連載

「クミン」を使った夏の異国風レシピ。モロッコ風サラダとペルーのセビーチェ

季節に合わせたハーブとスパイスの使い方を提案する連載の第6回。今回は、夏野菜に合う万能スパイス「クミン」を使って、夏の夕暮れに食べたいごはんのレシピを紹介します。初心者にも作りやすいモロッコ風サラダと、ペルーの郷土料理セビーチェを作ります。

2018年12月12日 更新

ナイル川から始まった「クミン」の歴史

異国の香り漂うスパイス「クミン」は、セリ科の一年草。

エジプトなどナイル川の上流に原生していたものが、やがて北アフリカや小アジア、インド、インドネシアへと広まっていったようです。

最も古くから栽培されているスパイスの一つであるクミンは、古代エジプトの医学書にも記述が残されていたり、中世のヨーロッパでは、迷信やまじないと深い関わりのあったことが伝えられています。

インドやヨーロッパでは薬としても用いられている、クミン。整腸、健胃、消化や代謝の促進、抗ガン作用があると言われています。また、ビタミンやミネラルも豊富な身体にうれしいスパイスなのです。

じつは味噌との相性もよいクミン

インド料理、中国東北地方の料理、トルコ料理、ペルー料理……。世界中の食卓でクミンが用いられているということを、異国の料理に出逢うたび、私は学びます。

スリランカに赴きスパイスを輸入している方が、「クミンは日本の味噌みたいなものだから、なんにでも加えるといい」と、いつか私に教えてくれました。たしかにクミンは、野菜だけではなく魚や肉にも合わせやすい万能なスパイスです。そして、味噌との相性もいい。

インドとネパールを長く旅した友人から伝授してもらったカレーの味の要は、クミンと味噌でした。クミンを炒ることから始まり、野菜とたくさんのスパイスを煮込んで、最後に味噌で味を調えるカレー。ネパールの味を彼女なりに消化した味噌スパイスカレーは、今では私の定番料理です。

クミンシードとクミンパウダーの使い分け

クミンシードは、炒めものや煮こみ料理のはじめに、ごく弱い火でじっくりと炒って、香りをたたせてから調理に使います。

クミンパウダーは、生地に練りこんだり、食材にまぶしたりする時に重宝します。ハンバーグやミートボールなどの挽肉料理の臭み消しや、炒めものの風味づけにも多く使われているのがクミンパウダー。クミンシードを砕いて細かくして代用することも可能です。

私は、ツンとした香りが鼻を抜けるクミンシードがとても好きなので、クミンシードをよく料理に使います。

クミン香る夏野菜のモロッコ風サラダ

訪れたいと願いながら、叶わぬまま焦がれている土地モロッコ。

まわりの友人たちからモロッコ旅の話を聞くたびに、今度こそはと想いを強めるものの、結局今の今まで足を延ばせていない土地です。

モロッコという国に興味を持ったのは、高校生の頃に観た映画『グッバイモロッコ』(1998年、イギリス)。ふたりの娘を連れロンドンからモロッコ・マラケシュへとやって来たシングルマザーを、ケイト・ウィンスレットが演じた映画です。

マラケシュの市場や、生活感あふれる共同住宅、宗教的な儀式のシーン。異文化のなかで、理性と本能とのあいだを葛藤しながら生きる母子の、生の人間らしさ。現地の匂いまで漂ってきそうなくらいの色と音に満ちた画面から、マラケシュに暮す人々の熱量を感じました。

私はよく、映画や食事や音楽で旅をします。読書の世界もまた、旅。料理も旅。

今すぐ旅に出ることのできない時には、映画を観たり、異国の料理を食べに出かけたり、音楽を聞いたり、本を読んだり、料理したりするのです。

そう思えば、日常も旅。いつも旅のなかにいます。

いつかモロッコへ出かけたいと強く願いながら、私は今日モロッコ料理を作り、モロッコの写真集を眺め、モロッコ料理を食べに繰り出しました。

「クミン香る夏野菜のモロッコ風サラダ」のレシピ

材料
・プチトマトもしくはトマト
・きゅうり
・赤たまねぎ
・コリアンダー(フレッシュ)
・レモン果汁
・クミンシード
・オリーブオイル
・黒こしょう
・塩
作り方
1. トマトときゅうりを、食べやすい大きさにカットする。

2. 赤たまねぎを、薄切りにする。

3. コリアンダーを、みじん切りにする。

4. クミンシードは、弱火にかけたフライパンなどで炒って香りをたたせる。

5. ボウルにトマト、きゅうり、赤たまねぎ、コリアンダーを入れ、オリーブオイルを回しかけて混ぜる。

6. クミンシード、黒こしょう、塩、レモン果汁を加えて、さらに混ぜ合わせ、完成。
モロッコ料理屋さんで食べたものは、トマトもきゅうりも赤たまねぎも角切りで、品のいい食べあたりの、クミンパウダーを用いたサラダでした。

私は旅を強く求めるのと同じく香りの強いクミンシードを好むので、野菜がクミンに負けないように、無骨なくらいの大きさに野菜をカットしています。

きゅうりは叩いて手でちぎるのが、味がなじみやすく私の好みです。

ぶっきらぼうさんでも簡単に作ることができるレシピ、ぜひお試しください。

共和国ペルー風味の鶏肉セビーチェ

ラテンアメリカの郷土料理である、セビーチェ。新鮮な魚を、塩とレモン汁、とうがらし、赤たまねぎであえた、中南米風の魚介マリネ。

一昨年のこと、南米ペルー共和国の「フュージョン(融合)」という食文化の潮流を映画と料理教室から体験するという企画で、料理の教え手として参加させていただきました。魚介だけではなく、肉、豆、野菜、きのこ、あらゆる食材を調理する方法が「セビーチェ」なのだということを、その時はじめて知ったのです。

アンデス山脈にアマゾン川、さまざまな気候、地形、海がはぐくむ多彩な食材。古来各地で栄えた文明、占領やいくつもの国からの移民たちによってもたらされた異文化。そんな独特の「文化の融合」が織りなすとても自由なもの、それがペルー料理なのだと知って、私はそれまで縁のなかった未踏の地ペルーへと想いを馳せるようになりました。

映画『Peru Sabe / ペルーサベ』(2012年、ペルー)冒頭で画面に広がる「食で世界に革命を」という力強いメッセージが、私の心に種を蒔きました。

想像を遥かに越えるのであろう大自然と、太古の人々が命をかけて築きあげた文明、宗教や民族のちがう異文化な人々。そんな多種多様さを受け容れるだけの土壌が、どうやらペルーにはあるようです。
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WRITER

ピリカタント 西野優

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