ライター : kamomm

寿司用語って?

おすし屋さんには、扱う鮮魚素材やその調理方法、付け合わせの品にいたるまで、普段使っている言葉とは異なる、独自の言語が存在します。例えば、きゅうりの細巻きを「かっぱ巻き」、まぐろの細巻きを「鉄火巻き」と呼ぶような具合です。 寿司用語で注文しなければ、頼んだものが出てこないなんてことはありませんが、はたから聞いていると、それって何?と、さっぱり分からない独特な呼び名があったりします。それでも、すし屋の大将にはちゃんと通じるわけですから、暗号のようで面白いものです。 よく知られている呼び名から、あまり聞いたことがないようなものまで、様々な寿司用語を紹介していきます。みなさんはどれくらいご存知でしょうか。

寿司用語一覧

寿司ネタ

【えんがわ】:カレイ・ひらめのヒレの付け根部分 コリコリとした歯ごたえが特徴的な「えんがわ」は、その形が、家屋の縁側に似ていることが由来しています。
【しんこ】:一般的にこはだと呼ばれるネタ 「こはだ」は、「コノシロ」という魚が中くらいの大きさの時に使用する用語。対して「しんこ」は最も小さい状態の時になります。コノシロは、最も大きい時の呼び方。
【おとし】:湯びき調理のこと
ハモを湯びきした後、すぐに氷水に落とす調理方法から付いた調理用語。 【かんぬき】:サヨリの別名 「サヨリ」とは針魚(ハリウオ)のこと。サヨリは地域によってその呼び名が様々のようです。サヨリの大きなものを「かんぬき」、小さなものを「エンピツ」と呼ぶことが多いそうですよ。
【かたおもい】:アワビ
注文するときに照れくさくなりそうですよね。でも、その由来は色恋とは全く関係ないんですよ。一枚貝のアワビには片側にしか貝殻がないことから、この呼び方がついています。片側だけ重い、「かたおもい」というわけです。なぞなぞのようですが、腑に落ちます。
【たま】:赤貝 活きの良い赤貝の、身がぷっくりと丸い様子から、「たま」と呼ぶそう。
【はかりめ】:アナゴ アナゴの模様が、天秤量りの量り目に似ていることから、「はかりめ」と呼ばれています。
【とろ】:まぐろの脂身 トロッとした食感が特徴の、定番人気まぐろの脂身のこと。
【ぎょく】:玉子焼き 「玉子」の玉の字の音読みから付いたもの。分かりやすいですね。

握り方・状態

【ぐんかん】:シャリを海苔でくるみ、天面にネタを乗せた巻物のこと
見た目の通り、軍艦に似ていることから付いた名前。老舗高級寿司店「久兵衛」の主人がお客さんから「いくら」のおすしが食べたいとリクエストされ、考えたのが始まりと言われています。
【握り】:手のひらで俵型に握ったシャリにネタを乗せた状態 「握りで!」や、「刺身で!」など、食べ方の好みを伝える際の使い分け。
【手巻き】:すだれを使わずに海苔で巻いた巻物のこと
すだれを使って、シャリを海苔で巻いた「かっぱ」は、手巻きではなく巻物になります。手巻きは粋ではないと否定する、おすし屋さんもあるのだとか。
【お造り】:魚介類の刺身 「魚の造り身」が、略され丁寧語のになったもの。関西では、魚を切ることを造ると言うそうで、そこから鮮魚の切り身を「お造り」と言うようになったといいます。お造りと呼ぶのは、関西の方が多いかもしれません。
【おどり】:車エビの甲羅を生きているうちにむき、握りやつまみにした状態 生きたまま扱うため、エビの体がさばいた後も跳ねる様子から付いた名前。

その他

【つめ】:アナゴやしゃこに付ける甘ダレ
アナゴを煮た汁を煮詰めて作るタレであることから、調理方法を略した用語。
【しめ】:最後に、最後の 「しめにカッパ巻きちょうだい」など、最後に注文する際に使います。
【むらさき】:お醤油 お醤油を「むらさき」と呼ぶ理由には諸説あります。昔は赤褐色のことをむらさきと呼んでいて、当時のお醤油が赤褐色だったためという説。2つめは、高貴の象徴である紫を、珍重されていた醤油の呼び名にした説。3つめは、原料の大豆にむらさき大豆を使用していたことから付いたと言われています。
【なみだ】:わさび 素材の特徴から付いた、わかりやすい用語です。うっかり多めにつけると涙が出ますもんね。
【がり】:甘酢生姜 甘酢生姜をかじるときのガリガリという咀嚼音が由来。
【おてしょ】:お醤油皿
「御手塩(おてしお)」からできたおすし屋さん以外でも使われる、小皿を指した用語。おすし屋さん独自というわけではありませんが、醤油皿と呼ばずに、ぜひ「おてしょ」を使ってみては。
【お出花・あがり花】:お茶 「あがり」という言葉は聞いたことがあると思いますが、初めに注文するお茶と、最後にお願いするお茶には呼び方に違いがあるんです。よく耳にするあがりは、最後にいただくお茶のことで、「あがり花」と呼びます。対して、最初に注文するお茶は「お出花」と言います。 これは、昔、遊郭に来た客へ最初と最後に出すお茶をこのように呼んでいたことから、使われるようになったんだとか。

お寿司屋さんでの数え方

最後に、最も独特と言っても良い、数字に関する寿司用語です。 1:ピン 2:リャン 3:ゲタ 4:ダリ 5:メノジ 6:ロンジ 7:セイナン 8:バンド 9:キワ 0:コロ ちなみに、10は、ピンコロ、しかし、12は、ピンリャンではなく、チョンブリです。おすし屋さんの数字に関する由来とその理由については、実のところ謎だらけです。 ただ、職人側で付ける伝票と接客側で対応する伝票が分かれているから、というのが最も有力なようです。カウンターからお会計を接客側へ伝える際に、他の来店客がいる中でお会計をするお客さんへの配慮と言われています。
それぞれの用語は地域によって呼び名が違ったり、言語の由来も諸説ありますが、この他にも、職人同士で使う板前言葉や、調理場の器具についての呼び名など、おすし屋さん専用の言語がまだまだあるようです。カウンターでおすしをいただくことがあれば、ぜひ周りの声に耳を傾けてみると、面白いかもしれませんよ。
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