ライター : 稲吉永恵

野菜ソムリエ / ローフードマイスター / オーガニックコンシェルジュ

なにこれ?白菜の黒い点

「今夜は鍋にしよう」と白菜を切ってみたら、白菜に黒い点々が!「もしかして、カビ?」とギョッとした経験はありませんか?

真っ白な白菜一面に黒い点々が出ているのは、あまり気持ちのいいものではありませんよね。食べても大丈夫なのか、不安に思う方もいらっしゃるでしょう。この記事では、野菜ソムリエが白菜の黒い点の正体を解説します。

黒い点の正体はポリフェノール!

一見、カビのようにも見える黒い点の正体は、“ポリフェノール”です。「“ポリフェノール”って、あの、体によいと言われるポリフェノール?」と驚かれるかもしれません。白菜に浮き出た黒い点の正体は、病気でもカビでも、もちろん虫でもなく、実はポリフェノールなのです。

ポリフェノールとは植物特有の成分で、苦味や渋味、色素の元となるもの。植物が光合成をするときに作り出される成分でもあります。緑茶に含まれるタンニンやブルーベリーに含まれるアントシアニンなどは有名なポリフェノール一種ですね。ポリフェノールの効果は、血圧降下や殺菌作用、そしてよく言われているものとして、“抗酸化作用”があります。(※1)

黒い点はなぜできるの?

白菜の黒い点は、正式には“ゴマ症”と言います。白い葉や茎に、ごまのような黒い斑点が散っていることから付けられた名称で、“症”とは言うものの、病気ではありません。そしてゴマ症のごまの部分はポリフェノールであるため、食べても問題ありませんよ。

環境によるストレスが原因

白菜のゴマ症は、環境によるストレスによってわりとよく発生します。大きく育った白菜ほどゴマ症が発生しやすく、ゴマ症は白菜の生理現象によって起こるため、“生理障害”とも言われます。生理障害とは、虫類、カビや細菌などによる被害ではなく、栄養失調あるいは過多、低温度・高温度による障害のことを指しますよ。

白菜のゴマ症のほか、さくらんぼの収穫前の降雨による実割れも生理障害のひとつ。農業関係者のなかでは、よく知られている現象ですね。

栽培時・収穫後ともに発生する

ゴマ症の原因はさまざまありますが、主に栽培されているときの環境や、収穫後の保存環境によって発生すると言われています。栽培や保存環境が原因のストレスによって、白菜にポリフェノールが溜まり、白菜表面に黒いごまとして現れたものがゴマ症なのです。

黒い点があると味に変化は?

ゴマ症の白菜は、ポリフェノールが白菜の表面に現れているもので、味も品質も特に問題はなく、食べても差し支えありません。また、「ゴマ症の白菜のほうが甘くておいしい」という説もありますが、それは寒締め白菜と勘違いして広まったというもので、確かではありません。

白菜は収穫後、冷蔵庫で長期保存した場合もゴマ症が発生することがあるため、おいしい白菜の選び方を知って適切に保存するのがよいですね。
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