ライター : 伊藤 千亜紀

フードアナリスト

コクとは?

味を表現する言葉に「コク」というものがあります。料理以外でもビールなどに使われていますよね。では、「コクって何?どんな味?」と質問されたら、どのように答えますか? コクの意味は、「濃厚なうまみ」と辞書に載っています。また、語源は「濃い」や「酷」から来ていると言われています。いまひとつわかりにくい気もしますが、改めて考えてみるとなかなか表現するのが難しい言葉です。 今回は、そんな「コク」について説明していきます。

五味のバランスがいいのが「コク」

コクが味の表現に使われる食べ物やメニューには、どのようなものがあるのでしょうか。チーズなどの乳製品やビーフシチューのような肉料理、煮込み料理にラーメンなど、わりとこってりしたものが多く思い浮かびます。 しかし、こってりした味=コクのある味ではありません。人が舌で感じられる味には、五味と言われる5つの味があります。甘味、旨味、苦味、塩味、酸味です。 この中にコクは入っていないので、コクはいわゆる味ではないことがわかります。コクとは、五味がバランスよく感じられたときに使われる言葉です。味覚が反応する色々な味が混ざっているので、濃厚なコクになるんですね。 ただ、コクは味のバランスなので、感度には個人差が出てきます。実際にコクの明確な定義や科学的な根拠はなく、あくまで個人の感覚や感性による味覚と言われています。

コクと旨味は違うもの?

コクは味のバランスだということがわかりました。一方で、旨味という言葉がありますが、コクとは何が違うのでしょうか。旨味は五味の一種で、素材の持つ味を指します。 旨味は食材の実だけではなく、実を除いた出汁にも含まれることから、素材の中にある味自体だということがわかります。またコクとは違い、アミノ酸であるグルタミン酸など明確に成分で表現することができます。コクが感性の味覚なのに対し、旨味は明確に定義された味覚だということです。
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キレって何?

ビールなどの飲料の味の表現で、コクと一緒に使われることが多い言葉に「キレ」があります。キレも五味に含まれる言葉ではありませんが、味を表現する言葉です。 では、キレとはどのような味なのでしょうか。コクが味のバランスなのに対し、キレは、後味がどれぐらい尾を引かないかを表現した言葉だと言われています。飲みこんだ後の味が、きれいにスッと消えて爽快感があるものを「キレがある」と表現します。 コクが意味するバランスのいい色々と混ざった味は、濃厚な味になることも少なくなく、どうしても後味が長く残りがちです。 それに対し、キレがあるものは後味がスッと消えるので、コクとキレをどちらも感じられる飲食物は珍しいと言えます。結果、対比が可能になるので、ビールはコクとキレの両方をキャッチフレーズに使っているのでしょう。

微妙なニュアンスの味の表現

コクやキレ以外にも表現するのが難しい味について説明していきます。ここで紹介する言葉もコクと同様、個人の感覚によるところが多い味です。どんな状態がより、その味を強く感じるかは明確にされていませんが、一般的な意味を紹介します。

味わい深い

味わい尽くせないような奥深さが感じられるときに使う言葉です。趣が深いという意味もあるので、味だけでなく芸術作品や人生の経験話などにも使われます。
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