ライター : 渡辺 りほ

管理栄養士

監修者 : 竹内 弘久

杏林大学医学部付属病院 外科医

お酒のあとの筋肉痛…?

大人になると、どうしてもお酒を飲み過ぎるということもありますよね。飲み過ぎた翌日に頭痛、胃もたれ、吐き気など身体にさまざまな悪影響が出て、お酒を飲んだことを後悔した……という経験がある方も多いのではないでしょうか。

二日酔いはアルコールを肝臓で処理しきれていないことや、脱水症状によって起こるものです。お酒の飲み過ぎは二日酔いのほかに、筋肉痛のような症状が出る「急性アルコール性ミオパチー」を引き起こすおそれがあります。(※1,2)

急性アルコール性ミオパチーって?

アルコールを飲み過ぎたときに、筋肉痛やむくみ、筋力低下などの症状が出ることを「急性アルコール性ミオパチー」と言います。急性アルコール性ミオパチーは低カリウム血症を伴うもの、横紋筋の壊死を伴うもののふたつにわけられますが、後者は稀だとされています。

アルコールを多く飲む人は、筋肉機能の調整に関わる「カリウム」が欠乏しやすいです。下痢や利尿薬の飲用などをきっかけに、低カリウム血症を伴う急性アルコール性ミオパチーになるおそれがあります。

また、アルコールを長期にわたり大量に飲酒すると、高い確率で末梢神経の障害を発症する可能性があります。(※3,4,5,6)

運動後に感じる筋肉痛の違いについて

運動後に感じる筋肉痛は、慣れない運動やトレーニングによって傷ついた筋肉(筋繊維)を修復する際に起こる炎症反応によるものです。運動をした数時間~数日後に発生し、筋肉が熱を持っているように感じたり、痛みのある部分が腫れたりします。

一方、急性アルコール性ミオパチーでは、筋肉の痛みのほかに筋力の低下や脱力感をおぼえることがあります。とくに身体の中心部に近い筋肉に、左右対称の症状が現れやすいのが特徴です。(※3,4,7)

「慢性アルコール性ミオパチー」になる可能性も!

慢性アルコール性ミオパチーとは、数週間~数か月にわたって徐々に筋力が低下する症状です。また、慢性的にアルコールを摂ると、筋肉量が低下することが明らかになっています。

急性アルコール性ミオパチーとは異なり、慢性アルコール性ミオパチーでは筋肉の痛み、けいれんなどの症状を感じることは稀です。アルコール筋症のなかでも、無症候性の慢性アルコール性ミオパチーが中心だと言われています。

慢性アルコール性ミオパチーは、長期にわたって大量にアルコールを摂ると起こりやすいことが明らかになっています。生涯にわたって飲酒した量と関連しているため、30代以下で発症することはほとんどありません。40~60代の人に見られやすい症状だと考えられています。(※2,4)

急性アルコール性ミオパチーを対策する方法

飲み過ぎない

急性アルコール性ミオパチーは、一度にアルコール飲料を4~5杯飲むといったように、多量飲酒をした際に起こるおそれがあります。飲酒する際は、適量を心がけることが大切です。

一日あたりの適度な飲酒量は、純アルコールで20g程度が目安です。日本酒では一合、ビールでは中瓶1本、ウイスキーではダブル1杯に相当します。なお、女性や65歳以上の方は、より少ない量にすることが推奨されています。(※2,8)

下痢気味のときに飲まない

低カリウム血症が伴う急性アルコール性ミオパチーは、下痢や嘔吐をきっかけに発症するケースがります。実際に、慢性的な下痢の症状がある人がウイスキーを多飲し、急性アルコール性ミオパチーを発症しています。

急性アルコール性ミオパチーにつながるおそれがあるため、下痢気味のときはアルコール飲料を飲まないようにしましょう。また、下痢が長期にわたって続く際はセルフケアで済ませず、病院で診察を受けるようにしてくださいね。(※4)
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