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すっかり消えてしまった「ビフテキ」という名のメニュー。認知度は世代ではっきりと分かれるようですが、大抵は“ビーフステーキの略”として理解されています。しかしそれは大間違い!ビーフステーキの歴史に隠された「ビフテキ」の深層を探ってみませんか?

ビフテキって知ってる?

「ビフテキ」という言葉を使ったことはありますか?
「今日はお給料日だから、ビフテキにしましょう。」「ランチはビフテキにしない?」「あービフテキ食べたーい」……現代ではちょっと違和感がありますね。

“牛(ビーフ)”をわざわざつけて略さなくてもいいのでは?という考えのあなた、30代~40代の方ではないでしょうか?そう呼んでいた時もあったなと、なんだか懐かしさを感じたあなたは50代以上の方でしょうか?そして、そもそも「ビフテキ」を知らないあなたは20代~30代の方かもしれませんね。

ビフテキは昭和の時代に「ビーフステーキ」の略としてよく使われていた言葉です。平成生まれの世代でも何となくそうじゃないかなと予想はつくようですが、実際に若い世代に使用した人の中には、空気が凍りついたという報告があります。もはや「インド人もびっくり」並みの昭和語のようです。(←知らない人は、20代……?)

ビフテキはビーフステーキじゃない

さて、「ビフテキ」について“ビーフステーキの略語”として使われていたとお話しをしましたが、本題はそこではありません。実は「ビフテキ」はそもそも略語ではなく、フランス語で「ステーキ」を意味する「bifteck(ビフテック)」が語源という説が有力になっているのです。40年以上も略語だと思っていた人にとっては衝撃的なお話しですね。

そもそもビーフステーキとは

日本に「ビーフステーキ」の文化ができたのは、明治時代初期と言われています。「文明開化」と呼ばれる時代、当時貿易が盛んな横浜エリアには西洋料理店が並び「ステーキ」もメニューのひとつに加わっていたようです。ステーキはアメリカの影響だと思っていた人が多いのでは?きっかけが西洋文化だったとは少し意外ですよね。

これでビフテキの由来と言われるフランス語「bifteck(ビフテック)」に少し納得がいくような気もします。しかし、当時日本の食肉文化と言えば薄切り肉の「牛鍋(うしなべ)」。厚切り肉のステーキは外国人向けのものとして、日本人に受け入れられる傾向はなかったようです。

日本にステーキ文化が広く普及したのは昭和戦後の時代、アメリカの影響だと言われています。パンやオムライスなどの洋食が盛んになり、明治時代には受け入れられなかった「ビーフステーキ」もアメリカンスタイルとなって一気に普及したようです。

ビフテキは実は庶民の味

明治初期、日本にやってきた「ビフテキ」はその分厚い見た目から日本人には好まれないメニューとして避けられていましたが、食肉文化が広がってきた明治後期になると見た目への印象が一変。庶民にとっては豪華な料理として高値の花になったようです。

しかし元をたどれば、フランスの「ビフテキ」は家庭の食卓に並ぶような“庶民の味”でした。フライドポテトをたっぷり添えて食べるのが定番のようで、味付けは塩コショウのみ。とてもシンプルで、お肉の味を楽しんでいるように思えます。現代でもフランスのステーキは「steak frites(ステック・フリット)」と呼ばれる国民食です。

それでは“庶民の味”として西洋からやってきた「ビフテキ」は、なぜすぐに浸透しなかったのか。それは明治時代以前に「肉食禁止令」がたびたび発令され、正式に解禁されたのが文明開化時代の明治初期だったからというのが理由のようです。牛肉食に慣れない日本人にとって「ビフテキ」は見た目のインパクトが強く、毛嫌いされてしまうのもなんだかわかりますね。

ビフテキは日本でも歴史ある食べ物

明治時代の「ビフテキ」は数々の試練を乗り越えてきたように思えますが、歴史に名を残すような脚光も浴びています。明治時代の文豪「夏目漱石」の小説「野分(のわき)」に「ビフテキ」が登場しているのです。

舞台は現代も残る老舗、日比谷公園内の「松本楼」です。青年ふたりが卒業祝いとしてランチに「ビフテキ」を食すシーンがあります。夏目漱石自身が西洋料理を好んで食べていたと言われており、松本楼100周年の際には夏目漱石が愛した料理として「ビフテキ」が復刻したのだとか。

じゃあトンテキは?

ビフテキの由来が「ビーフステーキ」ではなかったとすると、気になる存在が思い浮かんだ人もいるのではないでしょうか。そう、「トンテキ」です。

ビフテキと同じように、ステーキの略として理解している人が多いと思いますが、「トンテキ」に関してはステーキの略として正解です。豚→トン・ステーキ→テキとなり「トンテキ」。「ビフテキ」の由来はモヤモヤ感が多少残りますが、「トンテキ」はストレートな由来で気持ちがいいですね。ちなみにトンテキは三重県四日市市の名物料理です。

「ビフテキ」と言ってみたい

今では庶民の味となった「ビーフステーキ」。ファミリーレストランで高校生の集団が食べている姿も見かけます。日本の食文化の歴史を知ると、現代の暮らしがとても豊かになっていることを実感させられますよね。

個人的に「ビフテキ」という言葉はハイカラな響きがすてきで惹かれますが、皆さんはいかがですか?レトロなファッションが流行るように、言葉も繰り返していけばいいなと思います。
ビフテキ世代のご両親がいたら「ビフテキ食べにいかない?」とさりげなく誘ってみてはいかがでしょう。もしかしたら、ご両親にとっては思い出深い言葉かもしれません。

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