ライター : 白井シェル

フリーライター

「魚醤」とは

魚醤は、英語でフィッシュソースという通り、魚を発酵させて作る調味料のことを指します。東南アジアを中心に好まれている調味料で、代表的なものだとタイの「ナンプラー」、ベトナムの「ニョクマム(ヌクマム)」が有名です。エスニックテイストの料理に使う調味料として親しまれています。

日本では「しょっつる」「いしる」など、独特の名前を持つ魚醤が存在していますよ。

魚醤の栄養と旨みの素

原料は塩と魚だけとシンプルです。しかし、味わいは奥深く複雑。たっぷりの塩に漬け込まれた魚が発酵すると、魚の動物性タンパク質が分解され、アミノ酸と魚肉の核酸が生まれます。これが魚醤の旨みの素。

魚醤を料理に使うと、塩味とうま味がプラスされ、さらにおいしくなりますよ。

魚醤の作り方

魚醤の材料は地域によって異なりますが、大抵は塩と魚介類がメインです。塩は材料に対して10〜30%くらいの分量が多いようですね。材料として使われる魚介類はイワシやサバの仲間が多く、東南アジアでは網にかかった小魚を使うというケースもみられます。

作り方は、地域差が多いものの、塩漬けにした魚や干物などを保存桶に詰め込んで発酵させるところは全国共通。日本では麹やもろみ(ろ過していない醤油)を加えて発酵させる地域もみられます。魚醤を作るには、半年から2年程度の漬け込みが必要です。ときどき中身をかく拌しながらゆっくりと発酵させていきます。

魚醤はシンプルな工程でできる調味料なので、自宅で作ろうと思えば意外と簡単に作れるんですよ。戦時中の日本では、大豆不足から魚醤を作る地域もみられました。しかし最近では、安全性の問題や手軽に既製品が購入できるようになったことから、家庭で作るケースは少なくなってきているようです。

魚醤と醤油の違い

魚醤と醤油の大きな違いは、原料です。醤油は大豆を使うのに対して、魚醤は魚やイカなどの魚介類を使用。そのため、醤油は植物性のたんぱく質、魚醤は動物性たんぱく質であるという違いがあります。

どちらも塩漬けしているのでしょっぱいのですが、魚醤のほうが塩味が強いです。そして、魚醤は動物性たんぱく質がもつコクや甘味が感じられるのに対し、醤油は植物性のたんぱく質を使用しているため、さっぱりとしています。

東南アジアの魚醤

ナンプラー

カタクチイワシを、7か月〜1年ほど熟成させて作る、日本の醤油よりもとろみのある魚醤です。グリーンカレーにちょい足ししたり、ナシゴレン(タイ風チャーハン)、ミーゴレン(タイ風焼きそば)、ヤムウンセン(タイ風春雨サラダ)などにも欠かせません。

ニョクマム(ヌクマム)

原料や作り方はナンプラーと同様。ナンプラーよりも発酵度が浅くて香りが強く感じられます。アジやイワシの仲間など小魚を使うことが一般的です。フォーやバイン・セオ(ベトナム風お好み焼き)などではハズせない食材となっています。
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