【不定期連載】a story about meals———こんどうしょうたとシャトルシェフ。

人気料理家と人気商品のコラボで生まれた物語をお送りする不定期連載。初回となる今回は、「息子の味を、おふくろへ。」をテーマに、息子の味をコンセプトとしたレシピを提案し続けているこんどうしょうたさんとシャトルシェフが織り成す物語をお届けします。

16日とシャトルシェフ

「こんどうさん、Do you Kyoto?」

午前10時、浅草駅至近のカフェで、ひさしぶりに会った編集者Dさんから突然の問いかけ。僕はただ目を丸くするばかりだった。

……なにを言っているんだろう。京都といえば、紅葉?お寺?おばんざい? たしか湯豆腐も有名だったか。でも、だからどうしたと……。

訊ねる言葉も浮かばぬうちに、冒頭の質問について説明を受けた。Dさんによると、「Do you Kyoto?デー」という記念日があるらしい。2005年2月16日に京都議定書(※)が発行されて以来、毎月16日を環境に良いことをする日として、京都市が定めているのだそうだ。
でも、それを聞いても僕の疑問は変わらない。だって、なにがなんだかわからない。戸惑う僕にはお構いなしに、Dさんが口を開く。

「今日は16日。つまりDo you Kyoto?デーなんですよ。実は、そんな日にぴったりの品があるんです」

そう言ってDさんが指差したのは、彼の足元の大きな箱。ツルリとした表面には、調理器具だと一見でわかる写真がプリントされている。

「これ、サーモスのシャトルシェフです。保温調理、ご経験は?」
保温調理……、以前、ローストビーフをつくったときに試して、火元を気にせず食材を加熱できる点に魅力を感じた。シャトルシェフについては寡聞にして知らなかったけれど、つまりは保温調理をするための道具なのだろう。

わけのわからないまま首肯すると、我が意を得たりという顔のDさんがグイと箱を押し付けてきた。

「午後は予定ないんでしょう?だったら試してみてください」

言いながら、これで用事は終わりとばかりにDさんが席を立つ。そもそもの要件が済んでいたので問題はないのだけれど、シャトルシェフを預ける意図がわからないし、そこの説明をしないまま帰られたのでは気持ちが悪い。

「ちょっと待って」と声を上げながら席を立つと、もうDさんの姿はなかった。魔法かよ!と内心でツッコミを入れたが、どうしたっていない人には伝わらない。まったく、勝手な人だ……。

はぁ、とひとつため息をつき、ひと抱えもある箱を持ち上げる。見た目ほどの重さはないが、持って帰るのはなかなか面倒な作業だろう。仕方ない……と覚悟を決めて、落とさないよう箱を抱き、会計のためにレジへと向かった。

僕がしているエコ活動。

僕がしているエコ活動。

Photo by macaroni

家に着き、荷物を床に下ろしたら、両腕が少し張っていた。ジム通いを趣味にしていてよかったと思う。

とりあえずひと休みして、「Do you Kyoto?デー」について調べてみる。スマホで検索すると、すぐに詳細をまとめたHPが見つかった。緑を基調としたページの目立つ場所に、「環境にいいことしていますか?」とのメッセージ。自分はどうだったろうかと反射的に思い返す。

エコや省エネを意識していない、わけではない。できる範囲ではあるけれど、実践していることもある。
たとえば、スーパーやコンビニの袋は繰り返し使うようにしている。もらったものを折りたたんで携帯し、買い物をしたらそれに詰めて帰るのだ。傷んできたら、ゴミ袋として使って捨てる。ちょっとしたことだが、資源をムダにしないための僕なりの配慮。
そういえば、最近ハマっているベジブロス、あれも「環境にいいこと」といえるかもしれない。
皮や種、ヘタなどの野菜くずを洗って煮出す。すると、野菜の甘みや旨み、栄養素が溶け込んだ良いだしがとれるのだ。このベジブロス(ベジタブル+ブロス=だし)でかつおだしを取ったりごはんを炊いたりすると、水でやるより味わいが増す。料理がおいしくなるからやっていただけのことではあるが、食材を余さず使い切ろうという考え方はエコと呼んでもいいだろう。
そんなことを取り留めなく考えていたら、「Do you Kyoto?デー」だという今日をそれらしい日にしてみようという気になった。これといった予定のない日、「環境にいいこと」を意識しながら過ごすのも悪くない。
そうと決まればやることは決まっている。料理をしよう。ランチタイムが近いせいか、少し前から腹の虫がうるさいのだ。

問題は、「Do you Kyoto?デー」にふさわしい料理、または調理法を思いついていないこと。どうするか……と考えはじめたとき、玄関に置いたままにしたシャトルシェフの箱が目に入った。

保温調理で「環境にいいこと」。

保温調理で「環境にいいこと」。

Photo by macaroni

シャトルシェフか……。とりあえず引き寄せて、箱から中身を取り出してみる。緩衝材とともに現れたのはオレンジ色の保温容器。そのふたを開けてなかを覗くと、黒い鍋がスッポリと収まっている。
説明書によると、この黒い鍋に食材を入れて火にかけ、煮立ったところで保温容器に収納する、というのがこの調理器具の使い方。ステンレス製の保温容器は魔法びんと同じ構造で保温力があり、あとはそのまま置いておくだけ。高温の余熱でしっかり食材に熱を入れることで、素材本来の風味や旨みを生かした料理ができあがるという。

Dさんも言っていたが、このシャトルシェフ……、というより保温調理という調理法だが、「環境にいいこと」という「Do you Kyoto?デー」のテーマにはたしかに合致する。なにせ、鍋を長時間火にかけなくても煮込み料理ができるのだ。省エネの意味でも、エコの観点から見ても、メリットがある。まだ残暑のきびしいこの時期、コンロの火をつけたままにするのは気乗りのしない作業だが、それをしなくていいというのも魅力的だ。加えて、保温のために毛布で鍋を包むだなんて面倒もない。
シャトルシェフの長所を頭のなかに並べたら、その使い心地にだんだん興味が湧いてきた。Dさんの目論見どおりに動くのは癪(しゃく)だが、好奇心には猫も勝てない。

……試してみるか。そう決めて食材の残りをチェックすると、野菜用のバスケットにキャベツと玉ねぎが、冷蔵庫に合挽き肉が残っていた。となれば、つくる料理はアレでいい。キャベツで挽き肉を包んでつくる、熱々がおいしいあの一品だ。

僕の料理の原体験

僕の料理の原体験

Photo by macaroni

スピーカーの電源を入れ、古いゲームミュージック———最近のお気に入り、をかける。音楽があった方が不思議と調理が捗るのだ。最初に流れてきたのは某大ヒットRPGのメインテーマ。ビープ音だけで構成されたテンポの良い楽曲に、ドットの世界にのめりこんでいた当時の記憶がフラッシュバックした。ノスタルジックな気分になるのがなんとも言えず心地いい。
気持ちがのってきたところで、まずは下ごしらえ。手早く玉ねぎをみじん切りし、キャベツの芯を取り除く。キャベツの葉は一枚ずつ取り分け、厚い部分を手早く削いだ。さらに、鍋に水を入れ、お湯を沸かす。家庭料理に慣れた人ならもう献立の目星はつくだろう。今日のランチはロールキャベツ。ときどき無性に食べたくなる料理のひとつだ。

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macaroni編集部

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