名店を経て独立。都立大学「笠井」で味わうシンプルなイタリアン…?

都立大学「笠井」は、さまざまな名店を渡り歩いたシェフが独立オープンした注目の一軒。食材のおいしさをシンプルに食べ手に伝えることを大事にし、素材のおいしさをいかした料理を提供している。そんなシェフの、“間違いなくおいしい料理” をご紹介します。

2020年1月21日 更新
この記事は、豊かなフードライフを演出するWEBメディア「dressing」の提供でお送りします。

名店で活躍したシェフが独立オープン、都立大学『笠井』

最新技術によって今までにない食材の味を引き出したり、科学的な手法を取り入れたりするなど、美食を求める世界は奥が深い。 その世界において、食材のおいしさをシンプルに食べ手に伝えることも、“おいしい料理”には欠かせない要素だろう。 2019年の12月9日、目黒区八雲にレストラン『笠井』が誕生した。東京のイタリアンを牽引する『TACUBO(タクボ)』出身のシェフによる、極上の素材が持つパワーを生かした料理に出逢える店だ。
位置するのは、東急東横線「都立大学」駅から徒歩12分ほどの住宅街。外観は素っ気ないほどシンプルで、木目に墨字の清々しい看板が目印だ。 この外観、何やら見覚えある…と思う人がいるかもしれない。 実は、予約の取れない店として知られていた伝説の中国料理レストラン『CHINESE RESTRAUNTわさ』があった場所なのだ。そんな聖地を、縁あって譲り受けることができたという。
店内も、外観同様にシンプルそのもの。真っ白で清潔感ある壁に木目の大きなカウンターと、少し年季の入ったハイチェア。 この椅子や器、厨房設備などは『わさ』から譲り受けたという。余分なものをそぎ落とした店内は、食に向きあう場としてふさわしい。 席はカウンター9席のみ。シェフとゲストが程良い距離で向き合うシェフズカウンターが同店のスタイル。 シェフが腕を振るう様を眺め、食材への想いを五感で感じれば、しっかり記憶に残るひとときとなりそうだ。

おいしい食材をさらにおいしくする、確かな技術

オーナーシェフである笠井篤さんは、関西にあるイタリアンでキャリアをスタート。 その後東京に移り、名シェフを多数輩出している『アロマ・フレスカ』系列の『アロマ・クラシコ』で3年ほど研鑽を積んだ後、本場イタリアに渡り2年間、ヴェローナやミラノ、フリウリなどで修業を続けた。 帰国後、横浜の人気イタリアン『カンブーザ』を経て、国内イタリアンのトップシェフの一人である田窪大祐氏が率いる『TACUBO』に入店。 1年半にわたって活躍した後、満を持して独立を果たした。
潔い店名からも伺えるように、『笠井』はイタリアンを高らかに掲げない。 キャリアとして培ってきたイタリアンをメインにしつつも、その枠にとらわれず中華や和食、フレンチの手法を取り入れながら、その食材の魅力を一番生かせる料理を心掛けている。 「生産者の方が丁寧に作ったり、獲ったりしているものなので、それをきちんと届けたいと考えています。食材そのものが本当においしいんですよ。 だから、素材にストレートに向き合って、その力を助ける程度でシンプルに料理していきたいですね」と笠井さん。 にこやかな語り口の中にも、生産者への深いリスペクトをうかがわせる。

名シェフ直伝の自家製カラスミは、極上の味わい

気泡が入ったモダンなガラスの器に盛りつけられた「自家製カラスミとアオリイカの冷製カッペリーニ」(写真上)。味付けは塩とオリーブオイルのみというシンプルな一品だ。 このメニューの主役は、鮮やかな山吹色のカラスミだ。カラスミと聞いてイメージする独特のクセが全くなく、身がしっとりとし、魚卵ならではのプチプチした食感も残っている。 ひとたび口にすれば、凝縮した濃厚なうまみに感嘆する。 塩味も控えめなため、品の良い甘みを持つ、長崎県五島列島にある『林鮮魚店』直送のアオリイカとのバランスも絶妙だ。
カラスミ(写真上)のレシピは、シェフが今まで食べた中で一番おいしかったという『わさ』の山下昌孝シェフから伝授されたもの。 笠井さんが信頼している業者の目利きによる鮮度抜群のボラの卵巣を使うのがポイント。このボラを洗う水に硬水を使い、2週間かけて熟成させていく。 極上の素材から仕上げられたカラスミは、前述の通り臭みが全くなく、味わい深さも絶品だ。

素材の良さが生きる、滋味豊かな「モツ煮込み」

「豚モツの辛いトマト煮込み」(写真上)は、ズッパフォルテというナポリの郷土料理がベースとなっており、豚のさまざまな内臓肉をピリッと辛いトマトスープで煮込んでいる。 上に乗る黒キャベツの独特な苦味が、トマトの甘さを引き立てている。 この料理の主役である豚モツがすごい。使用するのは、静岡県産のブランド豚「天城黒豚」のモツ。 牧場から直送される朝締めされた豚のモツは鮮度がとびきりで、血抜き程度の処理で調理しても、全く臭みがない。
チキンブイヨンは使わず、トマトの水煮と塩のみで煮込んだスープには、モツの濃厚なうまみが溶け込んでいる。 豚モツは、下ゆでした後、蒸してから焼くという手間のかかる行程で丁寧に脂を落としていく。 脂が持つ甘みを消し去らない程度に脂を落とすことで、豊かなコクがありながら、さっぱりした後口が生まれる。 モツ料理なのに品良く仕上がっているのは、シェフの凄技が隠されているからなのだ。

ジュワっとしたたる肉汁のうまさに感動する「黒毛和牛の炭火焼き」

表面はこんがりと、中は赤褐色にしっとりと焼き上げられた「黒毛和牛の炭火焼き」(写真上)。黒毛和牛の塊に塩を振り、炭火で焼くという説明も要らないほどシンプルな料理。 うまい肉ほど心をガツンと掴むものはないことを実感する一品だ。 焼き上がった肉の塊にスッと包丁を入れると、切り口から透明な肉汁がジワジワと湧いてくる。 「ジュワっと湧いてくる肉汁がソースですね」(笠井さん) 米を食べて育った牛の脂身はサラリとしているという。甘く軽やかな肉汁が口に広がり、いつまでも堪能していたいという気持ちになる。 付け合わせのポロネギは、北海道「竹中農場」のもの。極太のポロネギが持つ自然の力強い甘みは、素材のパワーを感じさせる『笠井』の料理にぴったりと合っている。
牛肉は福島県産のA2ランク黒毛和牛。こちらも古くから付き合いがある業者の目利きによるもの。サシが入りすぎず、ローストにはちょうどいい具合だという。 この肉を、余分な水分を抜いていくイメージでゆっくりと炭火で焼き、最後に表面をパリッと香ばしく焼き目をつける。 肉を焼くという調理法ひとつとっても、素材のポテンシャルを引き出すさまざまな手法があるが、笠井シェフは素材と真摯に向き合い、一番ストレートにおいしさの感動を伝える方法を導き出す。
「ハモは夏より冬の方がいいですよ」と愛媛県から届いたばかりのハモを見せていただいた。獲ったのは、都内の有名レストラン御用達、カリスマと呼ばれる漁師・藤本純一さん。 “神経締め”という手法で仮死状態にして鮮度を長持ちさせるという漁法で獲られたものだ。 骨切りをするのですか?と尋ねたところ、骨を切らずに抜くのだという。和食の名店、西麻布『豪龍久保』で教わった技だそう。 「骨を抜いたハモの身はムチムチしているんですよ。フリットかパスタにしたいですね」(笠井シェフ) 全国から届く極上の旬の素材。笠井シェフの探求心からどんな料理が生まれるのだろうかとワクワクさせられる。

料理を引き立てるワインやドリンクにも楽しみが

ワインはイタリア産をメインに、ツウも納得の逸品を始め、手軽に飲めるものまでが広く並ぶ。自然派やクラシックにこだわらず、シェフが自分の料理に合うと感じたものを揃えている。 『笠井』の料理は、素材の味が勝負。極上の素材が、合わせるワインでどんな味わいに変わっていくのかも楽しみのひとつだろう。
ノンアルコールドリンクとしておすすめなのが、兵庫県芦屋市にある天然茶葉にこだわった紅茶インポーターから仕入れたフレーバーティー。 渋みのない水出し紅茶は実に華やかで、食事に合わせても楽しめそうだ。
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