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連載:五感で旅するハーブとスパイスの食卓

「スターアニス」とも呼ばれる、中国とベトナム原産のスパイス「八角」。中国では古くから漢方としても重宝されてきた、中華料理に欠かせない香辛料です。胃腸の働きが衰える夏から秋への変わり目に食べたい中華風のレシピを、3品お届けします。

スターアニスとも呼ばれる「八角」とは

アニスやフェンネルに似た香りがあることから「スターアニス」「八角ういきょう」とも呼ばれる、愛らしい佇まいのスパイス「八角」。中国南部とベトナムが原産の、中華料理に欠かせない香辛料のひとつです。八角、アニス、フェンネルの近しい甘い芳香源は、「アネトール」という成分の香り。

八角はモクレン科の常緑低木の果実で、熟したものが不揃いな八角の星形になるのだそう。うつくしい形と香りで料理するものを魅了する八角は、うつくしい花と香りで道行く者を魅了するモクレンの仲間だったのです。

季節の変わり目にうれしい八角の効能

中国では、古くから漢方としても重宝されてきた歴史あるスパイス「八角」。咳をおさえる働きや、冷え性の改善、鎮静作用、消化促進作用、強壮作用、抗がん作用、虫除け、精神の安定……など、たくさんの効能を持ち合わせています。

胃腸の働きの衰える夏や、今のような季節の変わり目にも適したスパイスで、新陳代謝の活性を促す働きもあり、少量であればダイエットにも効果あるスパイスのようです。

八角は、抗インフルエンザ剤「タミフル」の原料として知られるほど、作用の強いスパイスでもあります。大量に摂取することや、とくに妊娠中の摂取には気をつけてください。

八角の使い方と保存方法

中国では鶏肉や豚肉を使った料理の調味料として加えられたり、中華料理に欠かせない5つのスパイスを合わせた混合香辛料「五香粉 (ごこうふん、ウーシャンフェン) 」の原料として、あらゆる料理に使われています。もうひとつの原産地であるベトナムでは、ポーと呼ばれる牛肉のスープなどに使われます。

八角の味と香りは、お肉だけではなく魚貝や野菜との相性もよく、お菓子の香りづけにも適したスパイスです。八角の香りは、石鹸、化粧品、歯磨き粉の製造にも使われています。

八角は粉末にして食材にまぶし使うよりも、八角の一片を調理の過程で鍋に加えて風味づけし、取り出してから料理を味わうことをおすすめします。

保存は高温高湿を避け、空気に触れないように密封した状態で保存します。

八角を使う料理① 台湾風クレープ

去年の11月のこと。友人である「HaoChi Books」のふたりと共に旅した二度目の台湾旅行は、とても楽しいものでした。
" おいしい " と " 台湾 " をキーワードにセレクトしたインディペンデントのマガジンや生活雑貨などを扱う、台湾好きの二人から成るユニット。それが「HaoChi Books」です。今年の1月にHaoChi Booksが主催したイベント『台湾散歩 - ぼくは臭豆腐と麺線が好き - 』で台湾の料理をお出しするため、二人の買い付けの旅に便乗し同行させてもらったのです。
台北、台中、台東、台北、と、HaoChi Booksの二人の友人と知人を巡りながら、見て、匂って、触って、食べて、味わう、鉄道の旅。市場、食堂、カフェ、夜市、料理店、原住民族パイワン族のお母さんのご飯……。台湾の文化や歴史を食べることを通して感じとる旅は、食べることに関わる者として、とてもよい経験、意義のある時間となりました。
旅に同行した友人「DIGINNER GALLERY」(東京・自由が丘にあるギャラリー)由美さんと、雨にも負けず、早朝から陽が暮れるまで食べ歩き、食べサイクリングした、台東の市場や路地裏で出逢った、たくさんの味と香り。
ところ狭しと緑の敷き詰められた目にも美しい野菜の市場から、生々しい精肉市場と魚市場、発酵臭のツンと漂う漬け物屋さんに、香辛料と生薬の並ぶ漢方屋さん。ひたすら肉をそぎ続けている食堂のお兄さんお姉さんと、大きな鍋をかきまわし続けるお母さん。外国を旅するたび視覚的に体感する、食べることと生きることの繋がり、日々たくさんの命をいただいて今私は生きているのだという実感を、全身で吸い込みながら、町中を駆けまわりました。

ここで紹介する台湾風クレープは、イベント『台湾散歩 - ぼくは臭豆腐と麺線が好き - 』での映画上映会に合わせて作ったレシピです。移動映画館「Kino Iglu」さんセレクトの映画『台北カフェ・ストーリー』(2010年)からイメージしたものと、雨の降る台東の朝に出かけた幾つもの食堂とカフェを憶いだし、自分の見た旅の風景まで綴じこめて作ってみた、私流の台湾風クレープ。
材料と工程が多く面倒に感じられるかもしれませんが、調理はいたってシンプルです。難しく考えずに、勢いで作ってみてください。クレープがまんまるに焼きあがると、とっても幸せな気持ちになれること間違いなしです。

「台湾風クレープ」のレシピ

材料
【具材】
・豚ひき肉
・干し椎茸
・ニンニク
・しょうが
・ピーナッツ
・八角
・五香粉
・塩
・こしょう
・砂糖(私は、きび砂糖を使用しています)
・酒(お家に紹興酒があれば、紹興酒を。さらにおいしく仕上がります)
・みりん
・しょう油
・水
・油

【クレープ】
・薄力粉(作りやすい量:50g)
・強力粉(作りやすい量:50g)
・五香粉
・水(作りやすい量:約160ml)
・油

【付けあわせ】
・香菜
・あさつきや細ねぎなど
作り方
1. まず、クレープの具を炊きます。少し深さのある鍋に油をさして、みじん切りにしたニンニクとしょうがを、香りがたつまで弱火にかけます。

2. 鍋にひき肉を加えて中火にし、塩、こしょう、五香粉をふり、炒めます。パラパラとしてきたら、酒、みりん、水で戻した干し椎茸(食べやすい大きさにカットして)と戻し汁、砂糖、しょう油、八角を加えて、水分がなくなるまで煮詰めていきます。

3. 途中何度か味をみて、足りない味を調えながら煮詰めていきます。ぐつぐつするようなら、火は弱火に。汁がなくなったら火を止め、八角を取り出し、すり鉢などで砕いたピーナッツ(すり鉢がなければビニール袋などに入れ、瓶などで叩いて砕く)を加えて、さっと混ぜあわせます。
4. 次に、クレープを作ります。ボウルなどの容器に薄力粉と強力粉を同量いれて、香りづけ程度に五香粉を加え、水を注いで混ぜあわせ、クレープの種をつくります。水の割合が多く「さらっ」としている状態だと、焼く工程が難しくなるので、種が「ボタっ」とするくらいの水分量をおすすめします。

5. 焦げつきにくいフライパンなどの鍋にまんべんなく油を敷いて(キッチンペーパーなどで鍋を拭くようにまんべんなく油を敷くと、焼きやすいです)ごく弱火で鍋を熱し、クレープの種をお玉などで掬って、まあるく流し入れていきます。

6. 種をまあるく流し入れたら、蓋をして、しばらく待ちます。蓋をあけ、クレープの生地の表面まで火の通っている様子を感じられたら(表面にぷつぷつと気泡がたってきます)、表裏をひっくり返して、今度は蓋をせずに裏面を焼きつけて、お皿に移し、クレープの完成です。
7. 具をお皿に装って、付け合わせの香菜や野菜を食べやすくカットし添えて、クレープでそれらを巻きつけ、おいしく召しあがってください。

八角を使う料理② 台湾風の茶葉煮卵

台湾を旅するとそこかしこで目にする、茶色い面持ちのゆでたまご。日本のコンビニに「おでん」がいつも並んでいるように、台湾のコンビニにいつも並んでいるそれは「茶葉蛋(チャーイェータン)」という名のゆでたまごなのだそうです。空間いっぱいに漂う八角の香りは、台湾に居るということを改めて感じさせてくれます。

八角と茶葉と調味料で煮て、漬けこんで作られるそれは、出来あがるまで時間はかかるものの、 手間という手間はほとんどかかりません。

今回は、ウーロン茶の茶葉と八角に桂皮(=シナモン)も加えて作ってみました。このレシピも、イベント『台湾散歩 - ぼくは臭豆腐と麺線が好き - 』でお出ししたもの。遊びに来てくれた台湾人の留学生の男の子が、「台湾の味がする」とよろこんで食べてくれたことを、嬉しくこころに記憶しています。

本を読みながら、映画を観ながら、合間合間の時間で仕込んで完成することの出来る、簡単なのにちょっとしたごちそう感のあるレシピです。

調理中は八角と桂皮の香りに包まれ、異国情緒たっぷりの台所となります。台所で束の間の台湾旅行、ぜひ試してお楽しみください。

「台湾風の茶葉煮卵」のレシピ

材料
・たまご
・茶葉(今回はウーロン茶を使用。紅茶やジャスミン茶などでもおいしいです)
・八角
・桂皮(シナモン。なければ、八角だけでも)
・しょう油
・砂糖(私は、きび砂糖を使用しています)
作り方
1. 鍋に水をはり湯を沸かし、沸騰したお湯で15分ほどたまごを茹でて、ゆでたまごを作る。

2. ゆでたまごの熱が冷めたら、たまごの殻全体にヒビを入れる。

3. 底の深めの鍋に殻の付いたままゆでたまごを並べ、たまご全体が浸るくらいの水を注ぐ。

4. 茶葉、八角、醤油、砂糖を加えて、ごく弱火で2時間以上煮こんでいく。途中、味を見て足りない味を足し、調えながら煮こむ。

5. 煮汁と一緒に冷蔵庫で一日以上冷まし漬けて、食べる前に再び熱を加えたら、完成です。香菜など添えて食べると、とってもおいしいです。

八角を使う料理③ 季節の野菜と鶏肉の香港風炒め

日本にも中華街があるように、外国を旅するとあらゆる場面で出逢う「チャイナタウン」。初めて異国の中国人街に出かけのは、20代の初めに訪れたタイでした。

きんぴかに光る金のネックレスたちが並ぶ店、怪しげな食材屋さん、生薬の並ぶ漢方薬局、強い香りが鼻先から頭を突く香辛料屋さん……。タイの中国人街で体感した空気と、怪しげで異質な雰囲気に旅情を感じた私は、どこかを旅するたびに中国人街を訪れるようになりました。
私は、ウォン・カーウェイ監督の映画が好きです。なかでも香港を舞台に描かれた『恋する惑星』(1994年)と『天使の涙』(1995年)がとても好きで、香港を旅した時には、旅にでる直前まで何度も繰り返しこれらを観て、香港旅へと気持ちを高めたものです。
沢木耕太郎さんの著書『深夜特急1 香港・マカオ』もまた、旅の前に読み返しました。本と目の前に広がる景色を照らし合わせては、変わってしまっている町並みに少し落胆したのを憶えています。時とともに町が変わりゆくのは、当たり前のことなのですが。

「季節の野菜と鶏肉の香港風炒め」のレシピ

材料
・季節の野菜いろいろ(今回は、夏の終わりの野菜を。ピーマン、きゅうり、ゴーヤ、いんげん、なす、オクラなど)
・鶏肉(胸肉を使用しましたが、ささみ肉やひき肉を使っても、おいしいです)
・ニンニク
・しょうが
・クコの実(手に入らなければ、レーズンなどで代用しても、おいしいです)
・松の実(手に入らなければ、カシューナッツなどでも、おいしいです)
・八角
・五香粉
・塩
・こしょう
・砂糖(私は、きび砂糖を使用しています)
・酒(お家に紹興酒があれば、紹興酒を。さらにおいしく仕上がります)
・みりん
・ごま油
作り方
1. 中華鍋のように大きめで少し深さのある鍋にごま油をさし、みじん切りにしたニンニクを弱火で熱し、香りがたってきたら同じくみじん切りにしたしょうがを加える。

2. 塩をふり酒に浸しておいた鶏肉を鍋に加えて中火で炒め、火が通ったら一旦ボウルなどに取りだしておく。

3. 油が足りないようなら鍋にもう一度ごま油をさし、食べやすい大きさに刻んだ野菜たちを、火の通りにくいものから順に鍋に加え、強めの火で焦げないように炒めていく。

4. すべての野菜たちが鍋にいれられたところで、先に炒めておいた鶏肉を鍋に戻し、八角、酒、みりんを加え、水分がなくなるまで強めの火で炒めていく。

5. 鍋の水分がなくなる手前で火を少し弱め、砂糖、塩、こしょう、五香粉をふり、クコの実と松の実を加え、全体を混ぜ合わせるようさらに炒める。

6. 鍋のなかの具材たちが調和して、味が調ったら、器に装い完成。今回は、しその穂を最後に散らしてみました。

食べることを通して、世界を学びたい。

ウォン・カーウェイ監督の映画を想いながら旅した、いつかの香港でいただいた飲茶

ウォン・カーウェイ監督の映画を想いながら旅した、いつかの香港でいただいた飲茶。

外国の中国人街や香港、台湾の旅を経てから、東京でも日常的に中華料理を欲するようになりました。四川、上海、北京、広東、東北地方、香港、台湾、客家、ウイグル……。どこまでを中華と分類するのかはさておき、東京で食べることの出来る中華料理は、様々です。中国4000年の歴史とはよく言いますが、ところ違えば風土や文化の違う、そんな土地の歴史まで感じとることの出来る料理が、私は好きです。
お酒を飲み始めたばかりの頃、氷砂糖を加えなければ飲むことの出来なかった紹興酒も、今ではストレートで飲むことが出来るようになりました。苦手だったピータンだって、今では家でピータン豆腐を作るくらいの好物です。

料理は、現代だけではなく過去の人々と繫がることだって出来てしまうツールです。食べることを通して、世界を学びたい。食べることを通して、人と繫がりたい。私はいつも、そんな風に願っています。
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