べ過ぎるとどうなるの?

あなたは、辛いものが好きですか? 最近では激辛グルメが人気を集めており、いろいろなお店にある激辛メニューに挑む方も多いのではないでしょうか。 唐辛子などに含まれている“カプサイシン”という成分が代謝力を上げて脂肪を燃やしてくれることから、ダイエットや健康のため積極的に辛いものを食べようとする方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、辛いものは食べ過ぎてしまうと良くないことがあるんですよ。今回は、辛いものを食べ過ぎるとどういう症状が現れるのか、ご紹介します。辛いもの大好き!という方は、ぜひ確認しておきましょう。

どこからが「食べ過ぎ」?

食べ過ぎが体に良くないということは理解している方も多いと思いますが、どこからが「食べ過ぎ」になるのか気になりますよね。実は、日本ではカプサイシンの摂取量について明確な基準は設けられていません。 しかしドイツでは、カプサイシンの摂取量について調査をおこない基準をもうけています。伝統的な食事において推定される、大人の1回あたりの総カプサイシンの摂取量は最大5mg/kg bw(body weight)。ただし、この摂取量はカプサイシンへの感受性が強い人や食べ慣れていない人には、あまり望ましくない効果を与えると注意がされています。 5mg/kg bw(body weight)の「mg/kg bw」とは、体重1kgあたりの摂取量を表す単位のこと。体重60kgの大人だと300mgという計算になります。一般的なキムチ用唐辛子に換算すると、一本あたり0.06〜0.07mgのカプサイシンが含まれているので4000〜5000本分になりますね。さすがに、そこまで食べることはないと思いますが、唐辛子の種類によってカプサイシンの量は変わってきますから、やはり注意は必要です。

辛いもの好きは味覚障害の可能性が……

わたしたちは口にしたものの味を、舌の付け根にある「味蕾(みらい)」という部分で感じとっています。小さな花のつぼみのような形で数多く存在しているのですが、歳を重ねるにつれてその数は減っていきます。
味蕾が壊れるということは、味を感じにくくなる、つまり味覚障害が起こるということです。 成人の平均的な味蕾の数は約3,000個といわれていますが、最近では若くても2,000個ほどしかない方がいるそうです。味蕾が2,000個しかない方は、味覚障害者とみなされることがあります。また、亜鉛不足により味覚障害を引き起こしてしまうこともあります。 味覚障害の原因には、「亜鉛欠乏症」、「薬の副作用による薬物性」、「口腔疾患(口の中の病気)」、「全身疾患(糖尿病や消化器疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、悪性腫瘍、頭部外傷、脳卒中などの脳血管障害)」や「心因性」があります。心因性の場合は、自発性異常味覚や異味症が多いことが特徴的なんです。つまり「常に激辛を好む」人のなかには、心因性味覚障害が隠れている可能性があるんですよ。

辛いものの食べ過ぎでぜん息が悪化するおそれも……

カプサイシンを含む辛いものを食べると、舌や口の中がヒリヒリしますよね。その刺激、実は口だけで感じるものではなく、体外に排出されるまであらゆる粘膜に影響をおよぼします。影響範囲は気管支や直腸、肛門にいたる消化器官全体です。 ぜん息をお持ちの方はとくに要注意です。気管支がカプサイシンの強い刺激を受けると気管支収縮が起こり、息切れや咳が生じてしまいます。(※2)

それでも食べたい方は「牛乳」で予防を

辛いものを食べ過ぎたら、いろいろと支障をきたすことが分かりましたね。しかし、「そうだとしても辛いものは食べたい!」という方がいらっしゃると思います。たしかに、好きなものを我慢するというのはつらいですよね。
そのような方は、辛いものを食べる前に牛乳を飲みましょう!できるなら、食べながら飲むということも、おすすめです。牛乳は舌に接するカプサイシンを吸着し、辛みを和らげてくれます。また、口内や食道、胃腸などの粘膜を保護をしてくれる働きがあるため、刺激から守られます。牛乳だけでなく、ヨーグルト(ラッシー)やチーズにも同様の効果がありますよ。
辛いものを食べているときに水を飲む方が多いですが、刺激となる“カプサイシン”は水に溶けない性質なので、あまり意味がありません。やはり飲むなら牛乳か、ヨーグルトドリンクのラッシーがおすすめです。

おわりに

辛いものは“刺激物”です。辛いものを食べ過ぎて、おなかが痛くなった経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。そう考えると、たしかに食べ過ぎは避けたいところですよね。
もちろん、辛いものには発汗作用や血流を良くしてくれる効果もあるので、適度な量なら食べることをおすすめします。食事を楽しめるようにするためにも、“味覚”は正常な状態でありたいですよね。辛いものが好きな方はひたすら刺激を求めるのではなく、食べるということを楽しみながら堪能しましょう。
【参考文献】
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